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テト  作者: 安田丘矩
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みんなお願いだから落ち着いて

タッチパネルのお店増えましたのよね。

コロナの時以来急速に普及したとか。

昔、居酒屋でバイトしていた時注文は手書きで内容は簡略した書き方をしていたから

スムーズには聞き取っていたと思うけど、やっぱり間違うときはあるんです。

「これ読めない。」、「このサラダ何をかけるの。」とか

その都度で再度お客様に確認を取りにいかないといけないからね。

人によっては性格悪いやつもおるんですよ。あぁいう人って人間なんだと思っているのでしょう。

それはさておいて、タッチパネルの普及はそういうストレスややり取りをなくすいい方法だと。

けれど、ジジババには最先端すぎるんですよね。結局、店員召喚されてしまう。

便利になっているようでツールとしての操作が認知されないとまだまだ難しいのかな。

その頃カイノスは魔導士長の死を受けて場内で葬儀が執り行われた。謎の魔物の存在があったこと、そして、その件に関してアルヴァンが処理したことでよりイレイアでの危機が明確になった。

今回の魔物の潜入を許しお嬢様を救ったとして、アルヴァンは救世主としてあがめられる反面、もともとアルヴァンがグルだったのではと噂する声も出始めた。


当の本人であるアルヴァンはレノヴァの屋敷でレノヴァとユリアを交えて話し合いが行われていた。


「テトさん。まず娘を助けていただきありがとうございます。そして、今回の件国内に潜伏した魔物を処理していただいたとか。」


『ほんと不用心な国だな。』


「それで、テトさん。その魔物はどこへ?」


『研究機関に渡して改造手術を。』


「改造手術?」

ユリアが疑問を抱きアルヴァンに聞いた。


『あのままじゃ危険だから、改造して別件で使うんだ。』

アルヴァンにそう言われたがユリアは全く理解できなかった。


「まぁ今回はテトさんに後始末も行ってもらったということにします。それで、現在イレイアの状況は今回の件でより明確になったと思います。この国を代表する魔導士が魔物の手に落ちていて、かつ魔物の手によって助けられた。我々はテトさんを決して脅威だとは思っていませんが、一部の者から疑念の声が上がっているのも事実です。」


『だろうな。ここでの暮らしも悪くはなかったがさすがにこの状況では国の指揮にかかわるな。』


「すまないが、ユリアを連れて疎開してくれないか?」


『わかった。ユリアを連れて・・・えっ?なんでそうなったんだ?』


「実は・・・。」

ユリアが申し訳なさそうに言った。



それは、アルヴァンが研究室へ行ってしまったすぐ後の話。ユリアはしばらく訓練場にいてレノヴァと合流した。安否確認ができてレノヴァはほっとしていた。そして、迎えの者をよ寄こしユリアは屋敷に戻っていた。


「シドさん。エネヴァーって誰なの?それに裏切者って?」

シドは何も答えず影の中でじっとしている。


ユリアはベランダに出て手すりによじ登りそのままダイブした。

シドはユリアの奇行驚きすかさず影から出てユリアを影で固定した。


「ちょ!あんた何考えているんですか!」


「あれ?いるじゃない?ってっきり人間を見限ってどっか行ってしまったと。」


「アルヴァン様の命ですから。見殺しになどできません。それに分かってて飛び降りたんでしょ。」


「だって、出てきてくれないもの。」

シドはユリアをベランダに戻し一呼吸入れた。


「それで、さっきの質問だけど。」


「こちらから特に申し上げることはございません。」


「前に言っていた敵対している勢力の親玉ってことね。けど、裏切者ってどういうことなのか分からないわ。」


「そのままの意味です。魔物なのですから、人間に加担しているなんて裏切り行為ってことです。」


「そういうことなのかしら・・・。それでアルヴァンさんはどちらへ?」


「さぁ。あの気持ち悪い物体を処分に行ったのでは。」


「シドさんって意固地ね。」


「どうぞお好きにお呼びください。」

ユリアは部屋に入りソファーに腰を掛けた。


「ねぇ。カーキン様が魔物に乗っ取られているっていつ分かったの?」


「ナイフを投げたところですね。魔物に対して負の感情がある者が訓練を装って殺し合いにしてくるのは特に問題ありません。

アルヴァン様は相手の殺意を察して上空へ移動した際、本来はそのまま幻影で接近した後に拘束するつもりだったのでしょう。けど、飛び道具が出てきたとき明らかに幻影が見破られていたんです。

通常、幻影を見破る場合は幻影に魔法を当てるか、物理的に攻撃して感触から見破るしかありません。

しかし、相手はその幻影を見た瞬間に見破っていた。だから、そのまま幻影を盾にして移動魔法で真下へ移動したんです。

アルヴァン様の幻影は自分の魔力を纏わせるため並大抵な魔導士では見破ることはまず無理です。」


「相当高度なことをやっていたのね。」


「ただ、あの魔物が一人でこの国に訪れていたとは考えづらいのです。やはり、内通者がいる可能性を疑ったほうがよろしいかと。」


「そうなのね。この国もその魔物たちによって陥落されてしまうのかしら。」


「どちらにせよ。時間の問題だけとしか言えません。今回の件、アルヴァン様があの魔物を処分したとしても、あの魔物の行方を追ってくる魔物は必ず出てきます。また、あの現場に内通者がいた場合さらに事態が早まる可能性も。」


ユリアは下を向いて目を閉じた。そして、考えをまとめたうえでシドに言った。

「ねぇ、シドさん。あなたたちについて行っていいかしら。」


「何を馬鹿なことを。あなたは人間ですよ。ちょっと変わっていますが。」


「えぇおかしな人間だと思うわ。けど、あなたたちしかいないのよ。この状況を救ってくれるのは。」


「買い被りすぎていませんか?」


「本気よ。」


「ダメです。」

シドは頑なに拒んだ。


「なぜよ。」


「あなたが人間だからです。それにわたしたちの目的とこの国を救うことは全く違います。その目的は場合によっては人間界を脅かすものになるかもしれません。」


「それはないわ。だってアルヴァンさんだもの。」


なぜここまで信じることができるのかシドは疑問に思いながらもこの女の利用価値を考えるとそばに置いておくのもありなのかもと思った。


「どちらにせよ、あなたはレノヴァ様に許可をもらう必要があるのでは。黙って出て行って、私たちが良からぬ扱いを受けるのも嫌ですので。」


「シドさんってほんとに魔物なの?」


「はぁ・・・。魔物的には間違っているのでしょう。けど主だったらそうするので代理としてお話ししたまでです。」


ユリアはニコッとしてシドに言った。

「わかったわ。ちゃんとお父様を説得するわ。」


それからユリアはレノヴァの元へ行って説得するのであった。



レノヴァは苦い表情をしながらアルヴァンに言った。

「今回の件は、この国の防衛の穴に付け込まれたことであり失態だった。それこそ、国民の不安を仰いでしまった。」


『ただ、相手が悪かったと言うしかないかも。一見俺達でも気づかないし、それにロリコ自体潜入のスペシャリストだったからな。そんな奴送り込んできたということは明らかにイレイアを落としに来るだろうな。』


ユリアはアルヴァンに言った。

「そうだったのね・・・。」


レノヴァは続けてアルヴァンに言った。

「テトさんはもう分っているのだろう。ここイレイアのカイノスが戦場になることを。それがそんな遠い未来の話ではないということも。それでも私はこの国の魔導士であり、この国を守る義務がある。だからこそ、あなたに娘を預けたい。そして、守ってほしいのです。」


『この国を代表とする魔導士がどこの馬の骨なのか分からぬ魔物に懇願するとは。相当のお人よしなのだな。』


「お父様を悪く言わないでほしいわ。私たちは人間なの。そして、脆いのよ。心も身体も。それが分かっているからこその頼みだということは分かってほしいの。」


『そういえば、カイノスの母ちゃんもおんなじだったのかもな。』


「カイノスのかあちゃん?」


『なんでもない。昔の話だ。』


アルヴァンはレノヴァに向かって深く頭を下げた。それを見たレノヴァはなぜだか涙がこぼれた。


「お父様・・・。」


ユリアは涙見せるレノヴァに何も言えなかった。アルヴァンは頭を上げた。


『さて、俺らはこのまま出ていけばいいのか?』


ユリアはアルヴァンに目を向けて人語で話した。

「テトさん、明日の朝ここを立ちます。護衛一人が一緒についていきますのでお願いします。」


『たとえ、疎開したってお嬢様なのは変わらないんだな。』


レノヴァは涙と拭いアルヴァンに言った。

「テトさん、娘をお願いします。」


レノヴァも深々と頭を下げた。


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