しつこい男は嫌われるぞ
先日、バレンタインでしたが皆さんチョコ食べましたか。
だんだん歳を重ねてくるとチョコって牽制しちゃうんです。
食べれなくはないんだけど、重い。
会社でチョコだけではなくお菓子をもらっては
『いやこれ食べきれない。糖尿病待ったなし。』
それに歯にしみるんだよ・・・甘いものが。
だからシ〇テクト使って歯を磨く。
チョコはビターでバレンタインはお気持ちで。
アルヴァンがテスターさんの農場の牛舎に行くとちょうどテスターさんが飼い葉をバラしているところだった。
「おや?坊ちゃんじゃないか。お昼はまだだぞ。」
『俺を食いしん坊みたいに言うんじゃない。』と不満を抱いたが、
「それにビンを持ってきたのか。」
さっき買ってきたビンをテスターさんに手渡そうとした時、
「テト。急にどうしたんだよ。」
息を上げながらアルヴァンを追いかけてきたレオが牛舎に入ったきた。
『なんだ、来やがったか。』
「おや?君かい。それにテト?」
「あぁ、その魔物のことをテトって名付けています。」
「テトかぁ。ピッタリな名前だな。」
高笑いし始めたテスターさんに、アルヴァンは『誰がテトだ!全然面白くない!!』と怒っていた。
「ところで、テトはなぜテスターさんにビンを?」
「あぁこれかい。牛乳を分けてもらいに来たんだよ。」
「牛乳を?」
アルヴァンはレオを睨みつけた。
「飲むのかは分からないがおそらくチーズをつくりたいんだと思うが。」
「テトがチーズをですか?」
『あぁ!お前に関係ないだろ!外野はすっこんでろ。』と内心啖呵を切っていた。
「あのアルヴァン様。いくら人間に聞こえていないからと言って心の声が漏れてます。」
シドは呆れて重ねて言った。
「それに魔物がチーズに執着しているのも変でしょ、普通。」
「うるせぇなぁ。食への探求心だ。魔物たるもの己の欲求に忠実であれだ。」
「それ誰の言葉ですか?」
「俺が作ったに決まっているだろ。」
シドはこれ以上口をはさむのをやめた。レオは屈み込みアルヴァンに問いかけた。
「けど、テトってチーズを作れるの?」
『んなもん、俺にかかれば楽勝。』
「まぁ分からなければ雑貨屋のマアサに聞けばいいさ。発酵菌も持っているはずさ。」
テスターさんのアドバイスに『よし、いいこと聞いた。早速マアサに。』
「テト、マアサさんが君のローブのほつれを直してくれるから。牛乳をもらって雑貨屋へ戻ろうか。」
レオの提案にアルヴァンは『そこまで言うんなら行ってやらなくても。』とめんどくさくなっていた。結局、アルヴァンとレオはマアサの雑貨屋へ再び行くことになった。
「あれ?さっき来たばかりじゃない。どうしたの?」
マアサは二人に問いかけた。
「いや、その・・・牛乳をテスターさんからいただいたのでチーズの作り方を教わりに。」
「あら、そうだったの?・・・ちびちゃん。君だな。」
アルヴァンは屈み込み問い詰めてきたマアサに目を逸らした。なぜかマアサは嬉しそうだ。
「すみません。急に押しかけてしまい。」
「いいのよ。どうせお客なんて村人くらいなんだから。それにちびちゃんの頼みだからね。」
『俺を誰だと思っているんだ。変な気の遣い方をすんじゃねぇ。』
ここでフレッシュチーズの作り方
①牛乳を温めて、乳酸菌を加える。
②凝乳酵素を入れて牛乳を固める。
③固まった牛乳を切って、水分と分ける。
④固まった牛乳を濾して一つにまとめる。
⑤まとまった牛乳を適度に引きちぎりお湯に入れて、とろけた生地を練り上げる。
⑥練り上げていくと粘りが出てくるので細かく引きちぎり冷えた塩水に付ける。
⑦塩水から取り出し水分を取り除けば完成。
※すぐに食べないときは塩水につけておく。
出来上がったフレッシュチーズをマアサは調理してくれた。小麦粉でねった薄い生地をチーズとソース、野菜のピクルスで包み窯で焼いた料理とチーズと生野菜を酸味の効いたドレッシングをかけたサラダを出してくれた。
「押しかけた挙句にごちそうになってしまいすみません。」
レオは申し訳なさそうに言った。
「いいのよ。それにちびちゃんは今日は2食目ね。」
『そういうのいいから、早く早く。』と椅子の上でまだかとよだれを垂らすアルヴァンがいた。
「いつの間に雑貨屋に来たんだ?2食目?」
「まぁまぁ。しょうがないでしょ。ちびちゃんのお腹は底なしなんだから。一度でいいから参『参った。』って言わせてみたいものね。」
マアサは朝の残りのスープをアルヴァンの前に置いて席に着いた。
「遅くなっちゃったけどお昼にしましょうか。」
お祈りをした後、3人で昼食を食べた。
「そういえば、テトはこちらで毛皮を買い取ってもらったとかで。」
「えぇ。あんなきれいな毛皮なかなか拝めるものじゃないから興奮しちゃったわ。だからね、ちびちゃんにまた毛皮を取ってきてほしいってお願いしたの。」
レオはアルヴァンをチラッと見たがそんなことお構いなしにアルヴァンは夢中で食べていた。
「確かにテトは強いです。その魔物も一撃で仕留めています。」
「それは心強いわ。さすがね。」
マアサがニコッとしてアルヴァンを見つめた。アルヴァンはその視線に気づき少し首を傾けた。
「そう言えば、地図はありませんか?」
「地図かい?売り物はないけど・・・。」
マアサは立ち上がり隣の部屋へ入っていった。レオは首を長くして待っていると折りたたんである分厚い紙を持ってきた。
「これでいいかい。まぁ王都までの地図しかないんだけどね。」
マアサは広げてレオに手渡した。レオは地図をじっくりと見ながら渋い顔をした。その様子を食べながら横目で見ていたアルヴァンは、『どうした?漏れそうか?』と思った。
「すみません。せっかく持ってきていただいたんですが。何も・・・。」
「どうしたんだい。」
レオはマアサさんに記憶喪失でここまでたどり着いたことを話した。
「そうだったのかい。テスターさんにはあなたのことを聞いていたんだけど、まさか覚えていないなんてねぇ。」
『ちがうぞ。こいつは戻りたくないから嘘をついているだけだ。』
咀嚼しながらアルヴァンは目で訴えた。
「ただ、カバンの中を調べたらベルリッツ王国と書かれた銀貨が。」
『最初っから回りくどく言わないで本題を言えよ。』
「ベルリッツ王国?それは海の向こうの国よ。あなた海を渡ってきたのかい。」
少し視線を外した後でレオは応えた。
「わっ・・わかりません。」
「そうかい。それはほんとに気の毒だね。何かあったら何でもいいなよ。力になれることがあればいいんだけど。」
「いいえ、そんな、こうやって親切にしていただいていますし。十分ですよ。」
「そうだ。あんた、ちびちゃんの主なんだろ?」
「えぇ・・・まぁ。」
アルヴァンは食事の手を止めて『はぁ!ふざけんな!』とレオを睨みつけた。一瞬レオがアルヴァンを見たがすぐに視線を逸らした。
「ならこの村にいる間、魔物の毛皮を取ってきてくれないかい。」
「毛皮ですか?」
「ちびちゃんが強いんだから、あんたも腕がたつんだろ。いい値で買いとってあげるから。」
レオは苦笑いした。
『アホだな。戦えもしないのに墓穴掘ったな。』とアルヴァンは冷ややかな目でレオを見た。
マアサさんでごちそうになった後、今日作ったチーズは塩水につけられビンの中に入れてくれた。アルヴァンは嬉しそうにビンを抱えてテスターさんの家に向かっていると後ろからため息が
「はぁ・・・。どうしてこうなったものか。」
『野暮だな。潔く勇者らしくすればいいんじゃないか。』アルヴァンはレオに呆れていた。そんなレオを無視してアルヴァンはこれをテスターさんの奥さんに渡して調理してもらおうと思っていた。
「テト。君は強い。だから、俺に指南をつけてくれ。」
アルヴァンは立ち止まりそしてレオの方を向いた。
『いや、無理だろ。さすがに。そんなに習いたいならその根性を叩き直してからだろ。』
今度はアルヴァンがため息をついて再び歩き出した。
「えっいいの?だめなの?」
アルヴァンはうんざりしてきたので一気に走り出した。レオが呼び止めても止まることなくテスターさんの家に帰っていった。