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テト  作者: 安田丘矩
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食事がすんでないときは表に、食事が終わったら裏に

侍タイムスリッパーを見ました。

昨年、話題になっていて映画館へ見に行こうと思って調べたら

自分のお住いの地域の上映は今週終了で残念ながら行けなかったです。

今、〇マプラで見れるので本当にラッキーでした。

コメディ作品と思っていたんですけど、これはやられました。

役者さんの演技がすごすぎて感動、久々にこういう映画見たと満足でした。

冨家さんの目を潤ませてセリフ言うシーンは本当に役者さんってすごいと思った。

このラストまでの一貫した流れがより際立って迫力がありました。

皆さんもぜひご覧になってください。


ディナーの席に案内されテーブルセットを見たとき、


『これどっちから使うんだ。右からか?左からか?』


「落ち着いてください。テーブルマナーなんて知らないでしょ。よくもまぁこんなご丁寧に用意されたことですか。魔物なめてるんですか。アルヴァン様ここはワイルドに手掴みで。」


『えぇー。こういうところではちゃんとしたいんだけど。』


「あんた魔物でしょうが。なに恥じらっているんですか。」


さすがに二人の言い争いにユリアが間に入った。

「二人とも落ち着いて。せめてフォークで食べてくれればいいから。」


『いや、そういう問題なのかよ。』

そうこうしていると食堂に誰か入ってきた。

黒を主体とし白いラインが入ったロングコートを纏い、明らかに国の偉い人だとわかる装いで現れたこの人物こそレノヴァだった。レノヴァはアルヴァンと目が合うと立ち止まり少しまじまじとアルヴァンを見た。


『おい、あのおっさんがお前の父ちゃんか?』

アルヴァンの砕けた言い方にユリスは思わず笑ってしまった。するとレノヴァはユリアを見ていった。


「どうしたんだ。急に。」


ユリアは焦りながらも言い返した。

「何でもないわ。ちょっと思い出しただけ。」


「何を思い出したのか興味があるがせっかくのお客様を待たせてはいけない。」


『おまえの父ちゃん分かってるな。』


「アルヴァンさんがよく食べるってことを伝えてあるからだと。」

レノヴァはユリアとアルヴァンが互いに見合っているのを見て問いかけた。


「ユリアよ。えらくその魔物と仲がいいんだな。」


「えぇ。お茶しながらお話をしていたの。」


「そうか。人間の言葉を理解できるようだな。えっと、テトさんだったかな。今日は遥々ギンガルから来ていただいてうれしく思う。さぁディナーを召し上がってくれ。」


レノヴァの合図で使用人が料理を運んできた。アルヴァンの前に出された料理はやさいと鶏もも肉のテリーヌに野菜のトマト香草煮が出された。その量はそれぞれビスケットサイズで一口で食べ終わってしまう。


アルヴァンはユリアを見ていった。

『おい。食事ってこれだけか?貴族の料理って小食なのか?』


ユリアは少し笑いをこらえた後で言った。

「アルヴァンさん。これは先付だから、この後にオードブル、スープ、ポワゾンとメインディッシュの料理が順番に出されていくのよ。」


それを見かねてシドがこっそりアルヴァンに言った。

「だから、言ったでしょ。試されているんですよ。」


『うるさいなぁ。こんな難しい料理食べたことないだけだ。』


その様子を見てレノヴァはアルヴァンに言った。

「少し物足りなさそうに見えるが何かつまめそうなものを出そうか。」

アルヴァンは頷いた。


レノヴァは非言語で通じ合えたのがうれしく使用人言って特別に料理を付け足し、アルヴァンの下へウサギのベーコンのキッシュが一切れ置かれた。


『おぉこう言うのだよ。分かってるな、おまえの父ちゃん。』


アルヴァンの分かりやすいふるまいにレノヴァとユリアは互いに見合いうれしそうに笑った。アルヴァンはキッシュの一切れをもって齧り付いた。深みが増した肉に卵の濃厚さにサクッとした生地が絶妙に広がってアルヴァンは咀嚼しながらその味を噛みしめていた。


「その様子だとお気に召したみたいだね。」


アルヴァンは手前のフォークを手に取り先付のテリーヌを指して一口で食べた。すると、野菜の甘味と鶏肉のうまみが凝縮され口いっぱいに行きわたった。アルヴァンはフォークを机に置いてユリスに言った。


『これうますぎるだろ。』


「喜んでもらえてよかった。料理長に伝えておくわね。」


シドがそのアルヴァンの様子を見て言った。

「豚に真珠。」


『何か言ったか。』


「いえ、何も。」


レノヴァは先付を食べ終えアルヴァンに話しかけた。

「テトさん、これ言って相談なんだが。このカイノスにしばらくいてほしいのだが。どうだろう。」


『おぉ。いよいよ本題だな。』


「お父様。さすがに飼い主の方に断りもせずに打診するなんて。」


「分かっているが、今このイレイアも例外なく危機が迫ってきている。たぶん、テトさんも分かっているのではないか。」


『さすが、おまえの父ちゃんだな。察しがいいな。あと、別に飼われていない。二度というな。』


「え?そうなの?」

ユリアは思わず人語で言葉が出てしまった。


「そうだとも。そもそも、一度はこのイレイアを出た後でまた戻ってきているみたいだ。きっと事情があったのだろう。」


『このおっさん、俺たちの素行を調べていたみたいだな。油断できないな。』


シドは呆れて言った。

「油断できない以前に隙だらけなんですよ。」


『おまえはいちいちツッコんでくるな。』


「お父様、事情とは?何かご存じなのですか?」

ユリアは話を戻した。


「あぁ、もう三年になるな。その当時、ベルリッツへ派遣していた使いの者が駐在員をすべて連れて戻ってきたんだ。ほぼ夜逃げ状態で。事情を聞くとベルリッツの主都グルミアは魔物の息吹がかかっていて陥落するのも時間の問題だと。賢い魔物だ、おそらく魔物同士の争いを避けたんだろう。」


『うーん。間違っていないけど目的は違うかな。』


「えっ違うの?」


『ベルリッツの主都が陥落することは知っていた。向かっている道中に同朋に襲われたし。俺らはこの能力が分からない以上、後手に回るのを避けた。そして、こっちには切り札がある。』


「アルヴァン様。それは・・・。」


「切り札ですって。」

ユリアは思わず人語で話してしまった。


「切り札?そうかぁ、テトさんのことを言っているんだね。そう、テトさんがこの国の切り札になりえるのだと。」


不思議とレノヴァとの会話が成立しているのにアルヴァンも少し驚いた。

『ユリアは父ちゃんには俺らと会話できることを伝えていないんだよな?』


「えぇ・・・。それより、切り札って何なの?」


『それは秘密さ。』


レノヴァは改めてアルヴァンに言った。

「テトさん、時期にこの国にも魔物たちが向かってくるだろう。どうか力にはなってくれないだろうか。」


アルヴァンは正直その頼みをどう答えたらいいのか迷っていた。

『そもそも俺らもその襲ってくる魔物とは同族になるんだが。ただ、魔物の方向性の違いで一緒に活動していないだけだ。』


「魔物の方向性・・・?」

シドは主が一体何を言っているのか理解に苦しかった。


「無理もない。同じ魔物同士が争うのも気が引けるのであろう。我々人間の欲を言うのであるならば、テトさんの言う通りにしたいと思う。」


『おい、要求にこたえるにしろ俺ら会話できないだろ。それにそんな人間の都合で動くほど魔物捨ててな

いぜ。』


「アルヴァンさんって変にかっこつけているのね。」


『ユリア、おまえまで茶化してくるんじゃねぇ。』


「ただ、お父様が言う人間の要求に答えなくてもいいわ。ただ、この問題を解いていくにつれてアルヴァンさんが求めている答えに近づいていくと思うの。そのついでに守ってくれればいいわ。」


『なんだ、そのやんわりとしたお願いは。まぁ検討しておく。うまい飯をごちそうになっているからな。』


「アルヴァン様、ちょろいですね。」


『シド、こういうのは政治的などうのこうのだ。』


「よく言いますね。」


楽しいディナーを満喫したアルヴァンはその後フルコースを3周して使用人たちをドン引きさせたのであった。


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