危険物の取扱には十分気を付けて
リンドン郊外の沼地。そこに一匹の鵜が降り立った。生餌を啄み食べてるふりをする。ただ見た目からではどこにでもいるただの鵜だったが、その正体は改造されたロリコが操りさらにそのロリコを操るリカルド。そう改造された鵜だった。
この鵜の開発にはかなり意見された。
A氏:ここは魔法弾が撃てるように口に魔法式を組み込んだ装置をつけましょう。出力マックスでこれで敵も木っ端みじん。
B氏:そんなのつけたら、この鵜もバラバラになりますよ。それに今回は潜入と捜査なので隠密にかつ敵にバレてはいけないのが重要なのでは。
C氏:僕も慎重である必要があります。そして、もし最悪の場合、敵にバレたときは自爆できるようにすべきだと思います。
A氏:自爆?そうか!じゃあ盛大に花火が撃ちあがるように仕掛けるか。
B氏:いや、いくら自爆してもわざわざ目立つ必要もないでしょう。
C氏:そういえば、かなり警戒していますが一体何に警戒しているんですか。
A氏:エネヴァー様の部下でアネッサっていう探知系の魔物がいるんだよ。あの性悪女は5キロ圏内の敵なら容易に場所を特定できるし、たとえその場所を離れていたとしても奴から挿し木して育った血のバラが不審者を知らせるんだ。
C氏:僕のやどり木と似ていますね。
B氏:植物の系統は基本的に残留思念を自分の一部を残すことで増えていくことを可能としているから似てくるんだろ。
A氏:今回、まずリンドンには近づかずに直接、北西の湖に行く必要がある。アネッサがどこにいるかは分からないがまず、そんな湖にはいかないと思うが、このバラが少し厄介だ。どこに植えられているか分からないからな。
C氏:じゃあ、鵜を改造する意味がないじゃないですか。
B氏:いやおそらくだが、そのアネッサが敵と見なしているものに関してはそのバラが反応すると思う。そこまで独立して判断できるとは到底思えないからな。
A氏:魔力を探知するのであっても、ロリコが操ることになるから心配はいらないさ。
C氏:そうですか。
A氏:じゃあ、自爆装置と緊急脱出装置と魔法弾出力装置と。
B氏:それじゃあ見た目からして不自然です。そこに配下の魔物が居たらバレてしまいます。自爆装置だけにしてください。
A氏:えぇ、せっかく改造するのに。もっとチャレンジしていきたい。
C氏:なら、羽のところに出力装置をつけて発射と同時にすごい勢いで飛べるようにすればいいんじゃないですか。
A氏:それいいね。そうする。
こうして、出来上がった鵜は遠回りしながらも北西の湖の森にやって来た。生い茂る一本の木に止まって辺りの様子を眺めた。特に何か仕掛けられている様子もなく、たまに野生動物や魔物が時折顔を見せるくらいだった。
「ここにいったい何があるんでしょう。」
鵜を通してみているリカルドは正直ここで何をすればいいのか困っていた。そもそも、この区域に白鳥ならまだしも鵜がいるのも変じゃないかと思った。一先ず木々を転々として周囲を探ってみるが特に何もなかった。だとすると、水の中かと思い、鵜は湖へ飛び込んだ。
湖の中は静かだった。ただ、まだ昼間なのに薄暗い。そして、潜っていくとより暗さが増していく。これ以上行くと何も見えない。そういえば、このナマコって光るんだっけと思い、「光れ」と念じてみると魔流管を通して鵜が光り始めた。
「おっいい感じ・・・だけど、目立つなぁ。」
このまま一気に湖底にたどり着くと何かの残骸やカニなどの生き物がいるぐらいで特に変わったものはなかった。
「ここじゃないのかな・・・。」
と引き返そうとしたときに何かが後ろから横切った。一瞬反応が遅れたが振り返ると何もいなかった。もう一度辺りを見渡してみても何もいない。気のせいだったのかと思いつつ後ろを向いたとき
「なに?」
リカルドは思わず驚いた。そこにいたのはでっかい魚。鰭がひらひらとしていて、尾びれが特に長かった。
「まぶしいし、うるさいし。変なのがいると思ったらまどろっこしい鵜?なのか魔物なのか?」
正体がバレている?これは敵なのか、それとも。リカルドは最悪自爆のことも考え話し始めた。
「えっと。ここにスターフィッシュさんがいらっしゃると聞いてきたんですが・・・ご存じですが。」
「あぁ、こっちではスターフィッシュで活動しているが。」
「あぁそうなんですか・・・えぇ!」
「さっきから変な声でうるさいんだが。」
ロリコを返して話しているので、あの金切声はさすがにきついのだった。
「あなたがスターフィッシュさん。」
「久々に呼ばれたから驚いたわ。まさかこんな湖まで知ってるやつがいるなんて思いもしなかったわ。」
「ところでスターフィッシュさん、ここで何を?ここにお住まいなんですか?」
「約束の日を待っているんだよ。」
「約束の日?」
「特にすることもないからねぇ。ここでのんびり暮らしているってわけだ。」
「今、あなたが授けた願い?によって地上では魔物が乱用し始めているんですが。」
「まぁ約束の日が近いからね。」
「約束の日って何なんですか?」
「君、誰かの受け売りでここまで来たんだろ。知ってどうすんだよ。」
「魔王が消息を絶ちました。そして、この状況を知っているのは魔王とそしてあなただと思っています。教えてほしいんです。」
「そうかぁ。あいつ動き始めたのかぁ。連絡ありがとう。本当に約束の日が近いってことなんだな。はぁ、ようやくこの生活が終わりそうだ。」
まともに応えてくれなさそうなのでリカルドは一つだけ聞いてみた。
「願いってなんなんですか?」
「願いは願いだよ。人間に与えたからね。」
「なんで人の願いを他人が奪ったりすることができるんですか?望んでもいないのに。」
「君、着眼点がいいね。そうだね、願いは自分が願うから願いなんだ。だけど、願わないものがその願いを使うとそれは願いじゃなくなるんだよね。」
「それって。」
「さぁ俺はもう一眠りして約束の日を待つよ。それと、君なんか厄介なの連れてきているでしょ。湖の上になにか禍々しいのがいるよ。気をつけてね。」
急に泡が正面を多い。スターフィッシュは消えていった。まさかスターフィッシュ本人に出会えるなんて思ってもみなかった。ただ、具体的な情報を聞くことができなかった。それに約束の日ってなんだ。その日が近いって。
そして、・・・湖の上に何かいる!バレたのか?慎重にここまで来たのに。どうしようか、おかえり君を使うか・・・けど魔力の形跡が残るからまずい。こうなったら最終手段で。
湖の上空。アネッサと数人の部下が湖を見渡していた。アネッサは蘭の魔物だ。擬人化されているが基本的な姿はもっとおぞましい。
「それにしてもなんでこんなところにロリコがいるのかしら。今、イレイアにいたんじゃ。」
すると水面から勢いよく飛び出してきた。アネッサは思わずはっとしたが、その飛び出してきたものを追った。
「ロリコなの?あなたなにをしているの。」
そして、凄まじい光を放ち自爆した。轟音を周囲にあげ、その爆風が吹き荒れた。爆風に巻き込まれた髪はぼさぼさになり、やけどと焼け焦げた何かが付着した。アネッサは止まり、しばらく動かなかった。そして、
「ぶっころす!!!!何!私をはめたの?あれは鳥?ロリコだったの!」
そして、ぼさぼさになった髪に気づき
「いっやぁああああ!」
そして、また黙った。そして、我に返った。部下たちが寄ってきて様子を伺っていると
「一先ず、ロリコを確認しにイレイアに向かうわ。何名かはこの湖を調べて。私は・・・まずお風呂に入り帰るわ。」
部下の一人が「あのぉ・・・。」と声をかけるもすごい目で見られ引いてしまった。アネッサはそそくさとエネヴァーのもとへ帰っていった。
研究室でリカルドは焦っていた。
「どうしよう・・・。バレたかも。」
「まじでか!どうだった?自爆はいい感じだった。」
セイルは目を輝かせてリカルドに聞いてきた。
「見れなかったですけど、無事に発動していましたよ。そうそう、出力装置はばっちりでしたよ。一気に上空へ飛んでいけました・・・じゃなくて、一瞬でしたが女のような人が見えてたぶんその人に追いかけられたんです。」
「あぁそいつがアネッサだ。そうか、ロリコの魔力で分かったのかもな。けど、どうやって探知したんだ?」
「それが分かりません。かなり大回りしましたし、あんな外れにある湖を警戒してるなんて思えません。」
その話を聞いてドミニクは応えた。
「能力者の能力かもな。マーキングって言って、能力を発動すると生き物に限らず、人やモノにまでマークすることができていくら離れていても相手のおおよその位置が分かるそうだ。」
「じゃあロリコさんがマークされていたと。」
「いや、別の何かだろう。ロリコについていたらこの研究室はサヨナラだっただろうが。マーキングはマークを付けた相手を念じないと特定されないから、狩りにロリコについていても念じていない限り場所は特定されなかっただろう。」
「けど、これであのナマコが消息を絶ったことがバレます。」
「うーん。まずはアルヴァン様に報告だな。話はそれからだ。」
「はい、すぐに。」
スターフィッシュと接触したリカルドだったがこれといった手掛かりはつかめなかったが、『約束の日』というこの日が訪れることを待っていた。そして、それは魔王も同じなのだと悟った。しかし、その日を迎えることは何か不吉なことが起こる序章なのだと。リカルドはアルヴァンに連絡を取り、アルヴァンも研究所へ向かうのだった。
ようやく、第2章が終わりました。お疲れ様です。
第1章が20話くらいだったのに第2章30話。
このままだと章を追うごとに話数が増えていく。
これは・・・区切り方としてあっているのか?
作品情報に今まで書いた文字数を見て驚いた。15万字だって。
400字の原稿用紙350枚くらいだと。
前に「50話言ったよ」、「塵と積もれば・・・」とか言ってたんですが
シンプルに頭おかしいのか、それとも語るに落ちたなって言われそうな
まぁなんにせよ、ここまでの字数の作品を書いたことないので
むしろ、「意外に書けるものなんだな」とここまで来ると称賛する。
さてさて、話が長くなりましたがここまでお付き合いいただきありがとうございます。
ただ、第3章まだちょっとしか書けていません。ごめんなさい。
頑張ってくるから、首を長くして変なところ吊って痛い痛いして待っててください。
今後ともよろしくお願いいたします。
安田 丘矩