惚気話ほど疎ましいものはない、そして自分がしてると気づかない
スマートフォンに入っているデータってどれくらい古いのありますか?
最近、クラウドで自動保存されることがあるから実質前のスマホの分も入っている。
なんと9年前・・・9年前?
以前、写真の現像を懐かしむ話をしましたが結局、データ上で見せびらかしながらで終わりなんですよね
ただ、ここまで保存されていると甥っ子の成長過程が見える驚きと
いつ行ったかの具体的な証拠になるから便利と言えば便利だけれども
ちゃんとアップデートを取らないといけませんね
まぁ、流出したところで・・・こいつ飯の写真ばかりだぞ、さらに中身がグリーンだぞ
それはそれで恥ずかしいからちゃんと移さないとな
田舎ののどかな町ギンガル。先日、魔物の襲撃があったものの一匹の魔物と謎の勢力によって撃退され再び平穏を取り戻した。だが、そんな脅威が去った中でレオがユリアに求婚しアルヴァンの怒りが浸透していった。
とある日のこと、バルでレオはカウンターで作業するパーチに話しかけた。
「パーチ。俺、リリアさんと結婚するんだ。」
パーチは驚き視線をレオに向け手を止めた。
「はぁ!なんでまた?おまえらそんな関係だったのか?」
「あの襲撃の時に身を挺して彼女を守ったとき、俺はこの子を守り続けたいと思って告白したんだ。そしたら、彼女もオーケーしてくれて。」
「あの時の話は聞いていたがまさか告白までしているなんて・・・。式はするのか?」
「そうだね、まずは彼女のご両親にご挨拶に伺わないといけないかな。」
「ほほう。レオもやるときはやる男だったんだな。」
「まぁな。」
レオはにやにやしながら言い返した。
その時、カウンター二席飛ばしたところにアルヴァンも座りレオのこの惚気話を聞いていた。
『何が身を挺して守っただ。結局、俺が助けたんだろが。泣きべそ掻いてたくせに。俺が守り続けたいとよく言えたものだな。』
アルヴァンは終始不快に思っていた。そして、どうにかこいつの醜態をさらしたいと思っていた。
その翌日の朝、レオはユリアににやけながら今晩二人だけでバルで食事をする約束をしていた。それを聞いたアルヴァンは、何とか台無しにしたいと考えユリアが神妙そうに見つめるのを無視して家を出た。
「アルヴァン様ってこどもですね。」
シドは影の中からボソッと言った。
「何か言ったか!」
「いえ、別に。ただ、人間は繁殖のために男女一緒になるのは普通なのでは?魔物だって強者がめとったり・・・おとったり?」
「そんなことわかっている。ただ、あいつはダメだ。」
「姑臭いですね。どこの頑固おやじなんだか。」
「おまえ、口が過ぎるぞ。」
「単にあの男に素養がないことに嫌気を抱いているのですよね。なら、さっさと殺せばいいじゃないですか。もう、何年たったことだか。殺すのか生かしているのかよく分からない生ぬるい状態を続けて・・・一体どうしたいんですか。」
アルヴァンの脚が止まった。それができたら苦労していない。ただ、このまま生かしておくならせめてレオ自身の分を弁えろと言いたい気持ちを抑えた。
「おまえ、このままユリアと結婚して見ろ。それこそ殺せなくなる。」
「なぜです?ユリア様はともかくあの男に関しては特に生かす価値がないのでは。」
「生かす価値?そういえば、あいつマルスをぶん殴ったんだっけ。」
「それ本当なんでしょうか?」
「ユリアもそう言っていたから間違いないみたいだ。戦える力なんてあったのかは疑わしいが。」
「まぁ実際に真剣に戦っているところ見たことないですし。不死身で戦えるとなると勝ち目ないですね。」
「戦う気のないやつにはもったいない代物だな。そもそも不死身だけの認識が間違っていたのか?」
「まぁ劇的に勇者になるとかはなさそうなので心配はいらいないかと。それに別に短い刹那、一緒にさせてあげるのもいいのでは。どうせ殺すつもりもないんでしょ。」
「いやだ。ムカつく。」
「・・・ほんと、こどもですね。」
「何とでも言え。」
アルヴァンはシドに何と言われようと邪魔することはやめなかった。まず、東の森にやって来てそこで魔物の餌を巻き始めた。すると、大なり小の魔物が集まり始め、奪い合い、小さい魔物を襲い始めたり気性が荒くなっていた。
そのままアルヴァンは町に戻り、マアサの家にランチを食べに向かった。ついでに工場へユリアを見に行くとレオがユリアに合図を送ってニヤついていた。不快に思いながら扉の角から二人を見つめた。
「あら?そんなところで何やってるのぼっちゃん?」
そこに現れたのはマアサだった。マアサはアルヴァンの視線の先を見て納得した。
「あぁそういうこと。最近、やたら親しいよね。気になっているんでしょ。」
『気になっているというか・・・できるなら殺したいというか。』
「あのレオ君ももうここへ来てだいぶたつけど年齢的にもう二十歳越えているし、結婚を考える頃なのよ。」
『人間スパンの人生イベントなんて知りたくない。』
「そっか、寂しくなるものね。一緒に暮らして、二人が恋仲で。」
さすがにアルヴァンはマアサに怒った。
『なんでそうなるんだ!』
「あら、ちがうの?」
さすがに怒っていると分かったマアサは少し驚き応えた。
『ちがうわ!』
「まぁまぁ。こういうのは仕方がないことなのよ。さぁご飯ができたから食べましょ。」
納得できないままマアサの後ろについて行き、台所の机に座った。蒸したウサギ肉を割いてトッピングされたサラダと具だくさんの野菜スープ、水牛肉の甘煮が出された。アルヴァンはすでに机に置いてある素揚げした小ぶりなポテトを手に取り食べ始めた。
「少しは機嫌直してくれた?」
マアサは席に座った。
『別に機嫌悪くないし。』
アルヴァンが落ち着いて食べている様子を見てさっきのは何だったんだろうと少し考えてみた。
「もしかして、リリアちゃんのことを心配しているのかしら。特別素性は聞かなかったけど、やはり気になっているの?」
『悪い虫がつかないように警戒しているだけだ。』
「リリアちゃん隠しているけど、やっぱりいい所のお嬢様って感じよね。王都で襲撃があったことを考えると娘だけギンガルに寄こしたって感じだものね。」
『さすがにマアサは鋭いな。』
アルヴァンはスプーンでスープの野菜を掬って食べ始めた。
「まぁレオ君には高嶺の花なのかもしれないわね。それに貴族の令嬢様だったらそれこそ身分的に合わないし無理な話なのよね。」
アルヴァンは手を止めてひらめいた。
『そうだよな。そもそも身分ってものがあるんだから。』
アルヴァンは嬉しそうにしてマアサを見た。その様子を見てマアサも一安心した。
「何考えていたか知らないけどぼっちゃんは元気が一番なんだからね。」
『やっぱり、こども扱いなんだな。』
アルヴァンは再び手を動かし残さずさらにお代わりしてランチを平らげた。