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テト  作者: 安田丘矩
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犯人は必ず証拠を残している。

写真屋さんへ行って現像してもらうことって今ほとんどないですね。

データの送受信で共有できるし、現像して色あせることもないからね

修学旅行でインスタントカメラで写真撮って友達に配ってた頃とはほんと違う

データの保存状態が良ければ永久的に残るからいいかもしれませんが

個人的には現像した写真が経年劣化して色あせていく感じも嫌いじゃない

懐かしいと思う反面、自分が今この歳になったことを感じるから

ノスタルジーのような感傷に浸るような

現像するにも写真屋さんに出して数日必要だったし、改めて焼きあがった写真を見て

ブレてたり、いつ取ったのか分からない写真だったり撮り直しが効かなかったけど

それも含めて思い出の一つであって費やした時間がそこにある

今思えば不思議な感覚なんだと


「何喜んでるんですか?こんな世俗にまみれた魔物いるんですか。」


シドは細い目でアルヴァンを見つめた。昼食を食べ終えたアルヴァンはレオが寝てる部屋に戻ってきて、


「そんな目で俺を見るな。仕方ないだろ、人間の食べるものは美味であって、ご相伴にあずかる以上残すわけには。」


「ご相伴どころかそれ以上に食べていますよね。あぁ意地汚い意地汚い。こんな主に使える私の身ぃぐぅわぁふぁあ!!」


アルヴァンはグーパンチをシドにくらわせ、悶絶するシドを白い目で見つめた。


「おまえもなかなか大概だな。」


メティスが呆れて言った。


「それより、はやくリンドンの様子を見せろ。」


明らかにアルヴァンは機嫌を損ねていた。さすがにこれ以上からかうと飛び火しかねないのでメティスは仕方なく見せることにした。


フレイムゴーストは『残り火』という精神体を火の中に残すことができる。リンドンで品格者の尾行の際に街のガス燈に残り火を忍ばせ街中を監視できるようにしていた。残り火を忍ばせることにより遠く離れたところからでもメティスを通して宿したところからの景色を見ることができるのだ。


リンドンの駐在所近くのガス燈をつなげてみると駐在所は焼け焦げた跡や建物が損壊していた。さらに駐在所の玄関のガス燈へつなげてみるとそこには見覚えのある魔物たちが集まっていた。


「これは街が陥落したのか?せめてあのパン屋が無事だといいが。」


悶絶していたシドは立ち上がりメティスに映された景色を見た。


「エネヴァーの手下ですね。やはりだいぶ進行してきていますね。」


「王都はもうエネヴァーの手中にあるだろうし・・・。」


「このままでいいんですか。」


「いいんじゃないかな。」


「その根拠は何なんですか。」


「リンドンを陥落させたのは定石を置いただけであって、もう王都はあと数年でエネヴァーのものになる。そうすると実質てきにベルリッツ王国を支配したことになる。あとは各街や村に部下を派遣させて品格者の能力をしらみつぶし探していけばいいだけの話。」


「じゃあ私たちがベルリッツ王国へ向かう段階でもうこうなることは分かっていたと。」


「エネヴァーはキライ。だけど、考え方は合理的すぎる点一番の効率を求めてくるとは分かっていた。ただ、王の行方を追っているのは同じだからこの世界のいろんな国々に侵攻してくるのも時間の問題かもね。」


「魔界だけでなく、人間界も支配するなんて・・・。もうエネヴァーでいいんですね。」


「いや、それは生理的に無理だ。」


「生理的って・・・。なら、エネヴァーよりも王を見つけなければ。何か手がかりはないんですか?」


「手がかり?」


アルヴァンはあの演説の前の日のディオとの会話を思い出そうとした。




王の発表から一週間前。


アルヴァンは王の間に呼び出されて渋々玉座の前で待機していた。


「あっこれついに食糧庫から勝手に食べ物持ち出して帳簿を改ざんしたのがばれたか?クビか?クビか?」


しばらく待っているとディオが入ってきた。玉座に座りこちらを呆れたような顔で見ていた。


『あぁこれバレたな。逃げるか?』


「アルヴァンよ。最近・・・。」


「すみません。勝手に倉庫から食べ物を持ち出したのは俺です!」


アルヴァンは勢いよく言った後で深く頭を下げた。ディオは目を丸くした。その行動を影から見ていたシドが姿を現し言った。


「アルヴァン様。それみんな知ってます。」


「えっ?」


アルヴァンは下げた頭をあげシドを見た。


「食欲になるとなんでこんなにアホになるかは分からないんですが、持ち出してる最中につまみ食いもしてアルヴァン様だと思われる手の跡や足跡が残っていますし、その倉庫に入れるのは料理人と仕入れ業者なのでアルヴァン様が帳簿を書き換えたところで明らかに不自然だし特定できてしまうんです。」


「おまぁ!なんで黙っていた。」


「どうせ注意してもやめないなら、食べた分、給料から天引きして支払ってもらっていたんです。どうせお金も使わないんだし、こういうところで消費していった方が良いかと。」


「なんでそんなところで優秀なんだ、お前は。」


「アルヴァン様の従者だからですからね。」


シドはなぜかドヤ顔だった。


「話は終わったか。ただ、盗み食いはよくないし、勝手に食べられては献立を考えている料理人が気の毒だ。よって・・・。」


ディオが指をならした瞬間、右腕に黒い呪文が浮かび上がった。


「一週間ご飯はお預けだ。勝手に食べたりしたら腕が吹っ飛ぶ。」


「なっ!何てことしてくれたんだ!」


「油断していなければ避けられただろ。別に外で食べてこれば問題ない。食堂の従業員を困らすなと言っているだけだ。」


アルヴァンは落ち込んだ。


「それよりも今日呼び出したのは来週に発表する催しについてだ。」


「催し?」


「端的に言えば人間界へ行き勇者狩りをしてもらう。すべての魔物に出世の機会や場合によっては我の地位を授けても構わない。」


「急にどうしたんだ。別に勇者なんてここ近年じゃ全く脅威ではないだろ。」


「そうだな。ただ、最近の人間界では何やら変わった能力を使うものが顕在するようになり、そ奴らが魔界を脅かす存在になり得るかもしれない。」


「若芽摘みをと。」


「まぁそんなところだ。多少刺激を入れてもよいだろう。」


「そんなものなのか?」


「もちろん、全魔物は参加しても大丈夫だ。けれども、お前は必ず参加しろ、いいな。」


「えぇ・・・。」


ディオはアルヴァンの右腕を指さしてニコってした。


「はいはい。観光がてら行ってきます。」


「催しではあるがこれは一種の業務だぞ。」


「人間界の偵察も業務の内です。」


「物は言いようだな。」


ディオは深く座り息を長く吐いた。

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