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テト  作者: 安田丘矩
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実験は新たな発見へのカギ

ここは魔王城の研究室。レオが就寝した後で日夜、不死身の能力の打開策を探るため実験と観察が行われていた。被験者は眠っている状態で連れてこられ、途中で目が覚めないように魔法でさらに眠らせている。


①毒殺

致死量0.1mlの劇物を飲ませて観察する。


「毒殺は一度やったと聞いたんですが。」

ドミニクはアルヴァンに聞いてみた。


「いや、実のところやっていないです。」


「自分も食べるがゆえに毒物は入れないようにしておいしくなりそうなものを選んで渡しておりましたので。」

シドが重ねて言った。


「おまえ、余計なことを。」

アルヴァンはシドを睨んだ。


「どちらにせよ。検証は必要なので試してみたいと思います。」


「どうせならビンごと飲ませてしまえばいいんじゃない。」


「この劇薬は貴重なものなので人間の致死量を超えて与えても意味ないです。それに今回1mlあたえるので十分多いと思います。」


「これは期待できるな。」


アルヴァンはドミニクがレオの口にスポイトで投薬するところをじっと見つめた。飲ませた後レオの身体がビクッと動き口から唾液が溢れ痙攣し始めた。


「これは効いているのか?」

アルヴァンはドミニクに聞いてみた。


「初期症状が見られるのでおそらく効いているかと。」


レオはしばらく痙攣した後、急に動きが止まった。


「死んだか?」


アルヴァンは近づいてみるとレオは普通にいびきをかいて眠っていた。


「これは、すごいですね。おそらく投薬した毒が一瞬で体内を巡った後ですぐに解毒されたと考えられます。一種の免疫かと思いますが。」


「能力という免疫ねぇ・・・。」

アルヴァンは特に驚かなかった。


むしろ、こんな方法で殺せるのであれば苦労しない。毒殺は失敗した。



②窒息

「では今度は密封された部屋に練炭を焚いて窒息死させてみましょう。」

ガラスでできた部屋を用意してドミニクはレオとなぜかセイルも一緒に入れた。


「おっ?俺も入るのか?」

セイルはドミニクに聞いてみた。


「今回は、通常の場合と合わせての検証とするのでセイルさんに入ってもらいます。それと、魔物での具体的な観察がとられてないのでこの際一緒に取ろうかと。」


「わかった。俺頑張る。」

セイルはやる気満々だった。


「ドミニク・・・鬼だな・・・。」

アルヴァンは少しひいた。


「なんだか、元人間だとは思えませんね。」

シドはドミニクの知らない一面に驚いた。


「では、早速実験を行います。」


練炭に火をくべて部屋に入れた。じわじわと密閉された部屋に白い煙が充満し、レオとセイルの姿が見えなくなった。


「おぉ、何も・・みえぇ・・くるし・・・。」

部屋からかすかにセイルの声がした。


「練炭を燃やすことで一酸化炭素が発生し、それを吸うことで身体が麻痺し、吐き気や頭痛に苛まれる。これは血中の酸素が一酸化炭素と結合することで起こると言われ、生殺し状態が続くので極めて苦しい死に方になる。よい子は絶対やらない。悪い子も絶対やらない。」


「それを先輩であるセイルにやらせるなんて・・・。」

アルヴァンはドミニクが真剣に実験に取り組んでいる姿に何も言えなかった。


10分が経過した。


「では、開けて見てみましょう。」

ドミニクは部屋の扉を開けた。


「なんか料理してるみたいだな。」


しばらく喚起して中には行ってみるとセイルがいろんなものが体内から出て死んでいた。一方のレオは、特に変わった様子もなく眠っていた。


「ダメでしたね。」


「それよりセイルは大丈夫なのか?」


「大丈夫です。蘇生剤があるので。」


「そんなのあるんだ・・・生への冒涜だな。」


「ご安心ください。これはあくまでセイルさんしか使えませんから。」


「どういう仕組みなんだ?」


蘇生剤を投与されたセイルはみるみるうちに修復され起き上がった。

「おれ・・・死んでた?」


「大胆な死に方でした。ユリスもきっと喜ぶ。」

ドミニクは微笑んでいた。


「ほんとか!絶対自慢しよう。」

セイルはなぜか喜んでいた。


「もうわかんねぇなぁ、おまえら。」

窒息による殺害、セイルのみ成功。



③ヤドリギ刺してみた。

「ヤドカリさん。ヤドリギを一本下さい。」

アルヴァンはリカルドに言った。


「何に使うのですか?」


「あいつに刺してみる。」


「大丈夫なんですか?そもそも、あの人間って魔力とかあるんですか?」


「そういえば・・・あるのか?」


「生気だけ吸い取れるなら問題ないの・・かな?」

アルヴァンとリカルドはお互い首を傾げた。


「面白そうですね。人間に刺してみた例は確認されていないのでぜひやってほしいです。」

ドミニクはなぜか嬉しそうだった。


アルヴァンはリカルドから一本枝をもらい、レオに刺してみた。


「・・・特に何も起きないな。」


「枝からは養分を吸っている感じが取れますが、不思議なのは暴走していませんね。」


「これは興味深いですね。」



1時間後。枝に葉っぱが数枚生えた。


「なんか緩やかに植物の成長を眺めている気分だ。」


「人間に刺すとこんな感じなんですかね。」


「いや、普通に養分を吸われてスカスカになると思うんだが。」



さらに2時間後。花が咲いた。


「おい、リカルド。これほんとにヤドリギなのか?」


「これは・・・奇跡です。」


「ヤドリギは媒介する者によって植物の性質が変わるのでこの人間に取りついたヤドリギは本来の植物としての在り方を思い出したのでしょう。」



さらに2時間後。


「実った・・・。」


「実りましたね。」


「何の実なんでしょう。」


一見普通に食べれそうな果物だった。


「これ食べてもいいのか?」


「えっ!食べるんですか?」


「むしろ、アルヴァンさんが食べたいのなら・・・どうぞ。経過は見ときます。」


「それはやめて。」


さすがに食べるのは怖かったのでこの実についてドミニクとリカルドで調べてみることになった。それから、さまざまなレオへの実験が行われたが全て失敗に終わった。



「結論から言って、この人間を殺す術は現状存在しません。おそらく、何らかの手順やもしくは条件がそろわないとだめなのではないかと。」

ドミニクは今までの報告書を見直し言った。


「それは、能力者であるから故にってことか。ならスターフィッシュに会うか・・・ディオに会うことが優先されるのか。」


「アルヴァンさん。むしろ今後のことを考えて本人に能力のことを言った方がいいのでは?それにマルスをぶん殴れたことも気になります。そんなことできる芸当なんて幹部クラス、もしくは・・・。」


ドミニクから話を聞いてアルヴァンはふと思った。なんかディオみたいだなって。けれど、アルヴァンはなぜディオをレオと重ねたのか分からなかった。



この度は第参章ご覧いただきありがとうございます。

次回は第肆章に続きます。乞うご期待ください。

現在、半年間連載を続けてきまして、楽しさと難しさを感じています。

話の道筋に沿って肉付けしているんですけど、どこか肉厚になっていたり細くなったりと

話の展開自体テンポ悪くなってるんじゃないかと心配することもあります。

それでも、ここまで読んでいただいている読者の皆様には感謝しております。

引き続きお付き合いいただけたら幸いです。では、第肆章でお会いしましょう。


安田丘矩


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