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テト  作者: 安田丘矩
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君と僕との間に永遠は見えるのかな

なんか今日寒かったんですけど、皆半袖でも平気と言っていてちょっと疎外感を感じた。

まぁ朝は低血圧でスロースターターだからそりゃ人よりも寒さに敏感だけど

それでも、そんな薄着してたら風邪ひくでしょ!ってお母さんみたいなことを思ってしまう。

季節の変わり目だから仕方ないけど、このまま急に寒くなってしまうのか。

一番気にしているのは暖房器具を用意するタイミング。

もう置いといていいものだろうか。けど、帰ってくるとちょっと蒸し暑さがあるから。

エアコンの除湿を入れて涼しくしておきたいところ。

このさじ加減どうも難しく、調整しづらい。どうしたものだろうか。


ユリアは涙をぬぐいレオに言った。

「そういえば、テトさんは見ませんでしたか?」


「テト・・・あぁテトは敵の手中だ。」


「なんですって・・。」


「敵と交戦した後でテスカトリポカという神に捕まってしまった。」


「あのテトさんがですか?信じられない。」


「ユリア、聞いてくれ。ここはもう安全でなくなる。その前に逃げるんだ。」


「逃げるってどこへですか?それにレオさんも一緒ですよ。」


「それはできない。」


「なぜですか。」


ユリアに問われてディオスは言葉に詰まった。ディオスは先ほどメティスに言われたことを思い出した。誰に責任を果たせばいいのか。何に罪を償えばいいのか分からない。もう、許してもらえる人もない。そして、目的すらも失ってしまった。


「レオさん。あなたは充分に勇敢に立ち向かってくれた。けど、あなたを犠牲にしてまで守ってもらう義務はないです。だからレオさん、私と一緒に生きて欲しいんです。」


ユリアからの思いがけない言葉にディオスの目から涙が溢れた。ユリアはそんなレオを抱きしめた。


「ユリア・・聞いてくれ。俺はもう長くはないみたいだ。だから、この命が尽きるまで一緒にいるよ。」


ユリアはそっと腕を解き俯いた後でレオの顔を見た。

「本当にレオさんはズルいです。ずっとです!」


ディオスはその表情を見るなり気づいていた。強がって見せていても別れが近いことを察していた。ディオスはレオの記憶からユリアに伝えたかった言葉を探し始めた。そして、真剣な目をしてユリアに言った。


「平和な日常の中でカイノスが大きくなる姿を見ながら、歳をとって生きたかった。どうしてこんな目に遭うんだろう。どうしてこんな時代に生まれたんだろう。けど、この刹那の中でユリアに出会えたことほんと運が良かったと心から思っている。だから、一緒になってくれて本当にあ!」


いきなり、ユリアはレオの口を塞いだ。


「その言葉は本当に死ぬときに言ってください。それにもっと生きる努力をしてください。」


ユリアが手を下した後、ディオスは胸をなでおろして言った。

「・・・努力します。」




テスカトリポカはエネヴァーに命令し魔物たちを招集させた。しかし、招集してきた魔物は出陣したときよりもかなり減ってしまっていた。


「おや、少数精鋭の舞台だったのか。」

テスカトリポカは不思議そうに集まった魔物たちを眺めた。


「いえ・・・敵勢力が思ったより健闘したようで・・・。」

エネヴァーは苦い顔をして応えた。


「そうか。思ったよりこのアルヴァンはやるではないか。そして何より悪食に意思を持たせることができるとは。とは言え、せっかくの新たな王の誕生披露としては寂しすぎるな。」


テスカトリポカは地面に手を付けて呪文を唱えた。すると、地面から次々と魔物が湧き始めた。


「テスカトリポカ様。これは一体。」


「自我をなくした屍の魔物たちだよ。これを君に任せよう。命令すればその通りに動く。」


「これは何ともありがたい。」


「それでは諸君。この度、ディオクレイシスは王位継承に敗れ今ここに亡き者になった。」


テスカトリポカはディオクレイシスの肉体を掲げ魔物たちに見せつけた。


「そして、その王位を継承したのはこちらのエネヴァー氏である。」


魔物たちから歓声があがった。


「我、神テスカトリポカの名においてエネヴァー氏を正式の王と認め、この世界を魔物による創造と統治を進めるのだ。」


エネヴァーが前に出て魔物たちに言った。

「私はこのテスカトリポカ様に加護を得た上に王となった。皆、我に従いこの世界を魔物による支配下として征服する。」


魔物たちは賛同しさらに歓声があがった。


そして、再びテスカトリポカは話し始めた。

「さて、まずは余興としてこの町の住人を根絶やしにするのだ。行くがいい。」


魔物たちから奇声が上がり侵攻していった。


「行かせねぇよ・・・。」


その声に気づきテスカトリポカはアルヴァンを抱えていた腕を見た。

「おぉ起きたのかい。気分はどうだい?」


「お陰様で最悪だ。」


「それは良かった。だが残念なお知らせがある。君に与えていた悪食の能力は君からはがさせてもらった。だから、君はもう強くなくなってしまった。」


「あぁそうかい。そんな気持ち悪い能力こっちだって嫌だわ。」


「けど、どうしようかな・・・正直、このまま君と賭けをしたところでちょっと役不足だからなぁ。」


その様子を見てエネヴァーが話に入った。

「テスカトリポカ様。でしたら私に任せていただけないでしょうか。」


「どうするんだい。」


「もちろん、私のペットとして服従させより忠実な魔物に調教いたします。」


「君は正直だね。それだと、私が面白くないから。彼には試練を与える。」


テスカトリポカはカギを取り出した。そして、上に向けて鍵を開ける動作をすると『カチィ』っと何かが開く音がした。すると、そこから禍々しい黒いドロドロした液体が溢れ始めた地面に広がって行った。


「エネヴァー君。君の血をこの黒い液体に垂らしてごらん。」


エネヴァーは言われるがままに自身の手を切ってその黒い液体に垂らすとその液体は一か所にまとまり沼のようになった。


「これは一体。」


「これはね、悲劇のまどろみ。これに取り込まれた者はこの中で自分トラウマや恐怖を連続で体験し続ける。そして、エネヴァー君の血を使ったのは完全に精神を崩壊した後で君のしもべとなる洗脳を施しておいた。」


「何やら素晴らしい。」


「さて、早速入れてみよう。」


テスカトリポカはアルヴァンを手放したその時、光がこちらに向かって飛んできた。アルヴァンは沼につかり沈み、それを追ってその光もその沼の中に入って行った。


テスカトリポカは怒りをあらわにして言った。

「今の光は願いか!誰だ、我を邪魔するのは!」


テスカトリポカが向けた視線の先にいたのはレオだった。


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