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テト  作者: 安田丘矩
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必殺技は最後まで取っとかないと

何か新しいことを始めたいと思っていても中々始められない。

はじめて見ても3日坊主で終わったりするから結局続けられない。

これは時間にゆとりは必要だと思うけど、一番にそれを続けられるのか。

はじめたことを習慣として継続できることが大切なんだと思う。

とはいえ、始めたことを継続できるって中々難しいのかと。

相性とか適正とかあるからそういうのってわりと根気も必要なのかな。

私の場合、水泳をもう何十年も続けているけど正直好きか嫌いかと言えばそこまで。

なんだろう、もうライフスタイルの一部としてあるから歯を磨くくらいの感覚になってる。

ただ、こういう場合極めたいとか上手くなりたいとかとは違うから高見はない。

もっと、クリエイティブなことをやってみたいのだが・・。

ハートロックは何もせずこちらに出方を伺っていたがあきれた様子で言った。

「ふざけているのか、単にバカなのかよく分からないのですが。」


それを聞いて弟者が言った。

「堅物には分からないのか?この聡明さを。」


兄者が納得した面持ちで頷いていた。


ハートロックはシドに言った。

「おい、おまえの助っ人はこんなやつばかりなのか?」


敵に心配されてシドは目を逸らした。


「シドさん、大丈夫だ。もう決着はついている。」

兄者が自信満々に言った。


「シドさん、兄者がそういうんだから間違いない。」

弟者がガッツポーズをした。


「あっ・・・はい。」

シドはもう見ていられなかった。


ハートロックは兄者と弟者が盛り上がっているのをよそに再び雄黄を飛ばしてきた。


今度は弟者が前に出て腰を落として息を整えてそして、勢いよく

「せいやぁああああ!!!(一拳入魂)。」

と大声を上げた。


突きあげた衝撃波が発生し石ごとハートロックに飛ばしハートロックの周りに粉塵が舞った。しかし、ハートロックには効いていないようだった。


「弟者。かっこよかったぞ。」

兄者は軽く拍手した。


「もう少し、キレを出したかった。」

弟者はなぜか悔しそうだった。


「さすがにあなたたちのおふざけに付き合っていられませんね。」


ハートロックは自分の周りを浮遊する石のいくつかを兄者と弟者に飛ばした。その石たちはキラキラと色とりどりに光り、兄者と弟者の周りを回り始めた。


「兄者。綺麗だな。」

弟者が見惚れている。


「そうだな。一個もらっていきたいな。」

兄者その石を掴もうとした。


「あの・・・兄者さんと弟者さん。聞いていただけます。あなたたちこのままだと結晶になりますけど。」

シドは遠くから声をかけた。


「なんだって!俺ら結晶になるんだってよ、弟者。」

兄者は言った。


「そうなのか。こんな石みたいに綺麗になれるのか?」

弟者はなぜか喜んでいる。


ハートロックは遠くに離れたシドに向かって話しかけた。

「こいつら、大丈夫か?」


シドは応えた。

「もう・・・好きにしてください。」


それを聞いて兄者と弟者はシドに文句を言った。

「ちょっと!シドさん。それはないわ。」


「シドさん。俺らはいつだって真面目だぞ。」


「お二人とも緊張感と危機感が無さ過ぎて庇いきれないんです。今までどうやって生きてきたのか疑わしいです。」

シドはため息をついた。


「今までは・・・主人の命令に従ってたしな。」

兄者が弟者を見て言った。


「そうだな。従者に従うのが召喚されたものの役目だ。」

弟者は頷きながら言った。


「いや、このまま死にますよ。」

シドは呆れながら言った。


「それは困る。」

二人一緒に言った。


「仕方ない。本気を出さないとな。」


「そうだな、兄者。かっこいいとこ見せないとな。」


兄者は思いっきり手を叩いた。すると、周りの石の動きがゆっくりになり弟者がさらに手を叩くと石が一瞬止まった。兄者と弟者は揃って手を腰の位置に当て、腰を低く落とし正面に右手中段突き、次に左手中段突きと3回ほど続けた後で腕を交差させて再び腰の位置に手を戻し目を閉じた。


「何をしようとしても無駄ですよ。これで終わりにします。『永久にこのままで(クリスタルベール)』」


石たちがさらに強い光を帯びて兄者と弟者に襲い掛かった。しかし、兄者と弟者の姿は消えた。一瞬の出来事にハートロックは困惑した。


「なっ!どこへ行った?」


シドも完全に二人を見失ってしまった。


突然どこからか太鼓の音が鳴り響き、『ドン、ドン、ドン。ドドン、ド、ドン。』とリズムを取っている。そして、兄者はハートロックの右側に現れ、弟者は左側に現れた。何かの武術の型なのか太鼓のリズムに合わせて舞っている。


「いつの間に。ふざけるのもいい加減にしなさい。」


ハートロックは複数の石を飛ばし始めたがその石をリズムを崩すことなく拳と蹴りで吹き飛ばし二人は何事もなかったように集中し舞っている。


「これは一体。」

シドもさっきまでのふざけた兄者と弟者とは違う状況に動揺していた。


そして、太鼓の音が止まり、兄者と弟者はハートロックのいる方向で構えた。そして、


「せいやぁああ!」

二人揃って声をあげて右手正拳突きをすると、ハートロックはダメージを受けた。


「そいやぁああ!」

今度は左手正拳突きと再びハートロックはダメージを受けて少しひびが入った。


「なんだ。一体どうなっているんだ。どうして、当たってもいないのにダメージを受ける。」


兄者と弟者はなぜかハートロックに背を向けそのまま不動立ち。一歩前に中段突き、後方払いからの後屈立ち内受け、上段上追い突き、前屈中段追い突き、そして再び後方へ払い。


二人が演舞している最中ハートロックは二人に石を飛ばした。


「小癪な真似を。トルマリン、動きを止めろ。」


石は放電し始め兄者と弟者を襲ったが二人はびくともしない。そして演舞を止めて不動立した。二人は再びハートロックの方を向いて雄叫びを上げた。


「炎舞!闘拳爛漫!!!」


二人の燃え上がりそしてハートロックへとものすごい勢いで走り出した。


「無駄です。ロンズデーライト、我の盾になれ。」


石はハートロックを覆うように盾になった。兄者と弟者はその盾を拳で突き続け、次第に石にも耐えきれず亀裂が入り割れた。


「円炎回天!せい!はぁああああ!!!」


掛け声共に二人の拳は盾を砕きそして、その奥のハートロックに届き、見事に拳が直撃した。ハートロックは二つに割れて地面に落ちた。


二人は互いに背を向けて立ち

「ありがとうございました!」

と一礼し燃え盛っていて炎は治まった。


「・・・。えっと・・お強いのですね。」

シドは言葉を選び何とか絞り出して二人に伝えた。


「よせよ。照れるじゃねぇか。」

兄者が言った。


「そうさ。俺らは最強だぞ。」

弟者が言った。


「そうですね・・・。」

シドはもう何も言い返さなかった。


「おう!そうだ!」

兄者はハートロックの残骸に近づき持ち上げシドの下に運んだ。

「さぁ、これで体力回復だ。」


「いや、もう死んでます。」


「兄者。やりすぎちゃったな。」

弟者が言った。


「そうだな。久しぶりに演舞すると我を忘れてします。」

兄者が困った顔をした。


「周りの石にはまだ魔力が宿っていると思うのでそれから吸収します。」


「そうか。じゃあ集めてこよう。」

兄者と弟者は散らばった石を回収し始めた。


「最初からその力を使っていればよかったのに。」

シドはボソッと口にした。



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