家庭的な女性を好む男性ほどだらしない
あの幅の広いレシートを何とかしてくれ。
レシートにポイント詳細や割引のお知らせとかですごく長くなってストレスと思っていたが、
この幅のあるレシート財布に入れづらいんだって。新たなストレスが・・・
あの幅だといっかい半分に折りたたんでさらに折りたたんでと入れるのが手間になった。
そもそも、レシートって規格とかないんでしょうか?会社ごとにバラバラ?
単純にレシートいらないですで済ませることができればいいんですが
そうはいかない時は持ち帰らざるおえない。
たたまずに財布に入れるとはみ出るんですよ、あれ。
お札出すとき被ってる時があって、うわぁ鬱陶しい。
あの幅の広いレシート廃止にしてほしいと願う。
アルヴァンがギンガルに戻ってきた時にはもう真夜中になっていた。家に帰ってくるとユリアの姿はなくクレアの家に泊まりのようだ。
そして、レオだが部屋の扉が少し開いている。チラッと様子を見てみるとレオがベッドに寝ていて、床にもう一人誰かいる。恐る恐る近づくとアルマだった。そして、なぜか裸だった。
「一体、何があったんだ?」
窓から外を見ると薄暗く物干しに何か干してある。確認しに出てみると2着分の服があった。
「こんな時間に洗濯したのか?なんで?」
アルマに近づいて突いても起きない。
「こんなところで寝てたら風邪ひくだろ。」
アルヴァンはアルマを持ち上げレオの横に寝かせた。気が付くともうすぐ夜明けが近づいているのか空が明るくなってきていた。
「飯でも作るか。」
アルヴァンは冷暗庫を見てみるとジャガイモと燻製肉、少し癖のある菜っ葉とかぼちゃ。戸棚にはロールパンが数個。
「時化てるなぁ。」
基本的に朝、昼、晩はいつもお呼ばれしているので時々ユリアが料理する程度。食べ物は軽食程度のが作れるもの、もしくは日持ちするものしか家には置いていない。
「仕方ない。」
アルヴァンはカエルから卵が入ったバスケットを取り出した。
「今日、マアサにキッシュを作ってもらおうと用意しておいたが使っちゃうかな。」
ボールに卵を割って溶き塩コショウで味を調える。細かく切ったジャガイモを軽くゆで水気をとり、細かく切った燻製肉と一緒に耐熱容器に入れてから卵を加えオーブンで焼き上げる。焼きあがったらトッピングに菜っ葉を添えて完成。
かぼちゃは一度蒸した後で皮と中の種を包丁でとり、すり潰した後隠していた牛乳を温めその中にすり潰したかぼちゃを投入する。牛乳の中で伸ばしながら味を軽く整え一切れバターを入れてひと煮立ちして出来上がり。
アルヴァンは燻製肉のキッシュとかぼちゃのスープを作った。朝食が出来上がった頃にはもう日が昇っていた。
すると玄関の戸が開き
「ただいま帰りました。」
ユリアが帰ってきた。
「朝帰りとはお父様が泣くぞ。・・・それとお前もな!」
シドは何も返事しなかった。
「やましいことなんてしていません。クレアさんがあんなに夢中で話しているから聞き入ってしまって。もう、眠たくて。」
「慣れないことはするもんじゃないぞ。」
ユリアは食卓に並ぶ料理に驚いた。
「まさか、アルヴァンさんが作ったんですか?料理できたんですか?」
「おい、誰だと思っているんだ。こんなの嗜みだ。」
シドはこっそり言った。
「アルヴァン様は確かに料理ができますが、こだわりすぎて時間がかかりすぎるのが難点で。」
「こういうのは僕がやるものだと思うのだが・・・一体どこで何をしていたのかな・・・。」
シドは苦い顔をした。
「しばらくずっと言われそうですね。」
「ところでレオさんは戻っていないんですか。」
ユリアが尋ねると
「あぁ、部屋で寝ているぞ。」
「そうですか。せっかくだしみんなで食べましょう。」
ユリアはレオを起こしに部屋へ向かおうとした瞬間、
「ぎゃあぁぁぁあああ!!!」
レオの部屋から悲鳴が聞こえた。ユリアは驚きレオの部屋に駆け込んだ。
「あっ、まずい。」
アルヴァンが気づいた時にはすでに遅く、ユリアは
「どうしたんですか!いやぁぁあああ!」
と悲鳴を上げ部屋から逃げ外へ出て行った。
「初心な生娘には刺激が強いか。」
その悲鳴と共にどうやらアルマも起きてレオは昨晩のことを問い詰め始めた。それをアルヴァンは扉の袖で聞いていた。
「あいつ、酒が入るとアホになるんだな。今回に関しては自業自得ってことか。」
「いや、普通にアルヴァン様が仕組んだんでしょ。」
「さぁ何のことかな。」
アルヴァンは食卓の席に座り一番最初にキッシュを頬張った。
しばらく朝食を取っているとユリアが戻ってきた。
「おかえり、もう戻ってこないと思ってた。」
「アルヴァンさんの意地悪。そんなことないです。」
「けど、男の裸を見ていちいち叫んでいたら、夫婦になった時どうするんだ。」
「それは・・・。」
「むしろ、結婚する相手の身体見ただけで騒いでちゃ・・・ねぇ。」
さすがにユリアはムッとした。
「もう、分かってますよ。私がお嬢様だからと言って揶揄わないでください。」
ユリアは手を洗って席に座り一つロールパンを取り噛り付いた。そして、かぼちゃのスープをよそってパンに付けて食べた。
「あっ、このスープおいしい。」
「これが紳士の嗜みってやつだ。」
「お見逸れしました。」
そして、キッシュも一切れとり食べてみた。何も言わなかったが満足そうな表情が見れた。
ユリアがキッシュを食べ終わった頃にレオとアルマが部屋から出てきた。アルマはレオの寝巻きを着ていた。
「おはようございます。うわぁ朝ごはんだ。食べていいんですか?」
アルマはレオとユリアの微妙な空気を読まず席に座った。
「どうぞ。」
ユリアがアルマに言った。
「やったぁ!これリリアさんが作ったんですか?」
「いいえ、あ・・テトさんが作ってくださったの。」
「えっ!テトさんが!?」
アルマはアルヴァンの顔をまじまじと見た。
『なんだよ。見世物小屋じゃねぇぞ。』
「ただの食いしん坊じゃなかったんだ。」
『お前覚えておけよ。』
レオは後ろめたそうに恐る恐る食卓に近づきユリアに言った。
「リリアさん・・・あの・・・朝からお見苦しいものを見せてしまい申し訳ございません。」
「いや、その・・えっと・・・。」
ユリアは返答に困っていた。
「えっ?二人ってまだ何もしていなかったんですか!」
アルマは空気を読めずに言った。
「おまえ、少しは自重しろ!」
さすがにレオは怒った。
『まぁ普通男女一つ屋根の下で暮らしていて何も起きないはずもないし。確かにこいつは片思いしていたが奥手すぎて特に進展もなかった。それに初めての女だからな。初心なこいつには経験値が少なすぎる。』
アルヴァンの毒舌を聞いてユリアは言葉を選んだ。
「いえ、こちらこそごめんなさい。突然のことで気が動転してしまいました。なのでお気になさらず。」
「本当ごめんなさい。そして、今後酒を飲むことをやめるよ。こんな失態してちゃ、リリアさんの旦那としてふさわしくないからね。」
「たぶんそれは無理だと思いますが。」
「そうだぞ。みんなレオと酒を交わしたいんだから、そんな寂しいこと言うなって。」
アルマが二人の間に割って話した。
「元はと言えばお前らが酒を煽ったからだろ。」
レオは再びアルマに怒った。
『やれやれ。うるさい奴らだ。』
アルヴァンは残りのキッシュをすべて平らげて外へ出て行った。