会議中はお静かに
海を渡る黄色い砂
最初、そんな遠くから飛んでくるわけないと思っていたんだけど
薄っすらとつもるんですね・・・車に。
遠くが霞んでるときもあるから黄砂ってここまでやってくるんだと実感する。
この季節ってなんでいろんなものが飛んでくるんでしょうか。花粉もだし。
お目目かゆい、鼻が詰まる。この季節ほんとナーバスになります。
お目目洗浄と鼻うがいでギリ生活できるが空気清浄機も考える必要があるのだろうか・・・
つづく
アルヴァンが到着したころにはちょうどレオが主都からの使者を家に招いているところだった。
レオと使者、そして二人の護衛が家の中へ入っていき、御者と護衛二人が外で待機していた。影を解放されたアルヴァンは不機嫌ながら戻ってきた。
一人の護衛がアルヴァンに気づいた。
「うわぁまも・・の?」
その声にもう一人の護衛が驚きアルヴァンのほうを見た。
「なんだよ、驚かせやがって。魔物ってどう見ても愛玩動物だろ。」
『誰が愛玩動物だぁ!!ぶち殺すぞ!』
アルヴァンは殴りかかろうとするアルヴァンの脚をシドが止めた。
「はて、この魔物がご主人様が言っていた魔物なのでは?」
御者が間を割って話しかけた。一人の護衛が考えながら言った。
「確か、テト?ちび?クロ?・・・なんだったっけ?」
「ギンガルの人たち呼称がそれぞれ違うからどれが正解なのかよくわからないな。」
『てめぇら、好きかって言いやがって。』
アルヴァンは地面に手をかざして能力を発動した。すると二人は脚をとられぬかるみにはまった。
「うわぁ!いったい何が起きたんだ。」
二人がもがく中、アルヴァンはこの失礼な二人に怒りを覚えながらも無視して家の中に入っていった。
ダイニングの椅子に座ると客間か二人の声が聞こえてくる。ダイニングの机にあった果物を一つ取り噛り付いた。
「ところで今日は何用で?」
「はい実はあなたが飼われている魔物についてです。」
『えっ?俺?何かやらかしたのか?』
「アルヴァン様。死ぬときは一緒です。」
シドが茶化すとアルヴァンが「おまえ、縁起が悪い。」と突っぱねた。
「そうです。ここギンガルの発展の話は伺っております。その立役者にそのテトさんが噛んでいると。」
『俺、そんなことしてたっけ?』
「やりたい放題した結果、ギンガルの人々の役に立ってたのは事実です。目的と反して。」
『なんだ、その意味ありげな。』
「テトは魔物です。村の発展とかはべつに考えてはいないかと。単に町の人のお手伝いをしてきた結果このようになっているだけです。」
『あいつ、何分かったようなこと言っているんだ。』
「よき理解者ですね。」
「うるせぇ。」
「テトが村の発展に関してきっかけをくれてるは事実かもしれません。けど、それはテトが望んだことではないんです。」
「お見通しってやつですよ。どんだけわかりやすいんですか?アルヴァン様。」
『おまえは少し黙っとれ。』
「レオさんは海を渡った隣国のお話は聞いたことありますか。」
「おっいよいよ本題ですよ。」
「隣国ってベルリッツ王国ですか?」
「そうです。今、ベルリッツ王国は魔物によって支配されてしまったのです。」
『まぁこんなところで現実逃避してたアホ勇者が戦わずして自国の破滅を知るんだから。逃げた代償は大きいだろう。』
「ベルリッツ王国はとある侯爵家が魔物と手を組み謀反を起こしました。それによりベルリッツ王国の王は失脚し、現在はその侯爵家が王の座につましたが決定権はその魔物が握っていると。」
『エネヴァーは人間を配下に加えたのか。捨て石にはちょうどいいようだが。』
「ほんと、アルヴァン様より魔物らしいですね。」
「なんだ。嫌味か。」
「お話を戻しますがそう言った事情があり、テトさんも、もしやその手先なのではと考えた次第でこちらに。けど、こちらに伺う前にいろいろと調査しておりましたが危害を加えるどころか人間と交流し、何よりよく食べる変わった魔物だと分かりました。」
アルヴァンは机を大きく叩いた。すると果物が机から転げ落ちてしまった。
『だれがよく食べる変わった魔物だ!!』
「いや、怒るところそこなんですか?エネヴァーの手先にされているところでしょ。」
『あっ!そっちか。』
「・・・。」
シドはコンプレックスを突かれるほうが主にとっての沸点なんだと頭の中で更新した。
「イレイア国には大魔導士レノヴァ様がいらっしゃいます。レノヴァ様の下で魔導士たちの育成及び防衛を担っているため戦力としては申し分ありませんが、話によるとその魔物たちは魔法とは違う変わった能力を使うそうで、その対抗手段がないのが現状です。」
「ついに脅威としてこの国でも警戒されるようになりましたね。どうしますか?アルヴァン様。」
『そうだな・・・。一度イレイアの主都に行ってみるかな。』
「観光目的じゃないでしょうね。」
『馬鹿言え。視察だよ。』
「ほんとですか?どうせ、ギンガルの食べ物以外を味わいたいと思ったんでしょ。もういいです。どちらにせよ、この国の動きも見ておかないと。」
『おまえ・・・ムカつく。』
「確かに今このベルリッツ王国の状況を知っているのは封鎖している港町の所と王都での貴族や職員のみ。しかし、この事実が知れ渡るのも時間の問題かもしれません。あなたにお伝えしたのはやはりテトさんの主ということであり何らかの手段があるのかと思いまして。」
『いつからこいつが俺の主になったんだ?反吐が出る。』
「ジェイスさん。言いたいことはわかりました。しかし、テトは魔物であって確かに強く頼もしいところがある。けれど、こんなちっぽけな魔物に国の命運を背負わせるほど確かな対抗策にはならないかと。」
『だれがちっぽけだ!!!おまえ、今ぶち殺す!』
シドはまた影でアルヴァンの脚を固定し動けなくした。
「落ち着いてください。その前にあいつを殺す手立てがないでしょ。」
『ちくしょ!あいつ絶対調子に乗ってるぞ!』
「アルヴァン様、うるさいです。」
不毛なやり取りをしていると客間から全員出てきて、アルヴァンを見つけるやいなや、
「おぉ、うわさに聞いてた。テトさんですね。はじめましてジェイスです。」
『いや、おまえここ一週間尾行させてただろ。』
明らかにここの人間ではないものが後をつけていることは分かっていたのでシドに後をつけている尾行させていた。ギンガルも新参者が増えたものの明らかに様子がおかしいので警戒していた。ただ、特に危険はないもののアルヴァンの近辺の人々から聞き込みされ、その内容がどれも言いたいことをみんな言ってくれていた。