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テト  作者: 安田丘矩
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魔王様!侵入者です。

〇ッチンプリンが販売再開になった時、ミーハーな私は久しぶりに買って食べようとふたを開けたら

こんな色していたっけ?っと成分表示を見たら、にんじん汁が入ってことに驚いた。

そして、プッ〇ンプリンってプリンじゃないんだね。寒天・・・こんにゃく・・・。

ぷるるんとしていたらみんなプリンになれると信じてる食べ物だと悟った。

アルヴァンはもともと旅人だった。いろんなところを巡っては気に入った場所に留まり、面白そうなものを探して転々としていた。この魔王城へたどり着いたときお腹がすいて仕方なく、食堂に忍び込み盗み食いをしていた。仕込みをしていたシェフがそれに気づき通報した後、衛兵がアルヴァンを取り囲んだ。アルヴァンは特に慌てることなく口いっぱいに果物を頬張りながら指をならした。一瞬で衛兵の視界を奪い咄嗟に窓から逃げ出した。騒ぎになっていることをよそに場内の木の上によじ登り身を潜めた。木の幹を背もたれにしてくすねたお肉を取り出しむしゃむしゃと食べていると何かの視線に気づき瞬間移動で塔の上に移動したが何かが背後にいる。


《あぁ。戦うのか・・・。》覚悟を決めて幻影魔法を唱えた。


複数の幻のアルヴァンが現れ、それに紛れアルヴァンは相手の背後を取った。3メートルくらいの背丈に図太い胴体、暗い紫の毛並みに3本の尾。


瞬時に見定め、首元めがけて手刀で斬撃を放った。その相手は1本の尾でその斬撃を弾いた。しかし、アルヴァンの狙いはその斬撃のすぐ後に投げた小さい針だった。斬撃が弾かれた後その針は尾通過し首元へ。刺さる手前でその針をその何者かは素手で掴んだ。


それを見逃さずアルヴァンは左側に回り込み相手の目を狙い手刀で斬撃を再び放った。斬撃を見事に首まで届いた。しかし、効いていない。アルヴァンは後方へ瞬間移動し距離を取った。互いに見つめ合う中、アルヴァンは相手の動きを警戒した。するとその相手が笑い始めた。


「はっはっはっはぁ!よいよい。久々に殺しに来る斬撃だ。ここまで腕の立つものは久しぶりだぞ。貴様名を申せ。」


《えっ。こいつ何言ってんだ。頭イちゃんてるのか・・・。》アルヴァンは逃げたかった。けれども、相当な手練れだと察し逃げることも容易ではないと判断した。下手を打てば殺られる。渋々アルヴァンは自分の名を名乗った。


「アルヴァンか。いい名前だな。」


アルヴァンは小さく会釈した。


「そういえば、結界を張っていたはずだがどうやって城内に入ったのだ?」


アルヴァンは入城した時のことを思い出した。


 正門の前でどうにか中に入れないのかうろうろしていたらそこに食材を乗せた荷車がやってきた。《あっ、これ渡りに船だ。》アルヴァンは誰も見ていない隙をみて荷台に乗り込んだ。再び荷車は動き出し門を潜ろうとしたとき結界に気づいたアルヴァンは石になる魔法を唱えた。姿が石に変わるのではなく、他者からみた姿が石として認識される変わった魔法だがこういう時に役に立つとアルヴァンは自負していた。見事に結界を通過して中に入ることができた。説明するのも面倒だったのでアルヴァンは「すっごくがんばった。」と返事した。


「すっごくがんばった?・・・そうか、すっごくがんばったんだな。」


相手はすんなりと受け入れてくれたのでアルヴァンは「じゃあこれで。失礼します。」と塔から飛び降りようとしたが見えない壁に顔をぶつけ塔の床に転がり痛がった。


「おいおい。食い逃げはよくないぞ。それに王を目の前にして不敬だぞ。」


アルヴァンは立ち上がり顔を両手で撫でた。そして動きが止まった。


《あれ?今、王って言った。》


両手を下し相手の顔をじっとみた。


《強面のわりに意外に凛としている。》


アルヴァンは現在の王の顔など知らないし、王が戴冠した時も別に興味なく砂漠ウナギを食べに西の大陸を旅していた。


「アルヴァンよ。お前の力量を見込んで暗部として働かないか。とは言え断ることはできないが。」


高くついてしまったと後悔したアルヴァンは渋々その脅しに応じることになった。


 本望ではなかったがアルヴァンは暗部として仕事をこなした。反逆を企てる魔物のアジトに潜入して、大鍋のチキン煮込みを食べた後で壊滅させたり、人間界の新興宗教団体の本部に乗り込んで、信者たちのお供え物を鱈腹食べて奴隷となっていた魔物たちを解放したりと活躍した。そして、


「アルヴァン。確かに暗部として立派に仕事をこなして成果をあげているのはわかった。しかし、なぜ毎回毎回腹ごしらえしている。」王はアルヴァンに説教をした。


 基本潜入は数名の暗部たち行う。アルヴァンはバラけた後どこにいるか分からないほど隠れるのが上手いが、初めての潜入の際合流ポイントに現れないアルヴァンを同僚が変装し探していた。調理場を通りかかった時に恐る恐る中を見てみるとそこには・・・、オーブンの前でローストされているお肉を今か今かと待ちわびているアルヴァンの姿がいた。同僚が「何やっているんだ・・・。」と問いかけるとアルヴァンはニコッと返して片手に持っていた串焼きのお肉を食べた。それ以降、暗部ではアルヴァンを見失ったら食べ物のありそうなところを探せば見つかるとお約束ができてしまったのだった。


アルヴァンは頭を撫でた。そして、特にそのことについて反省するつもりはなくとりあえず、


「ちゃんと食べないといい仕事ができないので。つい…。」


王との間で沈黙が流れた後で王はため息を吐いた後で言った。


「もういい。これからも頼むぞ・・・ヘマはするなよ。」


アルヴァンは背筋をピンとして胸に手を握り拳をつけお辞儀をした。


なんだかんだで、魔王城に住み着いたアルヴァンは食堂から盗み・・・つまみ食いを繰り返しコックから追い掛け回され充実した日々を過ごしていた。

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