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テト  作者: 安田丘矩
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やられたらやり返す。やり返されたら結構つらい

今年はかき氷を食べ損ねた。まだ、ギリ駆け込めば食べれそうだけどかき氷食べるのって勇気いる。

お腹の調子がいい時じゃないとさすがに食べるのきついかな。

子供の頃は好きだったのにあのシロップの正体をバラされたら・・・着色料。

けど、基本的に練乳しか食べていないんだけどね。

今のかき氷はアイス乗ってたり、トッピングされたりと食べ応えがありすぎる。

だから余計に食べれるのかお腹と相談する必要がある。

しょうがない、ならクレープで手をうっとくかな。


ロキは噛みついていた獣を触れて念じ始めると獣は溶けだして消えていった。


「なるほど、腐敗は効くようだ。そして、有機物を摂取したがるってことか。ところで、君はアルヴァン君ではないね。何者か。」


アルヴァンは何も答えなかった。


「そう・・・獲物としか見なされていないのか。ざんねんだな。」


ロキは右手を前に出した。何かを掴み持ち上げる動作をした。すると正面に扉が現れた。ロキはその扉をノックするとゆっくりと扉が開いた。扉が全て開けきったがそこには何もいない。


しかし、アルヴァンに異変が起きた。急に体全体が拘束された状態になり身動きが取れなくなった。力尽くで振り解こうとするがまったく抜け出せない。


「さてと、ようやく大人しくなってもらえそうだね。けど、テスカトリポカ様がやってきそうだな・・・どうしようかな。」


「おまえは一々語り掛けないと気が済まないようだな。だが、おまえは本当にとらえたつもりなのか?」


「なに?」


アルヴァンは急に嗚咽し始め、そして吐き出した。吐き出されたのはアルヴァンだった。消化液まみれになったアルヴァンは立ち上がりロキを指さした。


「おまえは自分の力を過信している。今からそれを分からせてやる。死霊のたむけ(メメントモリ)。」


アルヴァンが唱えるとロキの足元から多数の骨の腕が湧いてきた。そして、ロキを掴もうとした。ロキは上空へ移動して地面向かって轟く雷鳴サンダーボルトを放った。


「怨念のつらみ(フォエバーエバー)。」


アルヴァンは呪文を唱えるとロキを囲むように霊体が回り始め霊体の手がロキを掴もうとした。


「邪魔だ。失せろ。」


ロキは発光し霊体を浄化した。その隙にアルヴァンはロキの背後に回り込み呪文を唱えた。


「贖罪の日々(エンドレスナイト)。」


ロキは振り向き様に唖然とした。そして、黒い霧覆われて何も見えなくなった。


「ふふ・・・。フハハハハハ!まさか、自分の呪文でやられるとは思わなかった。そうか、これが追い込まれている感覚なのか。」


ロキはふと隣に何かいると思い横を見下ろした。そこには大きな葉っぱを頭に乗せて原色の布を継ぎ接ぎに縫い合わされた服を纏った魔人の少女だった。


「ロキは、楽しいの?もう、誰もいないのよ。」

少女はそのまま前方に歩き出して振り向き様に言った。


「きっとロキはこのままずっと一人なの。ロキはみんなを置いていくから、ずっと一人なの。それでも寂しくないんでしょ。寂しくないんでしょ。」


少女は黒い霧の中へ姿を消した。ロキは捨てたはずの記憶が頭のどこからか蘇り走馬灯が流れ始めた。苦い顔をしながら怒りをあらわにした。


「実に不愉快だ。」


「何を言っている。おまえも俺に見せただろ。どうして、他人の過去をえぐることがおまえに許されて、俺がダメなのか。少しは捨ててきた者たちのことを思い出した方がいいだろう。」


アルヴァンはロキの耳元でささやいた後すぐに姿が消えた。ロキは冷静になり目を閉じて両手を合わせて念じ始めた。目を閉じている間、人間の夫婦、長い角と嫌いな鱗をまとった馬、一輪の花をもち片目に包帯を巻いた少年、そして一冊の本。様々な声がロキの頭の中に語り掛けてくるがロキは強く念じ気を紛らわせた。突然、矢で打ち抜かれがロキは痛みにこらえながらも念じ続けた。


「お願い。もうやめて。どうしてなの?どうしてそこまでしてあなたは生き続けたいの?」


「うるさい!私はこの戦いを覇者になるために己を誇示し続ける。それが私の責務だ。」

ロキは女性の語り掛けに答えてしまった。


ロキはハッとして目を開けると目の前に泣き崩れる一人の女性がいた。


「ちが・・・違うんだ。私は・・。」


再びロキは矢に射抜かれ痛みを堪えた。ロキは頭を抱えうなされ始めた。息も荒くなり地面よりも遠くを見つめていた。


「これでおしまいかぁ。もう少し手ごたえがあると思っていたんだけど。」

アルヴァンはロキの横に現れ顔を覗き込んだ。


「それにしてもここまでの精神干渉は大したものだな。下手に抗えば逆に衰弱してしまう。おや?聞こえていないか。じゃあこのまま血抜きをしていただくとしよう。」

アルヴァンは腕を上に上げ手刀でロキの頭を堕とそうとした時、金切り音が鳴り響き一瞬世界が止まった。


アルヴァンは目を大きく見開き上に向けて閃光弾を放った。そして、黒い霧を抜けてそのままそこにいる何者かに思いっきり殴り掛かった。しかし、空振りし辺りを見渡すと少し離れたところにテスカトリポカがいた。


「おや、アルヴァン君か・・・いや違う。君は悪食だな。まさか、アルヴァン君の中で自身の意思を構築させて現れるとは。」


「俺を知っているようだが、おまえ何者だ?」


「生みの親の顔も知らぬか。我が名はテスカトリポカ。君を作り出したのは私だ。」


悪食は少し黙りこみテスカトリポカを見つめた。


「それにしても、あのロキ君をここまでいたぶるとは。凄まじい成長だね。これはアルヴァン君に宿した成果と言った方がいいものか。」


「俺はおまえを知らないし、生みの親だとも思えない。ただ、異質すぎるおまえの力を狂気に感じる。」


「それは世辞として捉えておこう。さて、悪食よ。その器の中では狭いだろう。私と共に世界を見にいかないか?」


「世界?」


「そうだ。私が混沌とした世界を広げ破壊とそのためだけの創造を繰り返すものだ。」


悪食は少し考えた後応えた。

「それは・・・楽しいのか?」


「あぁ楽しいさ。破壊だけ考えたなら、君は食べ放題だぞ。」


「食べ放題ね・・・。条件を出す。」


「何かね。」


「俺はおまえに忠誠など誓わない。お互い対等であることだ。」

テスカトリポカは少し悩んだ。


「警戒されているみたいだね。」


「私はこのアルヴァンの身体を通しておまえの異常さを理解した。私利私欲しか考えず必要に応じて切り捨て裏切る。そんな輩に対して簡単にイエスと答えると思うのか。むしろ、おまえが証明する方が先だろ。」


「忌憚なく厳しい意見だ。わかった。ただし、私の招集には応えて欲しいな。」


「気が向いたらな。」


「申し訳ないがロキを解放してもらえないか。」

悪食は指を鳴らすと黒い霧が晴れてロキは地面に倒れこんでいた。


「これはしばらくは目覚めないだろう。さて、一通り用は済んだが・・・まずは悪食をその身体から解放しようか。」


テスカトリポカは腕を交差させて呪文を念じながら振り払った。大気が揺れてその波動がアルヴァンの身体に伝わってくるそして、悪食はアルヴァンの身体から引きはがされた。テスカトリポカはアルヴァンを引き寄せて抱きかかえた。悪食は黒い靄の状態の姿をしていた。


「これで、信じてもらえたかな。能力の譲渡や引きはがしは主である私にしかできないから。」


「そんなことどうでもいい。これで俺はそいつの肉体から解放されたんだな。」


その時エネヴァーがテスカトリポカのそばにやって来た。

「テスカトリポカ様。終わりましたか?」


「あぁ、そして収穫もあったよ。けど、すまないな。君に着けていたロキはアルヴァン君・・・いや、悪食によって憔悴している。しばらく療養が必要だ。」


「あのロキ様がこの様ですか・・・悪食ってアルヴァンに与えていた能力なのでは。」


「そうだね。まさか能力自体が自我を持つなんて。けど、稀にあるみたいだから不思議でもない。忘れていた。君との約束を。盛大的に戴冠しなければな。」


「有難き幸せです。」

テスカトリポカとエネヴァーの話に割って空から声が聞こえた。


「おい、仕事は終わった。代価をよこせ。」

ずっと様子を見ていた審判の神がふてぶてしく言った。


それを聞いてテスカトリポカは舌打ちをした。テスカトリポカは女神の涙を審判の神に渡し帰ってもらった。


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