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テト  作者: 安田丘矩
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トラブルメーカー

花粉が最強に飛ぶまで5秒前。鼻が詰まって死んでしまう。

花粉症なんてなかったのに近年飛散量が多いせいか無理やり花粉症させられているそうです。

去年から鼻うがいを実施していますが効果はまぁまぁ。

完璧に掃除して、空気清浄機を買わないといけないのかなぁ

あぁ・・・つらい。せっかくあったかくなってきたのに。

誰か杉の木を何とかしてくれ!頼む!!

「30点です。」


夜が明けてアルヴァンたちは再び森に入っていた。


「何が?」


「昨日のあれです。何ですが、あのお粗末な踊りは。」


「分かってないなぁ。あれこそ舞踏ならぬ武闘なのさ。」


「あんな足の短いステップのどこがぁあ!ぐふぇ!」


シドは思いっ切り殴られ10メートルくらい飛ばされた。


「おまえ言っていいことと悪いことがある。」


シドは悶絶しながら思った『気にしていたんだ。』と。しばらく落ち着いてシドはアルヴァンに話しかけた。


「ところでまた何用で。」


「せっかくの毛皮を台無しにしてしまったからな。村に居てもあいつがいるし、狩りにと。」


「けど、昨日オオカミたちを討伐したところでここら辺に毛皮が取れる魔物や動物っているのでしょうか。」


「さぁ。」


「・・・。ほんと行き当たりばったりですね。」


しばらく西に歩いているとやたらと森が深くひんやりとした湿気が漂うところまでやってきた。昼間のはずなのに木々が空を遮っているせいか仄暗い。


「何かいる気がする。」


「そうですね。触らぬ神に祟りなしなのでは。」


「えぇー。ここまで来たのに何もしないんじゃ面白くないだろ。」


「まぁ言っても聞かないんだし、ご自由にどうぞ。」


「なんだよ。つめたいな。あれ?」


森が終わりなぜか腐敗した臭気が漂い朽ちた木々が周囲一面に広がっている。


「これは・・・なんだろう。」


「特定侵略魔物、寄生樹。ヤドリギですね。」


「さすが助手。博識。」


「そんなこと言っている場合ですか。ヤドリギに種を植え付けられたら養分変えられて死ぬんですよ。」


「けど、こんなところに自生しているなんて。」


「魔物に寄生して新たな新天地へやってきたのでしょう。」


「まぁこわいこわい。」


アルヴァンはカエルからメティスを取り出した。


「はい。火炎射。」


「なに当たり前に命令してるんだ!この野郎!」


メティスは怒っていた。


「先週その件やったから早く駆除して。」


「おまえも使えるだろ。」


「昨日使ったから今日はお休み。」


「何がお休みだ。都合のいいようにしか使わないくせに。だいたいおまえは・・・。」


朽ちた木々の奥の方からうごめく何かが近づいてきていた。


「あの・・お二人とも。さっさとやるのか、逃げるのかはっきりしてくれませんか。このままだと飛散した種が来ますよ。」


全く人の話を聞かないアルヴァンとメティスにシドはため息をついた。『止むを得ませんね。』とシドは影を忍ばせて二匹を拘束した。


「おい、おまえ何をする。」


アルヴァンは身動き取れずにもがいていた。


「なんで幽霊なのにお前の術が掛かるんだよ。」


メティスも身動きが取れずにいた。


「今、喧嘩している場合じゃありません。なのでこちらで指揮を取らせていただきます。」


幻影交想曲~追憶を嘆き~。シドのこの能力は対象者を操ることができる。ただし、この曲が終わる4分58秒には術が解け、シドはしばらく影の能力は使えなくなる。


「はい、まずは手を高くあげてのターン。そしてメティスはアルヴァン様の周りを廻る廻る。ここで高くジャンプしてそのままあのうごめくところへ火炎放射を放つ。」


「おまえ後で覚えていろよ。この曲が終わった時が最後だからな。」


アルヴァンはこの状況に憤りを感じながらも操られるがままに両手を前に出して火炎放射を放った。その勢いで飛ばされながらもメティスの火がアルヴァンの背後で花のように開きそして散るように火の粉が飛散る。火炎放射を放ったところから煙が上がると同時に無数の何かがこちらに飛んでくる。アルヴァンを囲うように火が球体になりそれを防いだ後で球体から飛び出たアルヴァンはメティスによって形作られた炎の翼で羽ばたき近づいて行く。近づくにつれてヤドリギの全貌が見えてきた。


上に伸びていくものではなく地面を這いながら伸びていく。その幹は赤褐色で表皮がささくれだらけだった。四方に張り巡らされた枝は木々に触れるとたちまち枯れていく。周囲の生き物の養分を吸収しながら成長していく厄介なものだった。


「決めポーズの準備を。行きますよ!炎・霊・奏!レクイエムぅううう!」


アルヴァンは思った。『こいつダサい』と。火が交差しながら放たれそれを追うようにアルヴァンがヤドリギに飛んでいくそして勢いよく振り下ろした手刀は火帯びてヤドリギを燃えつくした。


「アルヴァン様やりました。これで私のすぅ!ぐふぁあ。」


アルヴァンは思いっ切りシドに飛び蹴りをした。燃料切れのシドは抵抗できず悶絶するのみだった。


「おい、アルヴァン。おまえがしつけないからこんなことになるんだぞ。」


「うるせぇなぁ。おまえは姑か。」


痛みが治まったシドは立ち上がり言った。


「アルヴァン様。種は回避できましたが本体がまだ。」


「今なんて。」


「ヤドリギは上部が損傷し種での寄生ができなくなった場合、地中の宿根が根を張り巡らせて侵略していくんです。」


アルヴァンはしばらく黙った。そして言った。


「おまえってバカなのか、利口なのか分からないんだが。」


「元からこういう奴だろ。ネジが一本外れておかしい。」


「メティス!誰がおかしいって!」


アルヴァンとメティスは冷たい目でシドを見た。


「アルヴァン様までひどい!私がどれほどお慕いしているか。」


「お慕いしているなら僕として行動しろ。」


シドは落ち込んでしまった。


「んで、どうすんだよ。本体が地中にある以上手の出しようが。」


すると離れたところどころから轟音が響き渡ったった。


「何の音だ?」


「地中から根が出てきたのでしょう。村の方からも音が聞こえました。」


「おいおい、これまずいんじゃないか。」

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