食べてるときが一番の幸せです。
最近、野菜が高い。全体的にだけどまぁ葉物がね。白菜、キャベツ、レタス。
年明けてからは少しは価格が下がったけど、白菜750円、キャベツ400円、ブロッコリー350円。
極めつけはイチゴ。1000円!
ただでさえ、野菜不足やなんやら言っているのに野菜がこんなに高くなるとね・・・。
少しでもお買い得なものを買おうと農協へ走っても皆考えることは同じ。
去年は暑すぎた影響もあってそのしわ寄せが今になってきてるけど来年もこんな感じかな。
かと言って、ハウス栽培でも燃料や肥料などの価格が上がっているため値上がる一方。
改めて第一次産業なしでは生きていけませんね(汗
トニーが寝静まった後で、シドが影から出てきてアルヴァンに言った。
「どう思いますか。」
「癒着しているってこと。」
「人間は魔物を敵視しているのでは。アルヴァン様は例外みたいですが。」
「なぜ、俺だけ?まぁいいや、正しくないことだろうとずる賢いものが支配していく形はよくあることだろ。それがどんな形であれ結果的に問題なければ癒着しても問題ない。それが人間じゃないか。けど、そいつらは自分の利得しか考えないからたち悪いがな。」
「ということは、品格者がどちらからも狙われている。そういうことをおっしゃりたいんですね。」
「誰だろうね。そんなこと考える魔物は。」
頭の中に思い描いた顔。あいつなんだろうな。アルヴァンは心底あいつのやり方を憎んだ。ただ、この合理的なやり方なら討伐もたやすい。先を越されてしまうのか。
「アルヴァン様。このまま王都に近辺に入ったら戦闘は避けられません。品格者だけでなく同朋ともども。」
「人間を脅かすどころか、魔物すら脅かされている。これは終わるのか。」
「そう言えば、王への挑戦権も品格者の討伐数によるものなのか、討伐した実力なのか。そもそも、誰が判断するんですか?王が不在ですし。」
「さぁ分からない。最後の一匹になるまで殺しあえばいいのかな。」
「じゃあ、アルヴァン様はできるんですか。」
「そいうの苦手。」
「でしょうね。同族同士でやりあうのも気が引けますね。」
「王都を目指すことに変わりはない。いずれは行かないといけない場所だから。」
シドは何も言わず影の中に戻っていった。
夜が更けて森の中はさすがに冷え込む。そして、森の奥の方から何かの唸る声がこの周囲に緊張を走らせる。そんな中でもトニーは普通に眠っている。人間は魔物除けの香を焚いたり、匂い袋を持って行くことで遭遇を避けている。トニーも匂い袋を持っておりアルヴァンは正直この臭いは鼻にツンと抜ける匂いがして得意じゃないが別に不快には思わなかった。たぶん、トニーはこの匂いに逃げなかったアルヴァンを魔物とは思わなかったのだろう。だとしてもこんなに落ち着いて眠っていられるトニーにアルヴァンは近づき、鼻を抓んでみた。いびきをかいていた顔が少し苦しそうになり、離すと咳ばらいをした後でまた穏やかな顔に戻った。
《変な顔。》アルヴァンは楽しそうだった。
翌日、森の中を東へ歩き続けトニーと一緒に森を抜けた。トニーの家はこの先にある村の外れにあるそうなのでついでに立ち寄ることにした。広い小川が家の横を流れ、水車が水をくみ上げている。一本のホウノキが敷地の隅に佇み、藍色の大きな一枚の布が風になびいている。家の様子は少し屋根に痛みがあるものの修繕した跡があり軒には口が広い大きな瓶が置いてある。
家の中へ入ると窯で染料を煮だしているトニーの母親が椅子に座っていた。
「お帰りトニー。おや、その子は誰だい?」
「森を探索してた時に出会った魔物だよ。一緒に森を出てきたんだい。」
トニーの母親は驚いた様子でアルヴァンに近づいてきた。
「魔物だって?それにしちゃ優しそうな成をしているね。」
《なんだこのばばあ。いきなり。》アルヴァンは不満そうにトニーの母親を見た。
「まぁここらへんじゃ見ない魔物だし、それに僕らの言葉や行動が分かるみたいなんだ。とても賢いみたい。」
《なんかさっきからバカにされてないか。》今度はトニーを見ながら訴えた。するとトニーはニコッとしてアルヴァンの頭を撫でた。アルヴァンはムッとした。
「そうなのかい。まぁ害はなさそうだけど、どうして家に。」
「家を見てみたいんだって。」
《違う。食い物をよこせ。》
「へぇー。物好きな魔物もいるもんだね。」
トニーは家の中を案内した。たくさんの種類の木の根や乾燥した植物、土や砕いた石などの材料、染料置き場や染め出し釜、模様をつける木でできた型などごちゃごちゃしている。 トニーは一枚の布を取り出し、花の模様が付いた型に糊をつけて乾いた後で直接淡い桃色の染料で染め上げた。染料から上げると桃色の布に型に付いた花の模様が浮かび上がっていた。一通り見た後で、トニーとアルヴァンは食卓の椅子に座りトニーの母親はお茶とパウンドケーキを出してくれた。アルヴァンは迷いなく一切れ取り丸ごと口に入れた。その様子をトニーとトニーの母親は微笑ましくアルヴァンを見ていた。木のカップには塩味の野菜を煮込んだスープが入っていてアルヴァンは両手で持ち少しずつ啜って飲んでいった。
「なんだろうね。不思議と穏やかになるね。」
「そうだろう。安心するというか、うれしくなるかな。」
アルヴァンは夢中になって食べているので二人のやり取りは聞いていなかった。
「昔、ひいばあさんが言ってた子供の頃に出会った魔物みたいだね。その魔物ね、納屋に隠れてパンを盗み食いしてたんだよ。けど、憎めなかったのよね。こうやって美味しそうに食べてたって。盗みはダメだから、代わりに自分のおやつを半分こして一緒に食べたんだって。その頃はおまじないが流行っていたから、その魔物に『きっとあなたは幸福をもたらす魔物なのよ』って唱えたそうよ。伝わったのかは分からないけどその魔物はおやつを食べるなりどこかへ行ってしまたって。ひいばあさんが嬉しそうに話すからずっと忘れずにいたんだけど・・・もしかしたらおまえさんなのかもしれないね。」
二人の目線に気づいたアルヴァンは二人の顔を見た。二人が嬉しそうにしている姿を見て
《なんか気が散るな。》とアルヴァンはパウンドケーキを二切れ持って椅子からおりて外へ出て行った。二人はアルヴァンの後を追うとアルヴァンはホウノキを背もたれにしてパウンドケーキを食べていた。二人は顔を見合い笑った。
アルヴァンはおやつを食べ終えると立ち上がりトニーを探した。トニーは家の中で採取してきた染料の材料をリュックから出しているところだった。アルヴァンはトニーの背中を指でつつきトニーは気づいて振り向いた。
「どうしたんだい?」
アルヴァンは外を指さして手を振った。
「もしかして行くのかい?」
アルヴァンは頷いた。
「気が済むまで居てくれてもいいんだけど。」
《さすがにそれは嫌だ。こんなにニヤニヤして見られてちゃ落ち着かない。》アルヴァンは目で訴えた。その訴えが伝わるわけでもないがトニーはパウンドケーキを朴葉の大きな葉で包みアルヴァンに手渡した。
「また会いに来てくれるかい。」
アルヴァンは少し考えた。
《会いたいような、会いたくないような・・・おやつが美味しかったから思い出したらまた来る。》と思い頷いた。トニーは微笑んだ。そして、二人に見送られながらアルヴァンはこの先の高原へと歩き出した。