サンドイッチって結構作るのめんどくさい
部屋の掃除をしているといらなくなったものを捨てないといけないと思って
なかなか捨てられないですよね。
特に一番に服とか思い出の品と言って残していた資料や本とかあるけど結局使わないで月日は流れ。
まだ着れる。また読む。また勉強する。
いつやるの?今じゃないんでしょ?と分かっていても信じて寝かせておいて、
振り返るとやっぱいらねぇってなる。
これは価値観が変わったのか?マイブームが終わったのか?
とにかく読まなくなった漫画を捨てて行こうかな・・・2時間くらい読み返す。
アルヴァンはテスターさんの家にやってきていた。ベッドに横たわるレオの頬をつねったりして遊んでいた。
「アルヴァン様。ここに連れてきたのはいいのですが、これからどうするおつもりですか?」
シドはアルヴァンに言った。
「別に何も考えてない。とりあえずこいつを王都から遠ざけることには成功したし、能力の検証もできたしおおむね良し。」
頬を引っ張って間抜け面になるレオを見て楽しんでいるアルヴァンをよそにシドはため息をついた。
「やめてくれない。そのため息。」
「ため息くらいつきたくなりますよ。いいですか、この人間を遠ざけたとしても現状、何も変わっていません。王の行方は分からず、そして今王都にいるエネヴァー。私たちは完全に後手なんですよ。」
「まぁ、冷静になれ。ここは漁夫の利さ。」
「言いたいことはわかりますがそんな都合よくことが運んでいないです。」
「エネヴァーが王都にいる以上ヘタを打つこともできないなら、少し経過を伺うのも一つの手だと。」
「ここは待てと。」
「それに一つ気になることがある。」
「気になること?」
「エネヴァーはもうこうなることは分かっていたんだと思う。ただ、その最後のピースが見つからないように見えるんだよね。」
アルヴァンはカエルからランプを取り出してメティスに呼び掛けた。
「メティス。リンドンの様子を見して。」
「おまえの都合よく動くと思うなよ。」
メティスは機嫌が悪かった。
「なんかあった?」
「なんかあったじゃねぇよ。必要がある時しかカエルから出さねぇし。俺のことなんだと思っているんだ。」
少し考えた後でアルヴァンは言った。
「便利な・・・火?」
「やっぱりその程度じゃねぇか!いくら従属しているからと言って扱いが雑なんじゃい。」
こいつと言いシドと言いどうしてこうこじれるかな。
「アルヴァン様。これはメティスの言う通りです。最近のアルヴァン様は我々従者の扱いを何か勘違いされていると。現に先日も・・・」
アルヴァンは耳を塞いだ。さすがに2匹同時に責められると厄介だった。頃合いを見て手を下すと2匹は黙ってこちらを見ていた。さすがに耐えかねず、
「すみませんでした。より主として品位ある行動をいたします。」
「なんですか?そのどっかから取ってきた言葉は。まぁ口を酸っぱくいっても数日たったらケロッとしているのでもういいです。」
『こいつ、タイミングを見計らって言いたいこと言いやがったな!』アルヴァンは怒りが込み上げてきた。
「お前ら調子に乗りやがって!いいか俺はお前らの主であって!」
シドは気配に気づき影に戻り、メティスもランプの中に戻った。その瞬間扉が開いてテスターさんの奥さんが入ってきた。奥さんはアルヴァンを見るなりニコッと笑みを浮かべた
「あら、ぼっくん。何を騒いでいたんだい。」
奥さんはアルヴァンのことを『ぼっくん』という。どうやらアルヴァンのことを子ども扱いしているみたいだ。
「どうだい、眠っているお兄ちゃんは?」
奥さんはベッドに近づきレオの様子を伺った。
「顔色はよさそうだけど,こう何日も眠っていると心配だね。」
『別に心配ではないんだけどなぁ。』
「もうすぐお昼だからおいで。今日はパンにチーズをのせて食べようか。」
奥さんが部屋から出るその後をアルヴァンも追っていった。取り残されたメティスは思った。
「もうあいつ『テト』になった方がいいんじゃないか。魔物やめて。」
そして、メティスはレオの顔をじっと眺めて言った。
「間抜けな面しやがって。」
一応カエルから出してもらったものの外は昼の日が高い時間で特に部屋の中には目ぼしいものなどない。
「はぁ。暇だな。」
メティスは一人ため息をつくのであった。
台所では奥さんが食パンをカットしていた。アルヴァンは椅子に座って脚をぶらぶらと揺らしている。そこへ玄関の扉が開いた音がした。テスターさんが帰ってきた。
「ただいま。」
玄関から聞こえる声に奥さんは応えた。
「おかえりなさい。」
テスターさんが台所へ来ると座っているテトを見つけ
「おう、ぼっちゃんもいたのか。もう昼だもんな。」
テスターさんは流しで手と顔を洗い席に着いた。奥さんは切った食パンの上に菜野菜を葉を一枚のせ、薄くスライスしたハムとその上にチーズをのせ仕上げにお塩をまぶした。
「おっ、今日はフレッシュチーズか。ぼっちゃんは初めてか?家の農場の乳で作っているんだよ。」
アルヴァンは奥さんが今まさにパンで挟もうとしている様子をじっと見つめていた。奥さんは大きなお皿にサンドイッチを盛りつけ、付け合わせに野菜のピクルス漬が添えアルヴァンの前に置いた。サンドイッチはいろいろ食べてきたが場所によってまた違った具材が楽しめるのだとアルヴァンはしみじみ思った。奥さんも椅子に座り盛りつけたサンドイッチをテスターさんにも渡し二人は両手を合わせお祈りをし始めた。その二人の様子を見て同じようにやった方がいいのかとアルヴァンは両手を合わせて目を閉じた。お祈りが終わりテスター夫妻はアルヴァンに目をやると同じように手を合わせている姿を見てお互い見合わせて微笑んだ。
「ぼっちゃん。もういいんだよ。さぁお食べ。」
アルヴァンは目を開けてすぐさまサンドイッチを手に取りかぶりついた。アルヴァンはチーズの甘さと濃厚さに塩味のアクセントが口の中に広がり夢中で平らげてしまった。あまりの早さで食べるので奥さんは驚きつつ急いでコップに牛乳を注いでアルヴァンの前に置いた。
「ほらほら、そんなに急いで食べると喉詰まらせちゃうよ。」
アルヴァンはコップを手に取り牛乳を一気飲みした。上唇に付いた牛乳を舌でなめコップを机に置いた。
「ぼっちゃん、いい食べっぷりだな。」
テスターさんは感心していた。
「あんたってばそんなに急かしたら体に良くないわ。ぼっちゃんそんな急いで食べなくていいんだよ。ちゃんと味わって食べればいいんだからね。」
奥さんはまた食パンを切りだしアルヴァンのおかわりを作り始めた。その様子を伺いながらもアルヴァンは野菜のピクルスを食べた。酸っぱいながらもまたサンドイッチの濃厚さを引き立たせると思いながらバリバリ音を立てて食べた。奥さんはそんなアルヴァンの様子を見ながら嬉しそうに具材を挟み始めたのだった。
結局、一斤あった食パンのほとんどがアルヴァンによって食べられてしまったが食べ終わった後奥さんは言った。
「今晩のおかずに鶏肉を買ってこようか。いっぱい食べてくれる子がいるから張り切って作らないとね。」
アルヴァンは拳を上げて喜んだ。