表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テト  作者: 安田丘矩
60/144

あまりに度が過ぎると嫌われるぞ

最近、焼肉屋さんに行ったんですが。

個人経営のお店で星評価も高かったので期待していいのかなと思って行ってみたんです。

開店間もない時で自分しかいなかったのでカウンター席に案内されました。

ただ、店主?なのか分からないが何も言わずにこっちが注文を言うのを待っている様子で、

メニューを見てもおすすめの部位とかもなく、何を食べればいいのかと。

赤身とカルビを注文してそそくさとガス式の鉄板を出してきて

何も言わずにお肉も出てきたんですけど・・・牛脂はいらないのか?

食べ方とか何も説明ない。これは足元見られているのか、試されているのか。

まぁお肉はおいしかったけど感じ悪かったな。割に合わないお金を払ってしまった。

やっぱりチェーンの焼肉屋の方がいいのかな。むずかしい。

南門の兵士から魔法弾が上がりその明かりでアルヴァンは城壁の上までやって来た。

周囲は暗くなっているが3キロ先に何かうごめいているのは分かる。


「シド何か感じるか?」


「いえ、何も。能力を使っても感じ取れません。」


「囮かな。それか・・・後ろかな。」


アルヴァンは手刀を背後に向けて放った。しかし、誰もいない。そのまま上に飛んで魔力を手に集め光を灯しそのまま地上へ散りばめた。当たりが照らし出され警備している兵士たちもその光を見上げた。


『場内の兵士の後ろにいる。』


アルヴァンはその兵士の左に瞬間移動しそのまま兵士を前方に押して、右手に魔力を込めて背後の敵に殴りつけた。そいつは見事にアルヴァンの攻撃を受け止めた。


「素晴らしい。さすがですね、アルヴァン様。エネヴァー様と肩を並べるだけはありますね。」


そいつはマルスだった。タキシードを着てシルクハットをかぶりその実態を隠している。


押された兵士は振り返り状況を理解したのか一目散に逃げて行った。


「よく言うな。相変わらず口だけの野郎のくせに偉そうに。」


「私があなたごときに後れを取るとでも。ここで証明でもしときましょうか。」


「残念ながらお前はもう負けているんだ。観念しろ。」


「戯言を。それはこちらのセリフです。」


マルスはアルヴァンに正面から突っ込んでいった。アルヴァンは後方へ下がりカエルからメティスを取り出してマルスに投げつけた。メティスの火は大きく広がりマルスを包み込もうとした。マルスは間一髪で瞬間移動し躱した。


「何の真似ですか。忌々しい。」


メティスは止まった。アルヴァンは静かに黙った。


「おい、なんか言ったらどうだ。」

メティスは怒り気味で言った。


「いや、特には。」

アルヴァンは冷静に返した。


「どうして、いきなり戦えみたいな感じになっているのかい。」


メティスは大きくなった火を鎮めてアルヴァンに近づいた。

「それにおまえさぁ、俺を出さなくても余裕だろ。そういう楽しようとするところが許せないんだよ。」


「別に楽しようとしてないし・・・。ただ、メティスのかっこいいところをたまにはみたいなぁ・・・って。」


「そうか、たまにはか。お前が人間の女とイチャイチャしている他所におれは鳥かごの中で写経。いつか悟りを拓いたらお前を・・・。」


「写経って。おまえは何になるつもりだ?そもそもお前は霊体だろ。」


しびれを切らしてマルスが間に入った。

「この状況で雑談とはいい度胸ですね。お仲間を増やそうと意味のないこと。」


アルヴァンの左下から突然腕が現れ思いっきりひっ搔いた。アルヴァンはさらに後方に躱し、そして指を鳴らした。すると街頭に仕込んでいたマジックボムが一斉に爆発し、マルスは上空へと回避した。


「おぞましい。奇襲を仕掛けていたとは。ただおざなりにもほどがあります。」


マルスは手のひらを地面に向けて『クローズ ハンド~救済を求む彷徨い人~』を発動した。地面から無数の霊体が目覚め生者を求めて這いずり始めた。


「あぁ、出てきましたよ。メティス教祖様。」

アルヴァンはメティスを茶化した。


「おまえはめんどくさいやつに好かれる傾向がある。日頃の行いを改め誠実に生きるべし。」


「そんな有難い言葉いいからなんとかして。」


「お願いしますわ。」


「お願いします。教祖様。」


メティスは地面に火を放ち一面が火に覆われた。這いずっていた霊体は焼かれて消滅していった。上昇気流が発生しその気流に乗ってメティスは上空にいるマルスに向かっていった。


「炎舞蛍火~一夜の夢のごとし~。」


横回転した火が散らばり消えた。上空に突如小さい火の粉が光、消え、光。周囲をほのかに照らしていた。マルスはあたりを警戒しながら身構えていると手先から火が灯った。そして見る見るうちに引火し身体中が火に包まれていく。必死に振り払おうとしても火は勢いを増していく。


「やむを得ませんね。」

マルスは実体を消失させた。


メティスはマルスの霊体の姿をじっと見つめて言った。

「おまえ、なかなかやばい形をしているんだな。」


マルスの霊体の姿は気色の悪い姿をしている。モスグリーン色で至る所から目が現れている。


「これが私の本来の姿。それは美しい。不躾な火にはわかりませんね。」


「おまえさぁ。油断しすぎなんじゃないか。」


「減らず口を。油断などいぃいいい!!!」

マルスは思いっきり何かをくらった。


「何事!」


「おまえさぁ、俺の主が何も考えずに相手してたと思ったか?」


マルスは自分の霊体に何かくっついていることに気が付いた。それはマジックボムだった。


「じゃあな。」

メティスはマルスから離れアルヴァンの元へ戻っていった。


「小癪な真似を・・・最初のマジックボムの爆破はこのためのフェイクでしたか。そして、忌々しいあの火。私と対峙させながら意識を逸らしていましたね。さて、しょうがないですね。」


アルヴァンはマルスに向かって魔力弾を放った。マルスは避けるも手前で爆破し、その衝撃でマジックボムが誘爆した。マルスの姿は消えていった。


「やったか?」


「霊体だからな。確認の取れようがないが、まぁ無事ではないだろうな。」


「それで、俺を利用した上に作戦も聞かされていないんだが。」


「アドリブでも十分いけてたよ。」


「そうか・・・俺は今日から旅に出る。」


「機嫌直して。マルス相手に圧倒してたじゃないか。」


「ムカつく。それにシドだって霊体に攻撃できるだろ。シドはどうした。」


「あいつはさっき、大魔導士様の方へ行ってもらった。メンツもあるから秘密裏にね。」


メティスはアルヴァンを冷たい目で見て言った。

「首突っ込みすぎなんじゃないか。」


「よく言われる。」


兵士や魔導士たちがこちらに向かってきていたのでメティスをなだめ鳥かごに入ってもらいカエルにしまった。


「さてと、俺は場内の残党でも狩りますかな。」

アルヴァンは街の中へ消えていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ