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テト  作者: 安田丘矩
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やっとここまでたどり着いた

スマホの中の写真をデータ移すこともせずそのままの状態

かれこれ一番古い写真は2016年ってさすがにバックアップ取れよ

そこから遡って写真を見返すとまだ小っちゃかったねーちゃんの子の写真

自転車乗ったり、虫を取ったり。今じゃ小学校高学年ですからねぇ。

歳月は人を待たずといいますか、なんだろう時の経つ重みを客観的に知る。

それとまだ元気に歩いていたばあ様の写真が。いろんなところを一緒に行ってた頃

今は施設で歩くのもままならないが、元気にはしている。

人を撮った写真って正直苦手です。感傷的になりすぎるから。

高原で朝を迎えたある日、シドは自身の布をアルヴァンの腹に巻き付けていた。


「これはどういうことかい。」


アルヴァンは不満そうにシドに言った。


「ここまで来て逃げられては困ります。現に昨晩絶対逃げる気だったでしょう。勘で分かるんですからね。」


「勘も何もそういう雰囲気を出してたと思うんだが。」


「相変わらず。口が減りませんね。」


「それ主にいうことか。」


「やはり、厳しくしていかないと。ただでさえこの一年以上堕落していたと思います。」


「どこが?」


「物乞いして食べ物をもらっていたでしょう。そのカエルに何が入っているんですか!」


「別に・・・非常食。」


「はぁあきれた。」


たわいもないやり取りをしていると村が見えてきた。アルヴァンは何か食い物あるかなと楽しみにしていた矢先、村の大きな家の前で村人たちが集まっていた。なにやら様子がおかしいと思い、アルヴァンはその家の裏手から屋根に移動し見つからないように様子を伺った。兵士が4名と白い装飾の付いたローブを纏う少し年配の僧侶らしき人物が水晶を横に村人と話していた。


「なんですか。あれ。新手の詐欺集団ですか。」


「だとしたらなかなか手の込んだ輩だと思う。」


村人が一人ずつ水晶に手を当てて何かを見ている。


「何しているんですかね。」


「儀式か?」


しばらく見ていると背は高いが、頼りないくらいひょろく木偶の棒のような青年の番が来た。その青年が水晶に手を当てると少しして水晶が白く輝きだした。それを横で見ていた僧侶が突然、


「おぉ。勇者だ!勇者が…今ここに誕生した。皆、彼こそ明日への希望だ。」


と声を上げ村人は歓喜を上げた。


「アルヴァン様聞きましたか。勇者ですって。それって。」


「あの怪しい詐欺集団、トニーが言ってた品格者を補充するって話の奴らだ。」


「村々を転々として品格者を探しているようですね。」


「これはますます拍車が掛かってくるな。」




その夜は勇者が誕生したことで大きな家に住む村長の家でお祝が開かれた。勇者となった青年は村人たちからありったけの酒を飲まされ泥酔していた。アルヴァンはその様子を少し離れた席で酔っぱらいの陰に隠れながら様子をうかがっていた。すると横にいた酔っぱらいがアルヴァンに絡んできた。


「こらぁ、坊主。楽しんでるかぁ。」


酒臭い息を吐きながら話しかけてきた。さすがにアルヴァンは鼻を抓んだ。


「見ろよ、勇者様の誕生だとよ。まだ、小さかったガキがもう立派になるんだから・・・ほんと・・・ぐふぅ。」


酔っぱらいはいきなり泣き始めた。


《なんだこいつ。情緒不安定か。》


「ひょろひょろで頼りないけどよぁ。それでも嫌なことも言わずに手伝ってくれるわで。それが勇者なんで。勇者なんで。」


《ダメだ、こいつ。正気を失っている。》


その様子を見ていたさらに酔っぱらいのおっさんが絡んできた。


「おいおい、ケインズ。お前、酒弱いんだからほどほどにしとけよ。ところでお前誰だ?」


アルヴァンは首をかしげてそのおっさんを見つめた。


「あぁ、ニーナの孫か。すまなかった。」


《誰だかわからないがまぁそれで。》


「まさか、レオが勇者になるとは思わなかったな。ただ、王都に行かせるのは少し引けるんだが。最近、勇者が魔物に狙われてるって話でレオもお国のために戦うことになるだろう。対抗策がない以上仕方がないができることならこの村にいてほしいんだが。そもそも、何の能力を持ってるのか分からないのに戦えるのかって話だが。」


《あいつ、レオっていうのか。》


アルヴァンは机にあった料理の乗った皿を手に取り外へ出て行った。誰もいない納屋の中で木箱の上に座り料理を食べながらシドに言った。


「さて、どうしようか。」


もぐもぐさせながら、シドはため息を吐いて言った。


「お行儀が悪いですよ。まぁいつもですけど。とりあえず・・・殺っときます?」


むしろ、その方がいいと思った。結局、このまま王都へ行ったところで戦うすべもない者が生きていけるわけもない。いきなり勇者だと言われて舞い上がっているが死に急いでいるだけにしか思えないのだった。


「正直、その方がいいかも。」


「ほう。珍しく意見が合いましたね。どういう風の吹き回しですか?」


「うるさい。まずは厄介払いをしないと。」


「そんなこと言わずまとめて始末すればいいのでは。」


「王都にはエネヴァーがいる可能性があって、かつ魔物と人間が癒着しているのであればまとめて始末すると明らかに怪しまれるし、こっちから宣戦布告しているもんだと。だから、あの詐欺集団はあいつらだけで王都へ戻らせる必要がある。そして、その後で勇者を殺せばいい。魔物に襲われたことにすれば不慮の事故として話が終わるだろう。」


「そんな回りくどい。うまくいきます?」


「まずはあの詐欺集団をうまく帰らせることからだ。」


アルヴァンは料理をたいらげた後で、詐欺集団が案内された部屋に忍び込みさらに夜が更けるのを待った。

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