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テト  作者: 安田丘矩
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間違いだらけでも、修正しながら生きていけばそれでいい

来週インフルエンザ予防接種を受けるんですが、ニュースを見てて

鼻から吸引タイプがあるんですね。知らなかった。

正直、注射が得意じゃないのでそっちの方がいいなと思ってしまった。

けど、ダイレクトに生ワクチンを接種するので症状が出てしまう恐れがあるみたい。

それもそれで考えようだな。

インフルエンザの予防接種って、謎に採決されるんだけどあれやめて欲しい。

血を抜かれるのが苦手だし、血を抜かれている間ナーバスになるのが嫌。

赤十字社がいくら血が足りません献血をって言われてもごめんなさい。無理ですって言ってしまう。

けどその場合、緊急性があるときどうするって言われてしまったら・・・。

その時は、ベッドに横たわって片腕出して目を塞いで、中村雅俊の「ふれあい」を聴いて紛らわす。

メティスが戻った時にはテスカトリポカがアルヴァンを連れて行った後だった。メティスは周辺を漂っているとユリアがレオの身体を抱きかかえて泣き崩れている姿があった。そして、その様子を見つめる一つの魂がいた。


「なんだ、あれ。」


メティスは恐る恐る近づきこの状況からその魂がディオクレイシスのものであると分かった。自らの生き写しと聞いていたこともあり、ディオクレイシスはレオのボロボロの身体を見て何を思っているのかとじっとその様子を伺った。


「本当にすまなかった。」


ディオクレイシスがボソッと言った時、メティスは少し感情的になり話しかけた。

「謝るぐらいなら。最期まで責任を果たせよ。」


「お前は・・・。」


「こんなしみったれているのが魔王だって?冷酷無慈悲な野郎だったら良かったのにな。」


「余計なお世話だ。所詮は人間にも魔物にもなれなかった。何者にもなれなかった。そして、全てを失った。愚かな男だよ。」


「最期だから感傷に浸って、消えてなくなればそれで終わりか。身勝手で無様なものだな。」


「そうだな、何とでも言ってくれ。」

王の威厳というものが失われたディオクレイシスの姿に呆れたメティスは強く言い返した。


「なら責任を果たせよ。あのボロボロになった身体に入ってちゃんと人間になったらどうだ。」


「何を言っているんだ?もうあの身体では無理だ。」


「ごちゃごちゃうるせぇんだよ。お前が撒いた種なんだろ。自分の無念を人に擦り付けるな!馬鹿!」

メティスは呪文を唱え始めた。


「おい、何を!」


メティスは憑依の術を唱え発動した。ディオクレイシスはレオの身体の中に貼って行った。レオの身体に憑依したディオクレイシスは中々動こうとしなかった。


「何やってるんだあいつ。このままくたばる気か?」


すると突然体のケガが治り、身体を起こした。その様子をみてユリアは唖然と見つめていた。メティスはしばらく二人の様子を見た後でゆっくり近づいて行った。


「あら?メティスさん?アルヴァンさんと一緒じゃないの?」


「別行動だ。あいつは捕まったみたいだが。」


ディオクレイシスは不思議そうにしてユリアに問いかけた。

「ユリア?この魔物の言葉が分かるのかい?それに話せているし。」


「えっと・・・その・・テトさんのお友達なの。それで、自然に覚えたのよ。」


「覚えられるものなのか?」


「えぇ、まぁ。」


「話を戻すが、あいつが捕まったのは想定内の話だ。だが、さすがに助けに行かないといけない。」


「助けに行くって方法はあるんですか。」


「まず、ユリアはシドと一緒に避難しろ。そして、レオは俺と一緒に来い。」


「そんな、私も行きます。・・えっ、シドさん。」


「いるんだろ?シド。」

シドは恐る恐る瓦礫の影から出てきた。


「メティスさん、無事でしたか。」


「なんで隠れていたんだ?」


「えっ・・・陰ながら護衛を。」

シドは言いにくそうにした。


「そうだったんですか?」


「まぁいい。ユリア、安心しろ。こいつはフェイクとして神の前に立ってくれればそれでいいだけだ。本当の攻撃は上にいる仲間が行う。」


「けど・・・。」

ユリアは不安そうにレオの顔を見た。


その表情を見てディオスはユリアに言った。

「ユリア。俺はあいつを助けたい。だから、これをやり終えたら必ず君の元に戻るから。信じて欲しい。」


ユリアはその真剣な眼差しを受け取り深く頷いた。

「きっとよ。」


「あぁ。」


二人のやり取りを見ていたシドは深くため息を吐いた。


「なんで、お前が見惚れているんだ?」

メティスはシドに問いかけた。


「えっ、別に見惚れてなど・・・。ユリア様、行きましょう。後は二人にお任せして。」

ユリアとシドは一緒に避難しに去って行った。




「それで、作戦とは。」

ディオスはメティスに聞いた。


「いま、この上空にタクトマスターが待機している。テスカトリポカを傷つける唯一の方法を託してな。それで、おまえはテスカトリポカの目を逸らしてほしい。」


「それだけでいいのか?おそらくそれだけでは奴は倒せないぞ。」


「俺もそれは同感だ。だから、最終手段として願いを空に還す。」


「願いを空に還す?」


「もうすぐ夜が明ける。それを合図に願いを空に還すんだ。」


「それがテスカトリポカにとって不利になるのか?」


「奴はアルヴァンと戦った時、アルヴァンが持っていた願いを空に還したんだ。そしたらひどく怒っていた。きっと、願いを空に還すことは奴にとって何かしろの嫌なことなんだと。」


「願い・・・か。」


「けど、この町にどれだけ願いを持っている人間が居るかは分からない。シドが持っている願いしかない場合、それだけで何とかなると信じるしかない。」


「行き当たりばったりなんだな。」


「これは、おまえのツケでもあるんだぞ。」


「それは心苦しいな。」


ディオスは近くに落ちていた剣の柄を取りそれをじっと見つめた。

「今更こんなこと言うのもなんだが、あの時人間のままで死ねたらよかったってずっと後悔しながら生きてきた。けど、結局臆病だからこそ魔物になってまで長い月日を生き延びた。人間の世界はおかしな話、統一され平和になった。皮肉だろ。人間なんて共通の脅威があれば協力し合えるって。」


「それこそ、お前と同じように臆病だから。別に不思議な話でもないさ。ただ、そんなの平和じゃなくて猶予って言うんだ。それを勘違いした人間が結局また争いを始めてしまう。いいか。平和なんてない。ただ、本当に守りたいものがあるなら何かを犠牲にしても手に入れる。それが普通の選択だと思うぞ。」


「それが間違っていてもか?」


「誰に正解を求めているのかは知らないが、自分の届く範囲で正解にたどり着けるならそれで御の字だ。」


「そうか・・・そうかもしれないな。」


「ただ、お前が魔王として君臨していた時は明らかに均衡が保たれていたぞ。それだけは評価してやる。」


「やっぱり魔物の方が性に合っていたのかもな。」


「じゃあ、最期も魔物らしく戦え。」


「あぁ。もう少しだけ頑張ってみるさ。」

ディオスはしっかりと地面を踏みしめテスカトリポカのいるところへ向かって行った。


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