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テト  作者: 安田丘矩
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遅れてきたくせにヘラヘラしてるやつは許せない

歳を重ねると交流できる友達とかほんと少なくなります。

まぁ友達指で数える程度しかいないけど、それども長く続いているかな。

会える機会は少ないけど、次会った時何かしてあげたいとか手土産買って行こうとか。

けど、若い頃にできた交友関係は知らぬ間に全滅してしまったなぁ。

なんだろう、映画のスタンドバイミーみたいな感じになってしまった。

心の距離が離れてしまったのもあるけど、互いの価値観のアンマッチも一つかな。

あの時はこどもだった、みたいなことで片づけるのは簡単だけど、

関係性とか変わって行けば自分が割りこめる場所もなくなるわけだな。

少し寂しいけどもう風化したことをネチネチと思い返さないかな。


塔の上では連れてこられたレオとテスカトリポカ、そしてディオがいた。レオは気持ちを落ち着かせることに精一杯だった。自分の能力と関係がありここに連れて来られたことは分かっているがこの状況を見る限り一体どういうことなのか見当もつかなかった。


「さて、レオ君はなぜここに連れて来られたのか分かるかい。」

テスカトリポカはレオに尋ねた。


「いいえ・・・まったく。そもそも、お前こそ何者なんだ。」


「そうか、自己紹介がまだだったね。私はテスカトリポカ。この世界を統べる神だ。」


「その神様がこの町を襲うのか?」


「私が手を下しているわけではない。下しているのはそこに居る魔王の部下たちだ。私はそれを含めて清算しに来ただけだ。」


「おかしいだろ。神様が魔王と一緒に居るなんて。この世界を統べるものなら均衡を保つことを考えるだろう。」


「そうだ、これも均衡を保つ一つだよ。創造されたものはいつか終わる。それは、戦争だったり、侵略だったり、天災だったり。君たちも言い伝えられたり、史記などで知っているだろう。」


「だとしたら、お前は意図的に終わらせているのか。」


「まぁそうなるな。」


「そんなことって。人間をなんだと思っているんだ!」

レオは怒った。


「そうだな・・・じゃあ君は神をなんだと思っているんだ?信仰するは自由だ。けれど、自分たちの幸せになることしか考えずどこかで苦しむ人のことなど考えていない。その人間を守るのは神の役目というのか?なんて都合のいい事だろうか。」


「そんなことない。」

「生き物なんて命の奪い合いだろ。そして、それは人間だって例外ではない。現に人間同士で争った歴史もあっただろう。私は確かにこの世界に干渉することはある。けれども、それは一つの間引きだ。」


「そうか・・・ならいい。俺はそんなの間違っている。それで十分だ。」

レオは鞘から剣を抜き構えた。


「ほう、英雄気取りの君に何ができる。」


レオは目を閉じて、今目の前にいるテスカトリポカをイメージして剣を左側に上げそのまま右斜めに切る。そして、再び目を開けるとテスカトリポカは切られ出血していた。


「神に刃を向ける人間が居るとは。なんて威勢のいいことだろうか。」

テスカトリポカは特に痛がる様子もなく傷口に手をやり呪文を唱えると傷口がふさがり元に戻った。

「ディオ君の能力と同じだったね。まだ完璧には使いこなせていないが。」


レオは再び剣を構え警戒した。するとそこへエネヴァーが戻ってきた。


「遅くなりました。テスカトリポカ様。」


「人間の小娘に一杯食わされるとは。」


「アルヴァンがあの娘に何やら対抗手段を持たせていたようで・・。」

エネヴァーは苦い顔をした。


「現状協力関係ではあるが、私の力のが及んでいる以上は従ってもらうよ。」

テスカポリカはエネヴァーに念押しした。

「それに儀式の準備は整った。少々トラブルもあったがそこに依り代もいる。」


「何を言っているか分からない。」

レオは話に割って入った。


「おや?アルヴァン君から何も聞いていなかったのか?」


「アルヴァン?そんな奴知らない。」


「おかしいな。そばにいたんじゃないのか?」


「そばにって・・。」

レオの脳裏に一匹の魔物の姿が浮かんだ。


「君は品格者として見出され旅をはじめ、その魔物と共にこの町にたどり着いた。言っておくが君は品格者でもない。まぁ流れ星に乗っていたから品格者と見なされてもおかしくなかっただろう。君の能力はそこに居る魔王の能力だ。そもそも、品格者の能力は余興に過ぎず、君がその能力を使って騒がれ、ベルリッツ王国で英雄気取りからの崩落のシナリオを考えていたんが・・・。まさか、アルヴァン君が先に接触して連れて行ってしまったからね。せっかく用意した台本が台無しになった。」


レオは心の中でやっぱりあいつだったんだと悟った。


「そもそも、アルヴァン君はそこに居る魔王の手下だ。そして、魔王は『品格者を殺せ。』と命じている。君も例外ではなかった。」


レオには思い当たる節があった。あいつと最初に出会ったとき首に痛みを感じた時、近くにいた。そして、ここまで飛ばされてから魔物に襲われたり、ドラゴンのいるエンボス山まで連れて来られたり。けれど、助けられたこともあった。テスカトリポカが騙そうとしているのか。本当に事実ならあいつはどうして今まで・・・。


「さてお話はここまでにしよう。いい加減、儀式を始めないと審判の神が帰ってしまう。」


審判の神は空の切れ目から無表情でこちらを見ていた。

「さっさと契りを述べよ。こんなに待たせておいて、タダとは言わせないぞ。」

審判の神は怒っていた。


「すまないね。あまりにお遊びが過ぎたもので。」


「御託はいい。さっさとしろ。」


テスカトリポカは少しムッとしながらも契りを述べた。

「テスカトリポカとディオクレイシスとの契り。テスカトリポカはディオクレイシスを人間に戻す。テスカトリポカの指定したゲームは依り代と鏡を約束の日までに手にすること。もし、手にすることができなければその身体をテスカトリポカに渡す。」


レオはただこの異様な光景をただ黙って見ていることしかできなかった。


「受諾者よ。依り代と鏡はどこに。」


審判の神はディオに問いかけディオは静かに応えた。

「依り代はそこに居る青年です。そして、鏡はこの手にはありません。」


「この契りによりディオクレイシスはゲームをクリアならず。よって、テスカトリポカはディオクレイシスの身体へ受け渡す。」


審判の神は両手を合わせ念じた後円を描くように手を回した。すると、そこに大きな鐘が出現した。審判の神はその鐘を鳴らし始めると辺りにその鐘の音が響き、ディオの身体の周りが光りはじめ、そして魂と肉体が引き離されていく。ディオはそれを受け入れ目を閉じていた。


すると突然、鐘に巨大な光の矢が辺り審判の神から鐘が離れ、大きな音をたてながら遠くへと吹き飛ばされた。結局、儀式が中途半端になってしまい審判の神は無表情で言った。

「俺・・・帰るわ。」


審判の神は興ざめてしまい空の切れ目を閉ざそうとした。


「待て!審判の神よ。まだ終わっていない。」

テスカポリカは審判の神を呼び止めた。


「待たされた挙句に鐘が吹き飛ばされたんだが。おまえらふざけているだろ。」


「これはアクシデントだ。それに、神聖な儀式を妨害されたんだぞ。貴殿こそ冒涜した者に裁きをあたえないのか?それが審判を司る神ではないのか。」


審判の神は少し考えた。そして、

「確かに。」


テスカポリカは悟った。名ばかりの神ほど特に仕事していないと。



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