旅立ちの朝はもっとドラマチックにしてくれよ
自分が大人になったなぁと感じた時ってどんな時でした?
正直、20歳になった時ってそこまで大人になった実感なんてなかったし
まだ大学に通っていたせいか学生気分だったので
いま18歳が成人になったんでしたっけ。さすがにまだおぼっこいのではと思う今日この頃。
それよりも、最近の子たちってほんとに若いっていうより幼い感じがあるから、
大人って感じがないんですよね。ならいつから大人なんだと聞かれると・・・うーん。
最近、SNSで投稿を見てた時に自分の写真上げてる人の容姿をみて
「40前半かなと思って」プロフィールを見ると35歳・・・
えっ?老けてない?これって節目なのか?30前半くらいの人だとまだ20代乗っかってるかなと
思っていたんだけど、この節目を越えてくるとぐっと老け込むのか・・・老い老い(汗
旅立ちの朝、屋敷は使用人何名かとジェイス、レノヴァが見送りに来た。
そして、護衛につくシルバもいた。女の割に高身長でキリっとした顔立ちをしている。
『強そうだな。』
「衛兵の中でもかなり腕の立つ人なのよ。」
『ほぉ。』
シルバはユリアの前にやってきて一礼した後で話した。
「おはようございます。ユリア様この度は私シルバがお供させていただきますので今後ともよろしくお願いいたします。」
「こちらこそよろしくお願いします。ごめんなさいね。急に護衛になっていただくなんて。」
「滅相もございません。一度、ギンガルには祖父のこともありますのでこちらとしても良かったです。」
「そう頂けるならこちらこそ。」
「そして、こちらにいらっしゃるのが例のテトさんでしたっけ。」
高い位置から見下ろされアルヴァンはユリアの後ろに半分隠れた。
『俺こいつ苦手だ。』
ユリアはアルヴァンが珍しく身を引いているので少し驚いた。
「えぇ。大丈夫、害はないから。」
「そうですね・・・。」
シルバは屈みアルヴァンをじっと見つめた。アルヴァンはさらにユリアの後ろに隠れた。
『俺こいつ怖い。』
「シルバさん。あんまり警戒されるとテトさん嫌がるからほどほどにね。」
「そうですね。失礼しました。」
『まったくだ。』
レノヴァが前に出てユリアに言った。
「ユリアよ。一人で疎開させる親を許してほしい。」
「お父様。お父様にはお父様のやるべきことがあります。私はお邪魔にならないように移り住むだけですのでお気になさらず。お父様こそお体を大切にしてください。」
レノヴァは涙ぐみながら言った。
「ユリアよ。行商を送るから手紙を必ずよこしてくれよ。もし、向こうで困ったことがあったらいつでも連絡してくれればこちらで対応するからな。あと、定期的に何か送るように手配するから・・・何がいいか・・・。」
レノヴァの話が一向に終わりそうもないのでアルヴァンはめんどくさがって、
『このおっさんどんだけ過保護なんだよ。もういいわ、』
アルヴァンは移動魔法を唱えてユリアとシルバと共に姿が消えた。
突然、光が現れて3人の姿がなくなってしまい屋敷の外ではパニックになってしまった。
一瞬でギンガルの郊外に飛んできて、ユリアとシルバはいったい何が起きたのかと驚いていた。
「アルヴァンさんがやったの?」
『いちいち、馬車で揺られていくのも疲れるからな。さっさとマアサのところで腹ごしらいしたいんだ。』
「前も姿が突然消えたことがあったけど、長距離を一瞬で移動できるなんて。」
シルバは我に返りユリアに言った。
「ユリア様ご無事ですか?」
「えぇ大丈夫。テトさんが魔法でギンガルに飛ばしてくれたみたいだから。」
「この魔物にそんな力が・・・。」
再びアルヴァンはシルバに見られてユリアの後ろに隠れた。
『こいつ怖い。」
「なんだか、明らかに警戒されていますね。」
「そうね、デリケートだから。」
「けど、いきなりいなくなったとなると屋敷の皆さん大丈夫でしょうか?」
「うーん・・・まぁ何日かした後に誰かがここまで来るんじゃないかしら。その時はテトさんが怒られてくれると思うけど。」
『なんで俺だけなんだよ。』
「ユリア様。こんな早くに着いてしまいましたが、いかがいたしましょうか。」
ユリアは少し考えた後で話した。
「シルバさんはおじいさまのところへ行ってあげてください。私たちはレオさんのお宅へ行ってきますので。」
「いえ、私は護衛なのでユリア様お一人にするのも。」
「大丈夫です。ギンガルの治安は問題ないでしょう。それに頼りになる護衛はここにもいますので。」
『いつから俺は護衛になったんだ?』
「しかし・・・。」
「今回に関しては私の素性は隠すことにしています。名前もユリアでなくリリアと呼ぶようにお願いします。」
「リリア・・様ですか?」
「そうです。この町に馴染む間は少し接触を控えたほうがいいと思うの。もちろん連絡とか必要になるから会う必要があるけど悟られてはだめよ。」
『けど、おまえはどう見たって貴族の令嬢にしか見えないと思うが。隠しきれないだろ。』
「そうですか・・・わかりました。祖父に会ってきます。」
「よかったわね。」
シルバはアルヴァンの前にやってきて屈みこみ目を見て言った。
「ユリア様に偉く気に入られているようだな。私はお前をまだ信用できていないが、ユリア様を頼むぞ。それと、もし傷つけようとするものなら容赦しないからな。」
アルヴァンはユリアを盾にして隠れた。
『おい、ユリア。こいつほんとに嫌なんだけど。いくら魔物が嫌だと言ってもなんでこう高圧的なんだ。』
さすがにユリアは答えられず苦笑いした。
シルバと別れ、アルヴァンとユリアはレオの家に向かうことになったが、
「あら!ぼっちゃんじゃない!!」
ちょうどマアサのお店の前を通り過ぎようとしたときにマアサが店から出てきたのだった。マアサは近づきアルヴァンに言った。
「もう、ぼっちゃん。一体どこに行っていたの?もう一か月くらい経つのかしら。いつも急にいなくなるけど、ご飯も用意していたのにいなくなるなんて驚いたわ。」
『俺はペットか何かと思われているのか?』
ユリアはクスクスと笑いながら言った。
「見た目からして愛くるしいから。」
『おい。』
マアサはユリアに気づいて話しかけた。
「ところでお嬢さんはどこから来たんだい?」
突然の素性を聞かれてユリアは少し焦ったがマアサに応えた。
「あっはい。はじめまして、ゆ・・リリアと申します。移住を検討しにこのギンガルにきました。道中盗賊に襲われそうになったところをテトさんに助けていただいて今、テトさんのお住いにお邪魔するところなんです。」
『よくもまぁ、そんなウソを。』
「あら、そうだったのね。大変だったでしょう、ケガとかはない?」
「えぇ大丈夫です。」
『まぁウソだからな。』
「アルヴァンさん、うるさい。」
「そうだ、まだ朝早いけど何か食べるかい?きっとぼっちゃんも食べたいでしょ。」
『まぁ先に腹ごしらいを。』
アルヴァンはマアサの家に向かおうとしたとき、
「ちょっと、アルヴァンさん。先にレオさんの家には行かないんですか。」
『いいよ。あいつどうせまだ寝てる。モーニングを食べてからでも遅くはないぞ。』
ユリアはきっとこれが毎日で普通なのだと学んだ。