戦いの最中に目を逸らさないで
最近、一週間が長く感じる。それと、お盆って2,3週間前のはずなのにもう半年くらい経った気分。
それは、一日一にをしっかり生きているということなのか、単純に感じ方の問題なのか。
似たようなことで言えば音楽番組で懐かしの曲と共に何年のランキングとか発売とか見ると
「えぇ!もうそんなに経ったっけぇ!」とか時間の感覚がバグる。
先日、年末の旅行の話をしましたがこの件に関しても年末までまだ先だなって思ってしまう。
けれども、もう半年切っているという不思議。
これは、今の生活がそれほど充実していいないということなのでしょうか。
やだなぁ。もっと、充実して時間を有意義に使いたいんだけど。
アルヴァンは突如現れた嫌な気配の方へ向かっていると空が騒がしくなっていることに気づいた。ふと空を見上げるとドラゴンたちが駆けつけて両翼を持つ魔物を蹴散らしていた。
一安心もさながら、向かっている道中には逃げ惑う人々を誘導するようにモッフィーが後ろについて避難していた。途中で取り残された人間の身代わりになったのだろうか敵の魔物に食べられている姿もあった。アルヴァンは止まった。視線の先に魔物が人間の腹を裂きながら臓器を一つ一つ取り出し鑑賞していた。
そして、その人間は
「ゴーダン・・・。」
その声に気づいてその魔物は気づいた。アルヴァンはこいつを知っていた。
「カタギリ、お前も来てたんだな。」
カタギリは魔王の幹部だった魔物だ。体は羽毛に覆われてフクロウのような顔立ちをしている。
目をぎょろぎょろさせてアルヴァンを見つめ言った。
「ほっほ。アルヴァンか、元気に走っているな。」
「その人間どうした。」
「あぁこれか。もちろん殺したさ。そして、今は臓物の確認中だ。今度魔界で個展を開催するために材料が必要なのだよ。今日ここに来たのはエネヴァーから新鮮な人間が手に入ると聞いてな。」
「お前はそういう奴だったな。」
「なんだ、この人間は知り合いだったか。安心しろ。私の作品として永遠に生き続ける。」
「何も残らないさ。だって、ここで俺がお前を殺る。」
「エネヴァーと敵対していることは聞いていたがここで同士討ちをすることになるとは。」
カタギリはアルヴァンの右上に移動してきた。アルヴァンは態勢を低くして右腕を大きく振り上げ斬撃を放った。その攻撃を読みカタギリは今度はアルヴァンの左側へと避けた。
「そんなでかい図体でどうしてそんなに機敏に動けるかな。」
アルヴァンは身構えながら両手に魔力を込め始めた。
「君に褒めてもらえるなんて嬉しいよ。ただ、見た目だけで判断されてはね。」
カタギリは円を描くように手を回し始めた。そして、手の甲同士を合わせて呪文を唱えた。
「『枯葉』。」
カタギリの姿は枯葉に変わり、アルヴァンの周りに枯葉が舞い始めたがアルヴァンは何もせずじっと身構えた。
「そうだよね。この能力知ってるのか。」
「あぁ。この枯葉は幻影だけれども触れると魔力が奪われる。その枯葉に紛れているお前が不意打ちを喰らわせてくる。」
「ネタバレが過ぎるよ。まぁ大体あってるけどね。けど、君はこの状況をどう打破するの?」
「そんなの簡単だ。」
アルヴァンは空を見上げて大きな声で叫んだ。
「おぉおおおおおいいいいいぃ!!!フィンクス!!!ここにブレスをはけぇえええ!」
すると上空に一頭のドラゴンがアルヴァンたちに向かってありったけの火のブレスを吐いた。さすがにカタギリは下がることしかできずに後退した。
「なんと、上のドラゴンは君の仲間でしたか。それにしてもやることがぶっ飛んでますね。」
ブレスが収まるとそこにアルヴァンの姿がなくなっていた。
「おや、ブレスに焼かれましたか?捨て身なことを。無茶なことをするからこんなことに。」
カタギリが正面に視線が向いている瞬間、アルヴァンはカタギリのちょうど前の地面から飛び出し魔力を込めた拳を腹溝に殴りつけた。会心の一撃を喰らったカタギリは後方へと思いっきり吹っ飛ばされた。
アルヴァンは土を払いカタギリの吹っ飛ばされた方を見て言った。
「お前は一々御託が多いんだよ。」
上空から舞う風の流れを感じ見上げるとフィンクスがアルヴァンのそばの地上に降りてきた。
「おぉ、急に頼まれたからびっくりしたぞ。あれでよかったのか。」
フィンクスはアルヴァンに聞いた。
「ばっちしだ。あいつは幻惑使いなんだ。だから、基本的に能力は一対一の時でしか強くない。ここで第三者の攻撃があると一度幻惑が解けて対象者を見失うんだ。」
「ほぉ、間抜け面の割にはちゃんと考えて戦っていたのだな。」
「一言余計だ。」
ちょうどそこへタクトマスターと兄者と弟者が現れた。
「ほう、まだ生きておったか。」
タクトマスターは嫌味ったらしく言った。
「じじいになるとこうも性格捻じ曲がるのはなんでなんだ。」
アルヴァンは首を傾げた。
「主人はただのツンデレなんだと思う。」
兄者が言った。
「主人の言う嫌味は基本誉め言葉だ。」
弟者が言った。
「おまえら余計なことを言うでない!」
タクトマスターは兄者と弟者に怒った。
「アルヴァン、こいつらは誰だ?」
フィンクスがアルヴァンに尋ねた。
「あぁこれは古の魔物のタクトマスター・・・様とその召喚魔物の兄者と弟者だ。」
「なんで今間があった?」
タクトマスターは気にくわなかった。
「ドラゴンはじめて見た。」
兄者が言った。
「ドラゴンって大きいんだな。」
弟者が言った。
「いや、おぬしらも相当大きいと思うのだが。」
フィンクスは困惑した。
それもそのはず、大きさ的に兄者と弟者はフィンクスと変わらなかった。
「そうなのか?」
兄者が弟者に聞いた。
「世間常識を知らないから難しい。」
弟者が困った。
「お前らは話を広げるでない。時にアルヴァン、お前とんでもない奴が参戦しとったぞ。」
タクトマスターはアルヴァンに言った。
「とんでもない奴?さっきの嫌な気配か!」
「最初、グラッツに止めを刺そうとしたらエネヴァーという魔物が現れてな。そいつを依り代にしてなんと古の魔物のロキがおったんじゃ。」
「・・・エネヴァーが依り代になってロキ?」
アルヴァンは少し考えた。
「ロキの力を得る代わりに身体を共有しているようじゃな。」
「そいつって強い?」
「強いも何も、今のワシで五分五分だな。」
「マジかよ。」
「ちょっと・・・無視ですか・・。」
その声に振り返ると痛手を喰らったカタギリが立っていた。