予習と対策だけじゃ補えないから応用練習も大切
いよいよ箪笥の中を整理しなくては。
捨てるもの、衣替えのものと分けていると何時ぞやのお土産Tシャツとタオル。
もう、10年以上たっているけど・・・着る?
最悪、タオルは使えるけど、このTシャツは着るのに抵抗がある。
部屋着・・・いやぁ沖縄前面に出てるのは嫌だ。
なんで買ったんだろうと思い渋々捨てる。もったいない。
もったいないのは十分わかりますが、このまま着ないで取っておいてもいつかまた同じことが起こる。
ちゃんと成仏できるように買ったら着る。気に入ったものを買う。
分かっていてもこんなへましている時点で買い物下手すぎだな。
マルスと戦っている最中、レノヴァの方にはシーマが現れていた。
「あれ?おっさん強そうだね。俺が当たりみたいだね。みんなで誰か強いのと殺れるのか賭けてたんだよね。」
レノヴァは城に近い中央広間にて衛兵数十名と魔導士3班を引き連れていた。
「そうか、それは光栄と取るべきか。それとも、バカにされているのか。」
「いいや、自信持った方がいいっすよ。」
「ほほ、それもそうだな。」
「そうさぁ、そのいきぃぐぅ!」
背後からの魔法弾をもろにくらった。
「今ので自信が持てそうだ。」
シーマは笑った。
「いいねぇ。いつ発動したのか分からなかったよ。じゃあおらからもプレゼントだ。」
弓を打つ体制を取ると光矢が現れた。シーマはその矢を放った。一瞬でレノヴァの目の前に。しかし、突如強い光が放たれその矢は消えた。皆一瞬のことで何が起きたのか分からずおどおどとしている。レノヴァさえも何が起こったのか分からなかった。
「あれ?おかしいなぁ。確かに今ので一撃だったのに。いや・・・いるんだ。無能な影の一族君。けど、どうしてこの矢の対策をひらめいたのか・・・。困るんだよねぇ。せっかく楽しんでいるのに。外野はひっこんでいてほしいなぁ。」
レノヴァは雷の魔法を唱え、雷撃がシーマを襲う。魔導士たちは水魔法でシーマを狙い放った。その水が通電しシーマは感電した。動きが鈍くなり、シーマから明らかに苛立ちを感じていた。
「君たち鬱陶しいなぁ。明らかにおらのこと知っているような戦い方だね。・・・不愉快だ。」
シーマは5体の羽虫を召喚した。5体の羽虫は一斉に兵士の方へ向かっていった。兵士たちは剣で応戦し魔導士たちも羽虫に向かって魔法を放ち攻撃する。一人の兵士が羽虫に襲われ尾突から出された針に刺された。もう一人の兵士がその羽虫を切り裂き退治したが刺された兵士は様子がおかしい。だんだん、身体が膨張していき破裂したと同時にさっきの羽虫が10匹生まれ舞い上がった。
「やかましい虫じゃ。」
レノヴァは風魔法を唱え突風を吹かせた。さすがに羽虫たちは風に抗うこともできず一方向に飛ばされ、そこに火魔法で業火を召喚しすべての虫を焼き尽くした。
「おじさんさぁ、やるじゃん。」
「くだらんことはいい。さっさと本気を見せろ、下衆が。肩慣らしにもならぬ。」
「こういう調子に乗るじじいは嫌いだ。」
シーマは痙攣し始めおどろおどろしい声を上げた。奴が出てくる。レノヴァは冷静に判断し魔導士たちに氷魔法を唱えさせシーマに向けて一斉に放った。シーマがもがき始めたところで兵士たちは魔力補給剤デラックスをシーマに向けて投げた。魔力補給剤デラックスを浴びたシーマは明らかに様子がおかしくなった。背中から二本の腕が伸び始めたものの灰色の皮膚は褐色を帯びて怒号のような叫び声をあげた。
「よし今だ。兵士長と補佐よ。切り裂け。」
レノヴァの支持のもと二人はシーマに向かって走り出し剣を構え剣を振り下ろした。しかし、シーマが消えた。突然の出来事に二人は止まり周囲を見渡した。その場にいた全員がシーマを見逃してしまった。
城の西側の狭い路地でシーマは意識が朦朧としながらマルスに担がれていた。
「完全にこちらの情報が筒抜けのようです。エネヴァー様が一目を置くだけのことはありますね、アルヴァン様は。本当にあの方は魔物にとっての脅威です。至急、エネヴァー様のもとに戻らなくては。」
マルスも先の戦闘で魔力を消耗しているためこの王都の結界内で移動魔法を使うのは困難だった。さらにシーマを担ぎながらでは戦うにも難しい。何としてでもここから脱出しなければと城門を目指していた。
しかし、それは叶いそうになかった。
「これはご機嫌いかがですか、アルヴァン様。先ほどはどうも。」
アルヴァンは二人の前に現れた。
「さっきの威勢はどうしたんだ?見下していた相手に追い詰められてどんな気持ちだ?」
「そうですね・・・。実に不愉快ですね。」
「それで逃げるのか。」
「どう言われようと我々はエネヴァー様命令のもとに動くまで。あなたには関係のないこと。」
「最後に言い残すことはないか。」
「いえ、別に。」
「そうか。じゃあここで。」
担がれていたシーマが急に動き出し、正気を失っているのか兄と弟の顔が同時に表情を変えてアルヴァンの方に向かってきた。
「相変わらず気持ち悪いやつだな。」
アルヴァンは身構え右手に魔力を込めた。シーマは飛び掛かってきたがアルヴァンを越えてそのまま走り去っていった。アルヴァンは去っていくシーマを目で追った。そしてマルスの方へ向き直すとマルスはいなくなっていた。
「ちぃ。囮かぁ。」
アルヴァンはシーマを追って行った。
シーマは路地を抜けて西門の方へ向かっている。苦しそうに息を上げながら通りを突っ切ろうとしていた。アルヴァンは上空へ移動しシーマを発見した。
そして、能力を発動しシーマの走っていく先を泥濘に変えた。シーマは見事に足を取られ身動きが取れづらくなっていた。そこへ兵士長が追い付き剣を兄弟の間へ振り下ろした。
見事に切り裂かれて動きが止まった。アルヴァンは地上に降りてシーマの近くに寄った。ぐったりとして先ほどまでの威勢は消えていた。
「あっ、テト様。先ほどの魔法ですか?助かりました。おかげで討伐できました。」
兵士長は駆け寄りアルヴァンに言った。アルヴァンは親指を立てて合図した。
その後、シドと合流しアルヴァンは引き続き残党の討伐を続け侵略してきた魔物の排除に成功したのであった。
「シーマはあの兵士長が倒したのですよね。能力を得たんじゃ。」
「能力を使用しないように釘を刺しておかないとな。ところでアネッサの方は?」
「セイルとドミニク様の方で生け捕りにしたそうです。」
「大丈夫なのか?」
「えぇ、ホルマリン漬けにして研究資料にするそうです。」
「あぁそう。そして、今回マルスを逃がしてしまったと。」
「全く気配を消しましたね。何かしろの能力でしょうか。」
「うーん、分からん。どちらにしろこのまま野放しにしておけないな。それにエネヴァーにも俺らのことがバレたと思うし。」
「そうなるとエネヴァー様と協力関係にある幹部の動きが余計濃くなりますね。」
「戦うの嫌だな。」
「この国も時間の問題でしょうかね。」
「エネヴァーは利得がない限り活かすことはしないからな。人間は食糧か、統治させるかのどちらかだろうな。」
「本来、人間界の侵略としてはそれが普通なのでは。」
「侵略した先には魔界だって滅びるだろうな。魔物ほど本能のままに生きていないさ。それに魔物だけの世界ってのもつまらないものだ。」
「そうですかね。」
「現にお前だって演劇に行ってただろ。」
「行って・・・ませんよ。」
「はいはい。」
アルヴァンはレノヴァと合流し今回の騒動は幕を閉じたのであった。