人間ってこわい
パソコンを使えない若者が増えている。
けど、実務的なことって会社勤めになってから出ないと覚える機会ってまずない気がするのだが・・・。
小中高でゲームや簡単な資料作りなどはやってきたけど、今ってそう言った授業はないのかな
タブレットやスマホが主流の世の中だからこそパソコンの存在ってもういらないのかと。
けど、タイピングに慣れているとどう考えてもパソコンで調べたり、文章を打つのは楽だと思うが。
そして、家の親は、指一本でアルファベット探して入力している
「あんなにパソコン教室に行きなさいって言ったのに。」と口説く言うが笑ってごまかされる。
年齢関係なく必要に応じて使えるようになればいいのかな。
日が落ちていく。さすがに夜通し進むのは難しいと思いレオは高い丘の木の下で焚火を起こした。アルヴァンはレオの横に座わり焚火を見つめた。
「君は一人?一匹なのかい。こんな駆け出しの勇者と一緒にいたって特に何も持ってないぞ。ましてや殺したところでありんこ殺すことと変わらないぞ。」
《こいつ殺してくれと言ってるのか。おめでたい奴だな。》アルヴァンはレオの殺し方を真剣に考えた、考えた案を実証してみようと意気込んでいた。そんなことを考えているとはつい知らず、レオはアルヴァンにパンを渡した。アルヴァンはためらいもせず受け取りにおいを嗅いでから食べ始めてた。
《ちょっと硬いがまぁまぁだな。》アルヴァンはもぐもぐさせながら咀嚼した。
「なぁ。君はなんていう名前なんだ。見たこともない姿をしているし。」
《そう言えば、前に牛乳をもらったなぁ。飲んじゃったけど。》
レオは地面に文字を書き始めアルヴァンに見せた。
『テト』。
「君のことをテトって呼んでいいかい。」
《テト?誰が?俺が。》
シドは影からその様子を聞いててこっそりアルヴァンに言った。
「よかったですね。あの食い意地悪い神の遣いなんて。」
レオは神の遣い『テト』の話をしている横でアルヴァンは
《こいつふざかやがって。誰が食い意地が悪いだ!》
アルヴァンは内心で怒っていた。しかし、レオは話を終えアルヴァンの顔を見るなり嬉しそうにニコってした。
《気持ち悪い顔でこっちを見るな!》アルヴァンは不服だった。せめてもっとかっこいい名前にしろと訴えたかった。
そんなアルヴァンの不満をよそにレオはリュックから大きな毛布を取り出した。そしてアルヴァンの肩が被るように毛布で覆った。
《なんで毛布被せた?くっつくんじゃねぇ。》
「もう遅いから寝よう。あれ?テトは寝るのか?生き物なら睡眠ぐらいとるよな。」
《これ虫食いの痕?もっといい毛布を持たせてやれよ。》アルヴァンは毛布のほつれを抓んだ。
「テトも一緒に王都へ行こう。魔物を使役している者もいるから何とかなるだろう。」
《お前と一緒に行くのはごめんだが。せめて潔く死んでくれないか。》アルヴァンはレオを細い目で見た。レオは何か考え事をし始めたのでその目線には気づいていない。
「アルヴァン様。何かが近づいてきます。西の林からです。」
シドの報告にアルヴァンは立ち上がりその方角を見つめた。そこにはゾンビの魔物がこっちに近づいてきていた。
「野良ですかね?」
「こんな高原にはゾンビは普通いないだろ。関係者じゃないかな。」
レオは短刀を取り出して身構えた。その様子をアルヴァンは横で見た。
「どうしたんだ、急に?」
「それさっきその人間も言ってましたよ。」
「えっ、うつった?」
ゾンビの魔物が大分近づいてきたときレオは急に
「仲間になれ!」
と叫んだ。アルヴァンはその声にびっくりした。
「えっ?どうしたんだ?頭がおかしくなったのか?」
「大丈夫ですか?この人間。品格者になる奴はこうおかしくなるんですか。」
ゾンビはひるむことなく近づき、レオはおどおどし始めた。すると、ゾンビがアルヴァンに話しかけてきた。
「あれ?アルヴァン様じゃないですか。お久しぶりです。」
アルヴァンは声をかけられて《えっ、こいつ俺のこと知ってる?誰だっけ?》とゾンビに近づいた。けど、やはり思い出せず何となくやり過ごそうとゾンビに話しかけた。
「えっと、あれだ・・・その・・・。魔王城で・・・。」
「あれ?忘れちゃったんですか?ユリス様の研究室にいた。」
《ユリスの研究室?》アルヴァンは記憶の中を探った。そもそも研究室にユリスの他に誰かいたか全く覚えていない。むしろ、なんか溶液に浸かっていた・・・。
「実験体3号?!」
「あっ!さすがですね。そうです。実験体3号こと『セイル』です。」
《こいつ名前があったのか。それにしても実験体にそんな清い名前つけるか普通。》
アルヴァンと実験体3号『セイル』は特に話したことはない。なぜなら、ユリスに実験を見せられた時にたまたまその実験体がこの『セイル』だっただけで、その実験は爆破からゾンビの体がどれくらいの時間で修復するのか。電流を流して身体の信号をコントロールしてラジコンのように操縦できるのか。など、消耗品としか見ていなかったためまさか今ここで話しかけられるとは思いもしなかった。
「ところで、アルヴァン様はここで何を。あのいきなり発狂した人間は何ですか?」
「あぁ、あれは、奴隷・・・奴隷!奴隷に品格者の案内をさせていたんだよ。そう、ここでは休憩中。」
シドはこっそりアルヴァンに話しかけた。
「さすがに無理があるのでは。」
「すごいっすね。アルヴァン様。人間を奴隷にしちゃうんですか。あったまいいですね。」
《異様に軽いノリだな。まぁバカで助かった。》アルヴァンは少し胸をなでおろした。
「こっちも聞いていいかな?実験体3号はどうしてここに?ユリスと一緒じゃないの?」
「アルヴァン様。そこは『セイル』と呼んでください。」
《うわぁ、めんどくせぇ。》アルヴァンは心の声が漏れそうだった。
「そのユリス様を探しているんですよ。リンドンで品格者の戦闘のデータを取っていたんですが、何者かに品格者を先取りされてしまい、渋々王都へ向かっていたんです。」
《ごめん。それ俺たちです。》アルヴァンは黙っていた。
「関所は増産型土人形『アシュラ』でそこの兵士を混乱させてその隙に堂々と通過。まもなく王都って時にエネヴァーがやってきたんです。それで、手を組まないかと誘われたんですが、ユリス様『私、あなたタイプじゃないのよね。』って言ったら、いきなり僕ら吹っ飛ばされたんです。それっきり、ユリス様とは離れ離れに。」
「吹っ飛ばされた?魔法で?」
「いや、爆発魔法でもないですね。あれですかね、品格者の能力。」
エネヴァーはやはり王都にいる。そして、品格者の能力もいくつか保有していると考えた方がいい。それを踏まえてアルヴァンはセイルに言った。
「お前は、研究室に帰った方がいい。このままやみくもに探し続けても見つからないどころかお前が何者かに殺されてしまう。ユリスに会ったら伝えておくから。」
「俺の命が危ないんですか!俺、一回死んでいるんですが。」
「いや、そういうノリ今はいらないから。」
「分かりました。アルヴァン様信じて、研究室で待ちます。では、また。」
セイルは引き返していった。
「ユリス様は無事なんでしょうか。」
シドはアルヴァンに言った。
「分からない。生きていてくれればいいんだが。」
アルヴァンがレオの方を向くと剣を構えたまま硬直している。近づいてしばらく様子を伺ってみると硬直が解けレオは腰を落とした。そして、言った。
「そんな能力ないよな。」
《あるわけねぇだろ。》アルヴァンは呆れた。
「テト。ありがとう。助かったよ。」
《何にだ?俺なんかしたのか。こいつ分かんねぇ。》
「なぁテト。俺は勇者になれるだろうか。そもそも戦う力もないのにどうすればいいんだよ。行きたくないよ・・・。」
レオは視線を逸らし俯いた。そんなレオの姿を見てアルヴァンは思った。
《こんな意気地なし、お荷物の何者でもないな。行きたくないならそうしよう。》
アルヴァンはレオの頭を撫でた。再び顔を上げたレオはアルヴァンに
「ごめんな。ありがとう・・・テト。いいやつだな。」
涙を流しながら言った。
《やっぱりこいつ気持ち悪いな。かかるかな?》
レオの目がとろっとしてきた。横になりレオは眠りについた。
「あれ?催眠術はかかるんですね。」
シドはアルヴァンの影から出てきてレオの瞼を広げちゃんと眠ったのか確認した。
「おそらく危害があるかそうでないかで能力が発動するみたい。催眠術は単に眠らせるだけだし、悪意はない。」
「悪意がない方が魔物的には問題があるんじゃ。」
「普通はね。」
「さて、この人間どうしましょうか。」
「本人も王都に行きたがっていないことだし、隣国へ飛ぶかな。」
「えっ?隣国ですか?」
アルヴァンたちが移動魔法でたどり着いたあの隣国の大陸『ミシュバーン』。この一年の間ベルリッツ王国を目指しながらも寄り道を繰り返したあの場所。
「うーん。まずはいろいろ検証したいから。ギンガルへ行こうかな。」
ギンガルはアルヴァンたちが隣国にやってきて最初の村から旅立って次に訪れた村である。大型の四足獣を討伐したところである。
「一度、あそこに飛んでから山脈へ移動する。そこでまずは渓谷へ行って落としてみたい。」
アルヴァンはさっき考えていたレオを殺す方法を実践したくてしょうがなかった。
「まぁ王都から遠ざける点ではいいですが。アルヴァン様、さては。」
シドはギンガルを訪れた際にアルヴァンが村人からもらった品々を思い返し察した。
「別に目的は検証だってば。」
「ほんとですか。」
アルヴァンはレオのリュックから短剣と着替えを一着取り出した。近くの茂みに隠れていたネズミを捕まえ殺し、着替えに血を垂らし短剣にもネズミの死骸をこすりつけた。そして、爪を尖らせて着替えを切り裂いた。木の下に軽く埋めて偽装は完了した。
「さて、行きますかな。」
アルヴァンは移動魔法を唱えてギンガルへと飛んで行った。