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テト  作者: 安田丘矩
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ただ与えるんじゃなくて、その後のことを考える

今日、キノコがお買い得だったのでたくさん買ってしまった。

ふと思ったんですが、自分が子供の頃エリンギとかマイタケとか極めつけはマッシュルームなんて

なかなか売ってなかったのに今じゃ普通に売られているから。

それこそ、シイタケ、しめじ、エノキはあったけどここまでバリエーションがあると迷う

お味噌汁だったら、エノキかなめこ。お吸い物だったらマイタケ。

炒め物だったら、エリンギ、しめじ、シイタケ。お鍋は全部?

料理によって色々使えるから便利だね。

ランチを食べた後、アルヴァンは警備隊の基地に行ってみた。すると、中は騒がしくシルバが集められた冒険者たちに話しかけていた。


「お集りの冒険者の皆さま。急な依頼で申し訳ない。突然、東の森で魔物が発生しました。森のそばを通った農夫がオオカミ系の魔物とアリジゴクの魔物の存在を確認した。現在、警備隊員は村の保安で手いっぱいになっているため力を貸してもらいたい。」


アルヴァンは狙い通りになったとニヤけた。


「あれ?レオさん家のテトいるじゃん。」


『レオさん家は余計だ。』


「まさか、臨時依頼に協力してくれるんですか?」


アルヴァンは首を横に振った。

『誰が手伝うか。』


「えぇ違うのか。楽できると思ったのに。」

アルヴァンはカエルからあるものを取り出しアルマに渡した。

「えっ?くれるのか?」


アルヴァンから手渡されたのはバルのビール一杯無料券だった。

「えーテトさん、ありがとう!!俄然やる気出るわ。」


アルマはシルバの前に飛び出しそして、

「みんなこの依頼さっさと片付けてバルで打ち上げだ!!」


みんな呆れていたが、

「そうだな。俺たちにかかれば楽勝だな。」

「おい、アルマ。ちゃんと驕れよ。」

「クレアさんの今日のおすすめ何かしら?楽しみ。」

乗り気だった。


アルヴァンは静かに外へ出て行き、次に向かったのはバルだった。


昼時が過ぎ一段落して、パーチが仕込みをしていた。カウンターを潜り調理場の方へ入るとシルバのところのじいさんが串に肉を刺し、クレアが野菜を切っていた。クレアはアルヴァンに気づき声をかけた。


「あらクロちゃん、どうしたの?」


『相変わらず忙しそうだな。』


アルヴァンは近づきクレアにあるものを手渡した。

「何?くれるの?」


アルヴァンから受け取ったのは一冊の本だった。クレアは受け取りそのタイトルを見て興奮した。

「クロちゃんこれどこで手に入れたの?!」


この本は『ヘドリングに伝えて』という愛し合う男女が時代の流れと共に別れを余儀なくされ、たとえ離れていてもいつか必ずまた逢えると約束の地で再会を果たす、王都で話題となっている恋愛ものの小説だった。発売から何度も再販されているが依然と印刷が追いついておらず限定販売されている。クレアはこの本の作者がお気に入りでこの作品も喉から手が出るほど欲しかった。


『まぁ俺にかかればちょちょいのちょい。』


アルヴァンはクレアの前でどや顔をしている横でシドは冷たい目で影から見ていた。



シドは王都でとある書店に立ち寄っていた。もちろん、アルヴァン抜きでお忍びで。人目がないところでこっそり本を物色し立ち読みならぬ影読みをしていた。一通り作品を読み終えて店から出ようとしたときに店のカウンターが騒がしくなっていた。多くの人だかりができてシドは一体何事だと近くで見てみると、


『~ヘドリングに伝えて~再販、50冊。』と看板が出ていた。


シドはこの作者の作品は立ち読みしながら見ていた。確かに面白く女性の細かい描写がよくかけていて、少しミステリー要素が含まれ困惑されながらも後の展開で感動を誘うと太鼓判を押した。


ぜひ手に入れたいと思い、カウンター裏に忍び込みお金をレジ横に置いて一冊持って行った。ウキウキしながら誰もいないレノヴァの屋敷の書庫で読み更けっていた。すべて読み終えてシドは満足した。


「あぁなんであそこで呼び止めなかったのか。いや、呼び止めることなんてできない。だって、あなたの意志を無駄にできない。その一途さがもう・・・たまらない。」


シドはハッと気づくともう日が落ちてだいぶ時間が経ってしまっていた。急いでアルヴァンのもとへ戻ろうとこの本は本棚の本の裏に隠しておいた。


そして、書庫からシドがいなくなったことを確認しアルヴァンが現れた。シドが隠した本を取り出し中身を見た。


「あいつこういうのほんと好きだよな・・・没収。」

アルヴァンはカエルに本を入れ書庫を後にした。




クレアの様子が激変した。あまりの嬉しさに早く読みたい!早く読みたい!気持ちが溢れだし、猛スピードで仕込みを終わらせすぐさま奥の休憩室で読み始めた。


「クレア、お使いに行って来て・・・あれ?」

パーチが調理場を探したがシルバのじいさんだけだった。そして、取り残されたアルヴァンが立っているだけ。


「あれクロ坊?居たんだ。クレア見なかったか?」


アルヴァンは休憩室の方を指さしパーチは恐る恐る近づくと夢中で本を読むクレアの姿があった。あまりの熱中さにパーチは身をひっこめた。調理場を見渡すと今日使う野菜は完璧に準備され、揚げ物の肉の下拵えもしてあった。


「おいクロ坊、一体なにした?」


『さぁ。』

アルヴァンは首を傾げた。そして、そのままバルから出て行った。


アルヴァンはこれで条件はすべて揃いこの後が楽しみだと思っているとシドが

「あの・・アルヴァン様。あの本ですが、どこで手に入れたんですか?」


「え?本屋さんだけど?」


「本屋さんですか。アルヴァン様ってああ言う本読むんですね。」


「えっシド、あの本知っているのか?あの本王都でもなかなか手に入らない代物だけど。クレアが喜ぶと思って渋々あげることにしたんだ。」


「あれ・・・・私の・・・。」


「え?何か言った?まさか、忠実なる僕が職務を抜け出して本を買いに行くなんてしないよね。」


シドは黙った。『まさかここで仕返されるとは・・・。』

シドはこれ以上何も言わずただ悔しい思いをしただけだった。



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