何気ないことで誰かの助けになっているなら
先日、赤とんぼが車のフロントのところに挟まって身動きが取れなくなっていました
まだまだ、暑いけれども秋に近づいているんだと感じつつ、おまえここにどうやって入ったの?
と思いつつ救出して空に還して上げました。
家の庭では結構シオカラトンボ、イトトンボがいるんだけれども、
ここ数年で近所にギンヤンマを見ることが多くなった
これは温暖化?それとも生息区域が変わったのか。
とはいえ、トンボは羽虫やハチを食べてくれるのでありがたい。
一つ気になるのはどうしてトンボは英語でドラゴンフライなのか?
どう見てもドラゴンフライって感じじゃないと思う。
なにかの史実や伝説になぞらえているのだろうか、博識なくてごめん。
アルヴァンがテスターさんのウサギ小屋に着いた時、テスターさんたちや避難してきた町人は見受けられたがすでにレオの姿はなかった。
アルヴァンの存在に気づいたユリアがカイノスを抱きかかえながら近づいてきた。
「アルヴァンさん!大変なの!レオさんが!レオさんが!」
「遅かったか。ユリア、何があった。」
ユリアはアルヴァンが来る前に何があったのか話し始めた。
今から30分前のこと。アルヴァンの指示通りにウサギ小屋で身を潜めて避難していた。レオとユリア、そして赤子のカイノスはテスターさんたちも含めここまで逃げてきた町人と共に隠れていたがウサギ小屋の外から鳴き声が聞こえた。
皆警戒して息をのんだ。すると、豹の仮面を被った何者かがウサギの耳を持ち中へ入ってきた。
「まさか、こんな可愛らしいウサギに攻撃されるとは思わなかった。」
ウサギは必死に抵抗している。その者はうさぎの喉元を掴みそしてそのまま握りつぶした。ウサギはぐったりとして動かなくなりその者はそのままウサギを手放した。そこに居た全員は声も出せずただ、その光景を見て死の文字が頭をよぎっていた。レオはユリアの前に出てその者を警戒した。
「さて、ここに強い能力を持つ人間がいると聞く。出て来てくれたまえ。」
その言い様に皆レオを見た。レオも自分のことだと思い立ち上がりその者に近づいて行った。
「潔く出て来てくれてありがとう。申し遅れた、私はテスカトリポカという。君に用があってここに来た。一緒に来てもらおう。」
レオは周りを見ながら覚悟を決め言った。
「わかった。その代わり、ここの人たちに手を出すな。」
「手を出すなって言われても、ここには魔物を寄せ付けない細工がいくつかしてあるから、出したくても出せないと思うが。まぁ私は別だけれども。」
「レオさん!言ってはダメ。これは明らかに罠です。」
ユリアは咄嗟に声をあげた。
「ユリアさん。俺はあなたを守ると誓ったんだ。心配しないで。」
レオの言葉にテスカトリポカは感銘を受けて言った。
「ほう、なんと勇ましい。わかった。ここの者たちには手を出さないでおこう。」
「本当だな。」
「あぁ、約束だ。」
レオはそのままテスカトリポカについて行ってしまった。
「どうしよう!アルヴァンさん!私たちのためにレオさんが犠牲に・・・。」
「テスカトリポカめ。さすがに神までは欺けなかったか。」
「アルヴァンさん、そのテスカトリポカを知ってたの?」
「イレイアの件もベルリッツ王国の件も、そして、スターフィッシュの正体はあいつだ。」
「そんな・・・どうして!黙っていたんですか!」
「あいつは神だぞ。そんな奴が敵だって言ったら、人間に何かできたのかよ。」
「けど、そんなことって・・・。」
「ユリア、これ以上お前に何もしてやれないだろう。だから、せめて生きてくれ。」
「それはどういう意味ですか。」
「そのまんまの意味だ。おれはテスカトリポカを追いかける。そんで、ここに俺の仲間を応援に寄こすからそれまで身を潜めてろ。分かったな。」
「レオさんを・・レオさんを助けて!」
アルヴァンは何も答えずウサギ小屋を出てテスカトリポカが作った塔へと向かって行った。
その一方で町の西側に設けられた避難所の近くでは魔物との交戦が続けられ、避難してきたアルマとカトレアがいた。先ほど、ガトレーを亡くし二人とも避難所の入り口の近くで顔を伏せていた。昨日まで平穏だった町が地獄と化して人が死に魔物との戦いの舞台になるとは思いもしなかった。
もちろん、イレイア自体に首謀者エネヴァーが侵略を企んでいることの通達があったがまさか急にこんなことが起きるなんて、二人の気持ちはぐしゃぐしゃだった。
避難所の中は泣きわめく声や祈る声、そして怒号がうるさいくらいに耳に伝わってくる。これでは外と大差ないほどだった。
すると避難所に向かってくる明らかに他の魔物とは違う何かがやってきていた。その存在に気づき冒険者や警備隊が立ち向かっては一撃で殺められていた。そいつはエネヴァーだった。アルマとカトレアはその光景を見ながらも立ち上がり身構えた。
「カトレア、身体強化をかけてくれ。」
「戦うのね。」
「もう、考えられないんだ。ただ、ここで何もしなかったら本当に終わりそうで怖い。」
「そうね。どうせ死ぬくらいなら、足掻いてみるしかないわね。」
カトレアはアルマに身体強化をかけた。そして、アルマは目を閉じて、気を落ち着かせ一気にエネヴァーの間合いまで入った。振り上げた剣はエネヴァーの右腕を切り裂いた。そして、同時にアルマの右腕も切り落ちた。
「うぼぉおおえおお!!」
アルマは激痛に大声をあげた。
「なかなかいい攻撃でしたよ。人間にしては。けれども、油断してダメですね。それでは剣も持てませんよ。」
エネヴァーは切り落とされた自身の腕を取りそのままつなげた。切り裂いたはずの腕はくっついて指さえ動いていた。
「今忙しいので用が済んだら最後まで戦いましょうか。」
エネヴァーはアルマに言い残して避難所に近づいて行った。道を遮るものは次々に殺されついにカトレアの前にやって来た。
「おや、可愛らしいお嬢さんも戦っているのですね。人間はそこまで人手不足なのでしょうか。」
カトレアはあまりの恐怖に何も言い出せなかった。
「かわいそうにこんなに震えて私が安息を差し上げよう。」
エネヴァーがカトレアの頬に手を伸ばした。
「いやぁあああ!!!」
カトレアは悲鳴をあげた。
その瞬間、胸のあたりが光り出しその光はエネヴァーを襲った。エネヴァーはその光を受けて顔面が解け始めた。
「おい・・・娘!その光はなんだ!!どうして、あの忌々しいアルヴァンの魔力を感じるのだ!!!」
カトレアはアルヴァンに加工してもらった魔獣の角のペンダントを持っていた。アルヴァンは知らなかったが、魔獣の角に魔力を込めて加工するとその魔力を込めた者の魔力を付与し続ける。そして、その魔力は装備している本人の意思によって反応する。
カトレアはエネヴァーを拒絶したことによってペンダントの効果が発動したのだった。エネヴァーはカトレアに攻撃を繰り出そうとすると余計にペンダントは反応し続けた。
エネヴァーは後退して息を荒げた。
「小娘だと侮っていました。もう容赦しませんよ。」
エネヴァーは片手を上にあげて魔力を練り始めた。
すると、その横に突然豹の仮面を被ったものが現れた。
「見つけましたよ。すぐに戻ってください。」
その者はエネヴァーに言った。
「しかし、テスカトリポカ様。ここでこの者を喰いとめねば。」
「私の言うことが聞けないのですか?そんなの約束の日の後にしなさい。」
渋々、エネヴァーは魔力を練るのをやめてその者と一緒に消えていった。カトレアはその場に尻もちをついて脱力した。
そして、胸元のペンダントを手に取り言った。
「テトさん・・・テトさん、ありがとう。」
カトレアは思わず涙が溢れた。少しして涙をぬぐい再び立ち上がり苦痛に耐えるアルマに歩み寄って行った。