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テト  作者: 安田丘矩
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はじめて出会う人にはにっこりスマイルを

ここ一週間体調不良でほぼ死んでました。寒いのか暑いのか。花粉なのか黄砂なのか。

順当に季節って巡らないのですね。おかげで頭痛くてしょうがない。

皆さんんもお体を大切にお過ごしください。

いよいよ、早咲の桜も咲き始めて春爛漫も近いですね。

一度でいいからやってみたいのはお花見しているところにデリバリー。

あれちょっとあこがれるんだよね。けど、さすがにお花見って初手をミスると悲しいお花見に。

まぁ結構人がいるからなかなか有名どころでは場所取りは難儀な話。

茶店でお団子とお茶をいただくのがベストなのかな。


屋敷の中は青を基調とした絨毯とゴシック調の窓が特徴的でガラスは淡い空色を帯びている。ところどころに花卉に濃い色の花が生けられてより存在を引き立てていた。

客間に案内されると中庭が一望できるバルコニーが目を引く。手入れされた緑と真っ白な彫刻が威厳と規律を醸し出していた。


「こちらの部屋をご自由にお使いください。何か御用の時はおそばに使用人をお付けいたしますのでお申し付けください。」


『ほう、上客気分だな。』


「体のいい軟禁なのでは?」

シドの指摘にアルヴァンは『そうなのか?はめられたのか?』と考えさせられた。


ジェイスが客間から出た後、この部屋にはアルヴァンと使用人の二人が残された。特にすることもないのでソファーに座りテーブルに置いてあるクッキーを食べ始めた。

けれど、使用人の視線を感じ、食べづらさを感じたアルヴァンはお菓子の入ったバスケットごともってバルコニーの柵を越え中庭へ移動した。さすがに使用人は驚き慌ててバルコニーに出たがさすがに飛び降りるわけにもいかず客間から急いで出た。


中庭を縦断し反対側の建物までやってきたアルヴァンは、食べ歩きながら散策し始めた。たまにすれ違う使用人たちが物珍しくこちらを見るやいなや『魔物だ?』と戸惑いながらどこかへ報告しに行った。

何やら大事になってませんか?」

シドはアルヴァンに尋ねた。


『別に何もしないし。窮屈だから散歩しているだけだ。』


「散歩?」


少し歩いていると北側の大広間についたそこは図書館になっておりたくさんの本が本棚に並んでいた。


『すごいな。こんなに本があるなんて。』


「相当すごい家系なんでしょう。」


アルヴァンは本をとることなく背表紙を眺めながら歩いた。歴史書や理学書、歌集や民話集などジャンル問わず様々な本が並んでいた。その中で、一冊の本に目が留まった。『王の戴冠』。カイノスが王になった頃、本人が語ったことが書かれている。手に取って読んでみる。


~わたしはただ、この世界に平和が訪れることを願った。それはわたしの母を救ってくれた一匹の魔物がわたしに生きる術をくれたからこそ今のわたしがいる。


世の中が重く淀んで人々が何を信じて生きて行けばいいのか、嘆きながらもその魔物の周りはいつも誰かいた。だから、みんな怖くなかった。身を寄り添いながらも生きてこれた、本当はそれ以上を願う必要はなかったのかもしれない。


ただ、わたしの欲を覚えてしまったんだ、その先の未来を見てみたいと。その魔物はわたしを見送った後でいなくなってしまったそうだ。気まぐれだったのか、それともわたしにあきれたのか。数多の戦いの果てに失ったもの、手に入れたもの、どれもこれもわたしの願う平和とは違ったものだった。


きっと、その魔物はこうなることは分かっていたんだろう。こうやって国が一つにまとまったところでつなぎとめるための鎖にしかならないかもしれない。けれども、人々が血で争うことがないのならわたしはこの平和を勝ち取ったことを誇りに思う。


そして、願うならもう一度逢いたかった。たくさん話したいことがあった。だから、わたしは王になった。そしたらきっとまた逢えると思ったから。わたしに魔法をかけたことは一生忘れない。~


『どこでそんな詭弁を覚えたんだか。』


「歴史上の人物がアルヴァン様を慕っていたとは。これはもう実質人間界の影のドンなのでは。」


『そんなわけあるか。重苦しい国のトップなんて御免だね。』


「まぁまぁ、照れちゃって。」


「そこで何をしているの?」

突然声がして振り向くと一人の若い女が立っていた。

身なりは明らかに上流階級のお嬢様だった。

アルヴァンは困惑したがさらに向こうが話しかけてきた。


「『王の戴冠』ね。あなた人間の言葉が分かるのね。」


『別にこんなの誰だって読めるだろ。』

表紙を見ながら話していると


「そう?私は初めてよ。文字が読める魔物に会うなんて。」


『なんも珍しくもない。それなりに長く生きていればこんなもん息をするように覚えられる。』


「器用なのね。」


『そういうのじゃ・・・えっ?』

アルヴァンは顔を上げて女の顔を見た。


「あれ?どうしたの?」


『どうしたじゃねぇよ。おまえ言葉。魔物の言葉が分かるのか?』


「そうね。君は口が悪いってことは理解したわ。それとお友達が隠れているの?明らかに違う声が聞こえたんだけど。」


『初めて会った。言葉が分かる人間。』


「あら、わたしだってこんな可愛らしい魔物さんとお話しできるなんて。」


『誰が可愛らしいだ!』


「えっだめなの?」


『当たり前だ。』


女はクスクスと笑った後話し始めた。

「じゃあ私の部屋に来ない。そしたら、お友達を紹介してくれる?」


『勝手に話を進めるな!・・・会いたいのか?』


「えぇ。」


『まぁなんでこんなお嬢さんが魔物と話せるのか聞きたいし。いいだろう。』


「今度は偉そうね。それに私の名前はユリアよ。」


『いちいち茶々をいれてくるな。』


「うふふ。はいはい。」


「おっ!お嬢様!」

アルヴァンを見張っていた使用人が追い付き近づいてきた。使用人は息を整えて言った。

「危険ですよ。いくら人間に害はないと伺っていましても。」


『こんなヘロヘロな奴に言われてもな。もし、やばい魔物だったら守れないだろ。』


ユリアは笑い、顔を腕で隠していた。少し落ち着いてから話し始めた。

「大丈夫よ。私が屋敷の中を案内していたのよ。あなたは下がっても大丈夫よ。これから私の部屋でお茶にするから。」


使用人は困りながら言った。

「ですがお嬢様。ジェイス様から申し付けられていますので。」


「なら、私の部屋の外で待機していてちょうだい。」

使用人は渋々「はい。」返事をした。


「ではいきましょう。」


ユリアに後ろをアルヴァンは付いていった。ユリアの部屋へ行く途中で歩きながらユリアが言った。


「そういえば、あなたのお名前は?」


『いろんな人間から適当に呼ばれているから好きに呼べ。もうあきらめている。』


「せっかくお話しできるんだから、ちゃんと呼びたいの。」

アルヴァンは少し黙った後で答えた。


『アルヴァンっていうんだ。』

ユリアは立ち止まりアルヴァンに言った。


「素敵な名前ね。」


アルヴァンも立ち止まりユリアを見た。この名前を名付けられてから人間で知っているのはこれで二人目だ。このユリアはいったい何者なのか。アルヴァンはそんな彼女をただじっと見つめた。


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