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テト  作者: 安田丘矩
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3歩進んで2歩下がる

数年前からやり続けていることがあるんです。それは朝食に硬いパンを食べること。

事の発端は咀嚼中に舌や唇を誤って噛んでしまうことが多く嚙み合わせが悪くなっていると気づいた。

噛む力が弱くなると歯茎も弱くなってしまう・・・入れ歯は嫌。歯は大事だよ。

それから硬いパンをかじりゆっくり噛むことを実施した結果、顎の力も強くなり

誤って舌や歯を嚙むこともほとんどなくなりました。

日々の積む重ねは大事だと痛感している。

 チャードは時計塔から離れ駐在所へ向かっていた。このことを知らせないと王都にも被害が出ると一目散に目指していた。途中、再び警鐘が街に響き渡ったが駐在所はこの路地を抜けて後は直線。建物が見えてきたと安堵した瞬間に目の前が暗くなった。いきなりのことにチャードは足を止めパニックになった。


「どうなっているんだ!なんで。」


脚に何かが絡みついていく。だんだん上へと身動きが取れなくなってくる。チャードはもがき続けついに口元まで覆われた時、目の前に赤い光が、


「みぃーつけたぁ。」


チャードは目を大きく見開き、声にならない声をあげたが、ついには全身をシドのまがまがしい布で覆われた。そして、跡形もなく灰になった。




「見ましたか、アルヴァン様!この勇姿を!」


チャードを仕止めた後、アルヴァンとシドは手薄になった街の講堂に身を潜めていた。講堂の中、何百年も前の装飾が施され、高い所窓ガラスは幾何学模様であしらわれ、青白く優しい光が講堂内を照らしていた。家族連れが数組と老夫婦が長椅子に座り、管理者が徘徊しているくらいで怪しまれることはなかった。


「はいはい、すごいすごい。」


「なるほど。倒した品格者の能力が手に入るのですね。」


シドは能力を使ってみたが


「何も反応しませんね。敵の索敵能力だと思っていたんですが、少々勝手が違うみたいです。」


「あいつ、知っていたんだよ。」


「誰がですか?」


「王、ディオだよ。」


「けど、何のための討伐なんですか。魔物たちの能力向上のためですか、確かに便利な能力もありますが。」


アルヴァンは少し考えてから口を開いた。


「王との挑戦権…。おそらく、王を殺せる能力があるんじゃないかな。」


「王は死にたがっている?そう仰りたいと。」


「その可能性もなくはないが、あるいは危険因子の排除かも。どちらにせよ、この品格者の能力はあまりに都合が良すぎる。それなりに長く生きてきたけど、魔王が支配している中で人間はそこまで脅威ではなかった。」


アルヴァンは不思議に思っていた。そもそもこんな能力が存在すること自体最近まで知らなかった。そして、この品格者の存在が、今の魔王と密接に関わっていることは間違いない。


「一度、魔王城へ戻りますか?」


「その方が手っ取り早いか。じゃあ戻るか。」


アルヴァンは移動魔法で魔王城へ飛んでいった。




魔王城の門まで飛んできたがその門が閉まっていた。そして、何も気配がしない。


「誰もいませんね…ってそんなことあります?」


何かがおかしい。結界さえも張られていない。アルヴァンは瞬間移動で城壁のてっぺんに乗り、中の様子を伺った。場内で働く魔物の姿さえない。城内に入り込み、王間、食堂、管理塔、あらゆる所をめぐったが誰もいない。


「私たちが旅立ってまだ半年も経ってないですよ。突然いなくなるなんて、引っ越しですか。」


「そんなわけ…いやそうかもしれない。」


「じゃあ何処へ。」


「それがわかったら苦労はしない。ただ、王は魔物たちがこの能力について疑念を持ったものがやって来ると想定していた。あるいは…」


「アルヴァン様。誰か来ます。」






城の広い廊下の真ん中を闊歩してきたのはエネヴァーだった。


「おや、これはこれはアルヴェンちゃん。何年ぶりかな。」


《やはり、こいつは勘づいて来たのか?それにしてはタイミングが良すぎる。来るのを待っていたのか…》アルヴァンは警戒した。こいつも同様にこの能力について察して来たのなら、品格者と遭遇しているのは間違いない。突然、シドが影から飛び出してきた。


「アルヴァン様。能力が反応しました。」


そのシドの言葉にアルヴァンは手に魔力を込めた。その様子を見て、エネヴァーはニヤニヤして言った。


「なんだい?せっかくの再開じゃないか。そんな怖いことしないでくれよ。」


「何で戻ってきたの?」


うーんっと考えた後でエネヴァーが言った。


「それは君たちと同じ理由なんじゃないかな。」


「それじゃあ王に会いに来たんだね。」


「まあそんなとこかな。」


後ろで控えていたシドが突然アルヴァンの前に出て行った


「おいメージ、いるんだろ!出てこい。アルヴァン様に行った非礼を詫びてもらおうか。」


突然シドがエネヴァーの元へ走っていった。咄嗟に、あるアルヴァンはシドの布を引っ張り、シドは思いっきり床にぶつかった。シドは起き上がりアルヴァンの方を向いて言った。


「アルヴァン様何をするんですか!ここでメージをやらなければ私の気持ちが収まりません。」


「いや、余計に面倒くさくなる。今こいつとやりあうのは愚策だ。」


エネヴァーは笑いそして言った。


「さすがアルヴェンちゃん。わかってるじゃん。そう、君は僕に勝てない。」


アルヴァンは思いっきりエネヴァーを睨み付けたが安い挑発に乗るまいとこらえた。


「さて王がいない以上ここにいてもしょうがないよね。じゃあ僕は失礼させてもらうよ。次会える時を楽しみにしてるからね。アルヴェンちゃん。」


引き返して行くエネヴァーの影からメージが現れた。そしてあアルヴァンに一礼した。


その行動にシドはメージに言った。


「お前のそういうところが嫌いなんだ。殺そうとしたくせに。」


メージは体を上げそして言った。


「わたくしはエネヴァー様の配下でございます。主人が襲われそうになったらサポートに入るのが僕というものではないのですか。」


シドは今にも飛びかかりそうになっている。さすがにアルバンも止めに入った。


「では、アルヴァン様ごきげんよう。」


メージはエネヴァーを追いかけ、影の中に戻っていった。


「なんなんだぁ、あいつ!それに止めないでくださいよ!アルヴァン様!」


「お前は感情的になりすぎる。少しは僕として良識を学べ!」


「あの仕事ですからみたいな。あー嫌だ嫌だ虫唾が走る。」


愚痴を言うシドを横にアルヴァンはこれからのことを考えていた。おそらくエネヴァーは王に脅しをかける可能性がある。もしくは殺す可能性だってある。品格者の討伐はただのゲームではない。品格者の中にこの世界のすべての者を凌駕する能力がある可能性があり、その能力を得たものはこの世界すべてを支配することができる。ただ、確信が得られない以上どうしたものか。アルヴァンは迷っていた。王を見つけるのが先か、品格者をシラミ潰しに見つけ出して殺していけばいいのか。


「アルヴァン様、思ったんですが。王都に行くのが一番いいのではないでしょうか。」


突然、我に返ったシドはアルヴァンに言った。


「どうした?頭のねじが締まった?」


「失礼な。私はいつだって冷静です。」


《ベルリッツ王国かぁ・・・》アルヴァンはシドの提案に納得した。品格者が集まる場所でかつ品格者を選定する機関や管理者がいるところ一番情報が得やすい。


「そうだな。ベルリッツ王国へ行くか。」


「はい、アルヴァン様。どこまでもついていきます。」


「それやめろ。気持ち悪い。」


一度リンドンに戻りそこから関所を通りベルリッツ王国の王都グルミアへ行くことを決めた。ただ、行ったところで侵入できるかは分からないが考えても仕方ない。アルヴァンは移動魔法を唱えリンドンへ戻った。

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