たどり着いた未来は幸か不幸か
お休みを利用していらない本をまとめて売りに行きました。
集めた漫画、学生時代の取っておいた参考書、いつかまた読み返すと別れを告げた新書
場所を取るんですよね・・・今、新書以外は電子で買ってるし
それで、売りに行って来たら・・・140冊で500円・・・
えっ?こんなもん?
確かに日焼けして変色してるのがほとんどだけどなんか不甲斐ない
過去の私が衝動買いして読み老けて、そして今干からびて逝った
まぁもう読まないし・・・忘れよう
こうして、部屋の中の本棚が撤去できたのだった
数時間前のこと。拘束された魔導士が自害した。
緊急対策会議
場所:王の間
参加者:レガリス王・アルヴァン・ドミニク・セイル・レノヴァ・国の偉い人たち
議題:本日敵襲あり
「レガリス王。事は一刻を争う事態となりました。拘束した魔導士が牢で自害しその死の直後、敵の能力と思われる術が発動しました。おそらく、敵は本日中にはこちらにやってくるかと思われます。」
レノヴァは気を落ち着かせながら王に話しかけた。
「それで、横にいるのが例の魔物たちか。」
王はレノヴァに問いただした。
「左様です。その攻め入る魔物に対して助力してもらっております。」
「・・・。それにしてもそこの小さい魔物は似ている。我が家に残っている絵の魔物に。」
王はアルヴァンをじっと見つめた。
「うわぁ見られてる。ほんと若い時のカイノスにそっくりだな。」
アルヴァンはドミニクの方を向いて目を逸らした。
「アルヴァンさんは先代の王カイノスを知っているんですか。」
「大昔にカイノスの母ちゃんを助けたんだ。それであいつが生まれた。」
「これはまた因果ですね。どうします?自己紹介しときますか。」
「よせ。それにもう俺の知らない人物だ。下手に干渉などされたくない。」
「アルヴァンさんらしいですね。」
レノヴァはドミニクを見て言った。
「すまないがドミニク君。説明を頼めるかい。」
「はい。かしこまりました。」
ドミニクは一歩前に出て王に一礼をしてから話しかけた。
「初めましてドミニクと言います。まず、魔導士が自害したことで敵が保持しているマーキングの能力が発動したと考えられます。死の直後に紋様が現れそれが能力者に転送されます。それにより、この魔導士が死んだと知ることになります。
現状、敵襲に備えての魔物に対する情報は開示しており、レノヴァ様指揮のもとで班と王都内での配置転換、連携等見直されております。しかし、本日中となると準備不足の点があり、住民の避難や物資の供給場所などがまだ整備されていないのが現状です。」
王は少し考えた後でドミニクに話しかけた。
「えっと・・・ドミニク君は我が国の兵士だったのかい?」
「いえ、私は魔王城の研究者です。そして、テト様に助力している身です。」
「ほう、えらく謙遜するのだな。そうか、そこの小さき魔物の人徳であったか。」
「えぇ、まぁ。話を戻しますが、城の兵士の配置は変更ございませんが城下の街については人員の配置の変更と一部住民の避難を実施いただきたいです。」
「それは構わないが、それでどのようにするつもりか。」
「まず、こちらにいるゾンビの魔物を使って探知している魔物をおびき寄せ討伐いたします。そのためにピンポイントでその場所におびき寄せ被害を少なくするつもりです。」
「俺重大な役目ので精一杯頑張ります。」
セイルがいきなりじゃべり出すので王は驚いた。
「そこの魔物はしゃべれるのだな。」
「えぇこれでも私よりも先輩なんです。」
「はい。セイルと言います。よろしくな。」
「先輩。王の御前ですよ。もう少し謹んでください。」
セイルは頭をかいて照れていた。
「あっ、いっけなーい。忘れてた。ゆるしてくださいね。」
「まぁ人間でもあるまいし構わないが・・・。」
「その探知する魔物につきましては私たちが討伐します。援護で一班つけていただきたい。そのポイント付近の警備として配置していただければ十分です。」
「よかろう。そして、そこのテトという魔物は。」
「テトさんはレノヴァ様と一緒にいてもらい、首謀者配下の魔物が現れた際に対応していただきます。おそらく、シーマとマルスという魔物が襲ってくると推察しておりますがどれほどの魔物がこちらに来るのか分かりませんので。」
「そうか、テトという魔物は強いのだな。」
「えぇ、魔王の配下である方なので。」
「テトさんそうだったんですか?」
レノヴァは驚いてアルヴァンを見た。
「えぇいきなりなんだよ。怖いんだけど。」
アルヴァンはレノヴァの眼圧にひるんだ。
「それは強いな。恐れ入ったよ。それで、今の軍事力で対応は出来そうなのか。」
王はドミニクに問いかけた。
「想定内であればなんとか五分くらいかと。」
「そうか、ほぼ勝ち目がないということか。」
王は少し考え後で話し始めた。
「長きにわたって争いがあった時代が終わり、安寧を得られても繰り返していくのが運命なのだと。それは人が人であるためであり、欲望のままに動く結果のだろう。争いなどなくならない。
結局は奪い奪われてだ。それが人間だけでなく生き物としての本能だと。先代も王になってから苦労は絶えなかったそうだ。絶対的に平和なんて訪れなかったから。国が豊かになれば人々の治安が良くなっていくわけではない。国として統制していけば行くほど問題が起こり、終わりがない。
それでも国の王としての立場を全うし続けた。そして、最期にこう言っていたそうだ。
『生まれ育ったあの村は貧しかったけれど、皆明日を生きるために精一杯暮らしていた。
そして、生きるためにお互いを意識して協力し合えていた。私が望んでいた平和とは本来こんなものだったのだろう。』と。
私はそれでも王として民を導かなくてはならない。それが犠牲を払う決断であっても。」
王の言葉に皆頭を下げた。
「まだお若いのに品格がありますね。」
ドミニクはアルヴァンに話しかけた。
「あれがカイノスの血を引いているとは思えないけどな。」
「やっぱり別人ですか?」
「あの王は正真正銘の王なんだ。そして、カイノスは王じゃない。ただの人間だった。あいつは王になる器なんてもっていなかった。けど、優しい人間だった。だから、自分を犠牲にしてまでも守りたい意志の強さは人一倍あってバカな男だった。
本当は、もっとあの村でみんなに看取られながら死んでいってほしかったんだが。ただでさえ泣き虫なのに、王の装いを纏わされてしまって・・・ミランダも本当はそんなこと望んでいなかったのにな。」
「アルヴァンさんって何気にお節介ですよね。」
「うるせぇ。」
「そういえば気になることがあるんですけど、アルヴァンさんって何歳なんですか?この国が400年前くらいに成立してからだとするとそれ以上に生きているですよね。」
「さぁなぁ。いちいち年齢なんて気にしてない。それに自我が芽生えたときからしか覚えがないから正確な年齢までは分からない。」
「そうなんですね。長命な魔物はいますが、アルヴァンさんみたいな魔物見たことないので。」
「見世物にする気か?」
「それもいいですね。」
ドミニクは少し笑みを浮かべた。
この会議の後、至急兵士、魔導士たちは指定の位置につき戦闘態勢に入れるように取り計らった。同時に住人の避難も速やかに行われ緊張が高まっていった。