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テト  作者: 安田丘矩
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『遠慮』という言葉を覚えなさい

お家の味噌汁のみそは何のみそを使っていますか?

これは地域によっての違いもあると思いますが

家のみそは主にこうじ味噌を使っています。

コクと豆が残っているのが特徴なんですが時々赤みそも使っています。

ただ、ここ近年お味噌汁を作らなくっているご家庭が多いとか。

我が家も昔は大方味噌汁は作っていましたが

出汁が高いの。干物が。マ〇コメさんで出汁も入ってるお味噌も売っていますが

出汁から取る方がおいしいのでさすがに買いません。ごめんなさい。

家庭環境や値上がりの影響でお味噌汁も遠ざかってしまうのか・・・寂しいね。



「アルヴァンさん。それでヤドリギをどうするんですか。」


アルヴァンは魔王城の研究室に来ていた。セイルとドミニクが神妙そうにヤドカリのリカルドを見つめていた。


「一先ずここで保護してほしいんだが。」


「お世話になります。」


ヤドカリは頭を下げた。


「でも、大丈夫なんですか?また手に負えなくなるんじゃ。」


ドミニクがヤドカリの殻を突きながら言った。


「浄化はした・・はず。なの?」


アルヴァンはヤドカリを見た。


「正直、保証はないかもしれません。私も正気を失っていたせいか。狂暴をなっていた時の記憶はありません。ただ、変な高揚感は何も感じませんのでよっぽど大丈夫かと。」


「だそうだ。」


「けど、ヤドカリってリクガメがいないといけないのでは?」


セイルが言った。


「そのはずなんですが、浄化されてから自ら生気を生成することができるようになったみたいで。寄生しなくても暮らして行けるようです。」


「じゃあ、新種のヤドカリになったということで保護してくれ。」


「それはそれで問題があるような・・・。ところでシドさんは?」


セイルが不思議そうに聞いた。


「あぁ。あいつは・・・今休暇中だ。」


「休暇中?いつも『アルヴァン様の元から離れません!』とか『一生ついて行きます!』とか言ってませんでした。」


「いい質問だ。答えは簡単。バカだった。それだけだ。」


「そうですか。痴情のもつれってやつですか・・・。」


「誰が痴情だ!そんな仲じゃない!」


「けど、主と僕の関係ってそんなものじゃ。」


「違うわ。それよりヤドカリを任せたぞ。」


「お任せください。」


セイルは自信もってアルヴァンに言った。


「ところでこのヤドカリ君何ができるんだい?」


ドミニクは枝の葉っぱを触り葉脈を見ていた。


「私ですか?そうですね・・・調合くらいなら。」


「ヤドリギの本職みたいなものか。じゃあとりあえず薬品庫の整理からお願いするかな。」


こうしてヤドリギことリカルドは研究室で働くことになった。




ヤドリギを駆除した後で村に帰るとレオの質問攻めと村人たちの喜びの声でアルヴァンは耳を塞いだ。その夜はパーチのバルで宴が催されアルヴァンは浴びるくらいに食べ物を食べ尽くし村人たちも脅威が去った喜びに飲み交わし踊り明かしと大いに盛り上がった。


それから山へ行って狩りに行ってはレオが付いて来る。足手まといになるものの狩った獣の血抜きとその狩った獣の調理をさせた。マアサに毛皮を売りつけては買い取ってもらい懐が潤ったレオは山に入るための食糧となぜか次第に防具や短剣を新調していた。アルヴァンは横目で見ながら『使えもしないのにそんなのいるのか』と思っていた。


とある日、イタチの魔物に出会った。頭に一本の角を生やしている。アルヴァンはレオに戦うように背中を蹴って前に立たせた。こっちに来て一番最初に遭遇したテンの魔物に比べたら二回りも小さい。ちゃんと目で追って首を刎ねれば簡単に倒せる冒険者の中では初級の魔物であるが


「俺がやるのか?心の準備が・・。」


『おまえ、敵に心の準備とか言ってられるのか?』の表情をアルヴァンはレオに向けた。レオはそれを察したのかイタチの魔物に剣を抜き身構えた。先に仕掛けてきたのはイタチの魔物の方だった。『きぃぃぃ!』と鳴いた後で助走をつけてレオの右腹部へと飛び出してきた。明らかに利き手の脇に入ろうとしている。レオは咄嗟の対応ができず剣を左へ振ってしまった。


「あいつは死にたいのか?」


「アルヴァン様。いい加減あの人間の進退についてお考えになった方が。これ以上勇者ごっこさせておくのもちょっと。見るに堪えません。」


シドは影からアルヴァンに言った。


「そうだな。人間らしく普通の暮らしをしてればいいのだが。」


レオは思いっ切りイタチの魔物のかぎ爪をくらったものの本人は躱せたのだと本気で思っているみたいだった。その様子を見てアルヴァンは首を横に振り呆れていた。


再び飛びかかってきたイタチの魔物の頭突きをレオは腹で受け止めた衝撃で尻餅をつき短剣を落としてしまった。それを見逃さまいとイタチの魔物はレオに向かって行きレオは咄嗟に立ち上がり背を向けて逃げ出した。


「テト!助けてくれ!!」


レオの叫び声にアルヴァンはため息をついた。『この相手でもこのざまかぁ・・・。』とアルヴァンはあきらめてイタチの魔物に向かっていった。逃げるレオの横をすり抜けイタチの魔物の首を一撃で落とした。首を刎ねたばかりなのか脚をピクピクトさせ、頭を見ると目尻が引きつりし続けていた。アルヴァンはイタチの魔物のしっぽを引きずりながらレオのそばまで持って行った。息を整えているレオの前に置きそそくさと次の獲物を探しに行った。


しばらく歩いていると山が削れて岩肌になっているところたどり着いた。そこにはいくつもの穴が開いていてしばらく様子を伺っていると中から50センチくらいの毛玉が出てきた。


「なんだあれ?」


「モッフィーです。」


シドが影から出てきて応えた。


「何そのふざけた名前。」


「ウサギの魔物ですが、性格は穏やかです。魔界ではもう見られなくなりましたが、人間界に住み着いた種はまだ現存しているんですね。」


「魔界にはいないのか・・・。」


「モッフィーは・・・美味しいんです。」


シドは言った瞬間アルヴァンの腕をつかんだ。


「この手は何だ?」


「言わなければよかったと思いました。」


「おれはそんなに食い意地は悪くない。」


シドの手を解こうとしたが頑なに放そうとしない。


「悪いです。魔物の保護も大切なんですから。むしろ、この個体を魔界に持って行って再び繁殖させることが大切です。」


「その目的だ。」


「長年アルヴァン様にお仕えしていますがさすがに信用できません。」


「こいつ!それでも俺の僕か!」


「あなたは限度というものを知らなすぎる。食の。」


一進一退の攻防の果てにある結論に達したのだった。

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