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テト  作者: 安田丘矩
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大人になるとふてぶてしさだけ増す

急に寒くなってしまうとまだ衣替えができていないので焦る。

丁度いいスウェットを買うけれども、インナーとかも欲しい。

ここで迷うのは、起毛とか裏地が厚い服を着るべきか。

確かに寒いんだけれども、逆に着こみすぎて暑くなったら困る。

ちょうどいい塩梅に治めるにはどうすればいいのか。

そうすると、着脱しやすい服を選ぶしかないんだよね。

そういえば去年パーカーおじさんが悪い意味で流行ってたけれども、

あれはパーカー着る=ダサいって感じなのか、よく分からない比喩ってあるんだなぁ。

せめて、タートルのセーターは買っておきたいなと軽くネットで良さげなもの検索しておく。

気が付くとアルヴァンは光に覆われていた。その光に抱かれているようにふわふわと浮いた状態だった。不思議と辺りを見渡しても何もいない。すると、突然声が聞こえた。


「アルヴァン?アルヴァン。聞こえますか?」


どこから声がしているのか分からないがアルヴァンは恐る恐る応えた。

「おまえ誰だ?」


「もうかれこれ長い月日が経ちましたものね。あなたも忘れているでしょう。私はケツァルペトラトル。星の願いに呼ばれてあなたを助けに来ました。」


「星の・・・願い?」


「あなたが以前、星をさらに還してくれたことで目が覚めました。私はテスカトリポカによってバラバラにされてしまっていたのです。」


「ん?よく分からないぞ。」


「私は、願いを授ける神です。そして、あなたにもその願いが宿っているのですよ。」


「ということは、その願いを授けたのがあんたってことか。」


「うふふ。まさかあんなに小さい悪魔だったのにこんな威勢良くなってしまうなんて。」


「それは世辞か?」


「そう受け取ってほしいわ。」


「けど、俺の願いってなんだ?そもそも、テスカトリポカと戦った時に願いは空に還ったはずじゃないのか?」


「そうですね。あれは私、バラバラにされた願いが空に還っただけです。本来、私が授けた願いは本人が天寿を全うし亡くなるか、本人が意して手放す場合でなければ空に還らないの。だから、あなたに授けた願いは生き続けているわ。」


「そうなのか・・・。ところで俺の願いって?」


「もともと、あなたの中には悪食というテスカトリポカが宿した化身がいたの。その暴走によってあなたは厄災のごとく食べられる生き物を食べつくしていたの。テスカトリポカはあなたの他にも厄災となる者に力を与えて世界を滅茶苦茶にしてきた。」


「ディオクレイシスもか。」


「そして、そのディオクレイシスが自らの能力を手放す代わりに私をあなたの元に寄こしたの。」


「あいつが俺のために・・。」


「話が逸れたけど、その悪食の暴走を私の兄ケツァルコアトルが止めて悪食の能力を抑えたの。ただ、今にも死にそうなあなたを私が治癒して、食べ物に困らないように『銀の匙(ハーベストムーン』という食べ物に恵まれる願いを授けたの。」


「食べ物に恵まれる願い。俺の食い意地はそこからなのか?」


「あなたから悪食の化身を引っ張り出すことができなかったの。飢えによってまた身体を乗っ取り厄災を引き起こす可能性がある以上こうすることしかできなかったの。」


「まぁいつもお腹いっぱいだけどな。」


「なら良かったわ。けど、その悪食はテスカトリポカによってあなたの身体から解放されたんだけどね。」


「じゃあ、もうこの願いは必要ないのか?」


「あら、要らないの?」


「いえ、有難いです。」

アルヴァンは即答した。


「なら良かった。今まで、あなたの力は悪食の能力を引き出して高めたものだったから、今のあなたはかなり弱くなってしまったの。」


「えっ・・・そうだったのか。どうしよう。」


「残念ながら、今の私ではあなたに力を授けることができません。せめて、もう少し力が戻れば・・・。あれ?どうしてかしら。力がみなぎってくるわ。」


「どうしたんだ?」


「よく分からないけど、星たちが一斉に空に還されたようなの。」


「一斉に空へ?あっ、今って日が昇ってるのか?」


「えぇ、日の出の時刻よ。」


「俺が日の出とともに祈りを捧げようって周知しておいた。」


「そうなの?」


「テスカトリポカが嫌がっていたから、願いを空に還せば対抗できると思って。」


「残念ながら、たとえ力が戻っても兄には勝てません。それだけ強大なの。」


「ちょっと待て。兄って言ったか。そういえば、ケツァルコアトルも兄って。」


「私たち兄弟なの。」


「兄弟同士仲良くできないのか?」


「互いに世界の支配をめぐって衝突することがあったから、この因縁は切れないし関係性も修復できないわ。」


「お前はそれでいいのか?」


「私、バラバラにされているんだけどね。」


「あぁ・・・そうだったな。」


「ただ、衝突しあうのは仕方がないのかもしれない。神様って身勝手なものだから。でも、一番に信仰してくれる信者たちが豊かに暮らしていってほしいわ。私はそれを願っているわ。」


「そもそも、願いを授ける神様だもんな。」


「私の力を戻してくれてあなたには感謝しているわ。まだ本調子には程遠いけれども、全てが戻ったらあなたの手助けをするわ。約束よ。」


「全てって、星の回収をしないといけないってことだよな。できるのか?」


「星たちが探してくれるようになるから大丈夫だけれども、さすがに強者相手だと厳しいかも。その時は、アルヴァンさん。助けてくれるかしら。」


「うーん・・・命の恩人だしな、仕方ない。」


「そこは威勢よく「任せとけ!」って言ってほしいわね。」


「そんなの保証できない。」


「あら、今回の無謀な作戦の立案者とは思えないわね。」


「けぇ。アクシデントが多いんだよ。」


「詰めが甘いのよ。」


「なかなか意地悪だな。」


「もうそろそろここから抜け出さないとまずいわ。私が出口へ引っ張って行くからついて来て。それと、戦える力を授けられないけれど私とコンタクトが取れるようにあなたに星を飛ばす力を授けるわ。」


「星を飛ばす力?なんかすごそう。」


「ただし、一日一回だけよ。」


「あぁ・・・そう。それで、星を飛ばす力って?」


「空に放てば私と連絡が取れるの。」


「・・・それだけ?」


「それだけ。戦闘に使えるわけではないわ。」


「じゃあ、ピンチの時に何かしろ応援とか来てくれるか?」


「あぁ・・・その手があったわね。」


「おい。」


「わかったわ。もしピンチに陥った時それを星を空に放って頂戴。助けを用意するわ。」


「そうそう。そういうのでいいんだよ。」


「調子がいいんだから。」


「さぁ、このどんよりとしたまどろみから抜け出しましょう。」

アルヴァンは光の導く方へと向かい始めた。



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