あれから一年がたったんですね
インフルエンザが流行していますね。皆さん大丈夫ですか?
予防接種を受けたけど、あれってその型のワクチンじゃないと意味がないような。
ワクチン接種したところで重症化しないだけであって罹っている状態にはなる。
現に自分インフルエンザ無症状でなったことあるので正直一番このタイプがやばいのでは・・・。
インフルエンザは重症化すれば死ぬ恐れがある病です。決して軽く見ずに症状が出たらすぐに
医療機関に受診してお身体を大切に。なんか、慣れないこというとむず痒い。
それからは綿毛に掴まり空を漂いながらも幸運にもとある村の明かりを見つけ、しばらくその村で休んだ。ベルリッツ王国からはかなり離れてしまい。海を越えた隣国まで来てしまったようだ。村人に世話になりながらアルヴァンは雪が落ち着くまでここに居させてもらった。世話になった村の老夫婦はアルヴァンのことを小さな子どもだと思っていたらしく、とても可愛がってくれた。アルヴァンは子ども扱いしてくる老夫婦に
《一回絞めたほうがいいのか。》と思ったがおばあさんが作ってくれた穀物のスープがおいしくて硬いパンをとつけておいしくいただいた。
その間、村から離れた祠でオーケンに食事を与えながら回復を待った。徐々に良くなってきたがやはり傷跡は残るらしい。雪が落ち着いた時に村人と別れ東へと歩き、港町を目指した。途中で大型の四足獣を討伐し近くの農場の主から感謝され樽で牛乳を分けてもらい、橋が流された川に大木をかけて渡れるようにして木こりから獣の肉を分けてもらい、アルヴァンは、人のいるところに立ち寄っては厄介ごとを請け負いながら王都を目指していた。そして、ついに
「アルヴァン様ってお人よしですね。」
「なんかくれるからお人好しで助けたりはしてない。ギブアンドテイクさ。」
シドはアルヴァンが困っていたいろんな人に『なんかくれるのか?』と聞いている姿に卑しさも感じ
「そうなんですかね・・・。」
シドは暢気に旅をするアルヴァンをよそにあれからもう1年も経ってしまい少し心配をしていた。さらに不思議なことに隣国では品格者に遭遇しなかった。魔法を使える人間は居たもののやはりこの能力はベルリッツ王国のある大陸でしか存在しないものだ悟った。
「もうすぐ一年になりますね。普通だったらすでにグルミアついても遅くないのですが・・・。ようやく海を越えてベルリッツ王国って遅すぎませんか。」
ここはベルリッツの王国の西の果ての港町。ようやく王国へ戻ってこれたが通常半年でここまで来ることが出来たにもかかわらず、寄り道や脱線を繰り返しこのざまに。
「魔物の奇襲はあるものの、特に王都が壊滅したとか聞かないし。まだ大丈夫。」
「根拠なんてないでしょう。」
《やばい。これまた始まってしまう。》アルヴァンは話を逸らすためオーケンの話をした。
「オーケンをこの先の草原で離すことにする。ここなら大丈夫だし、帰れると思う。」
「そうですね。やっと国に帰れたことですし。」
「まずは、腹ごしらえにフィッシュバーガーを食べに。」
「さっき食べたでしょ、焼き魚・・・。」
「違う違う。あれは食べた内に入らない。」
シドは無理やりアルヴァンに自信の自身の布を巻き付けて引っ張り
「はいはい。行きますよ。」
もがくアルヴァンをよそにシドは強引に街を出た。
しばらく歩き続けると広い草原が一面に広がる。アルヴァンはカエルからオーケンを吐き出させた。吐き出されたオーケンは言った。
「あのさぁ、普通に気持ちが悪いんだが。」
「知ってる。けど、これはそういうものだから。」
「あぁ・・・うん。」
カエルが異物を飲み込んだ際、内臓ごと吐き出す。このカエルは内臓ごと吐き出すことはないにしろ『オヴぇ』っとどう考えても異物扱いで吐き出すので気分が悪い。
草原の風はまだ北からのひんやりとした風が吹いているが、次第にこの草原も濃い青さを帯びていくのだと。
「やっとここまで帰ってこれた。ここでお別れだオーケン。」
アルヴァンは空色のアンクレットをオーケンにつけてあげた。
「いいのかここで?」
「これ以上君を連れていけない。君は故郷に帰りな。」
「あんまり役に立てなかったが楽しかったぜ。」
「元気で。」
オーケンは両翼を広げ羽ばたかせ一気に空へ飛びだった。
「またどこかで会おう。」
オーケンの声が風に流されながら聞こえた。巻層雲が空の青さを覆ていたがそこから途切れた濃い青いところをオーケンが貫いていく。アルヴァンは去っていくオーケンに手を振った。
「行ってしまいましたね。」
「そうだな。」
「アルヴァン様行きましょう。」
アルヴァンはここから東へと続く道を歩き出した。
草原を抜けると生い茂った広い森に入る。野生の魔物がうようよいるが特に気にすることなく進んでいく。アルヴァンがその森で野営を張っていた時、一人の大男に出会った。
「これは驚いた。こんな小さい魔物がテントを張っているとは。」
アルヴァンはその大男に近づいた。あまりに大きい人間だったので見上げながら考えた。
《敵かな?一撃でしとめとくかな。》
「ごめんよ。ただ火が見えたものだから。様子を見に来たんだ。」
《不用心な男だ。別に俺じゃなくても危ない奴はいるのに。》
その大男はトニーと言った。少し小太りで丸い目をしている。ハンチング帽をかぶをかぶりとてつもなく大きなリュックを抱えていた。トニーはリュックを置き、ベーコンとパンをアルヴァンにみせた。『一緒に食べる。』と言い、アルヴァンは警戒を解き一緒に食べることにした。焚火を前にして二人腰かけ座りベーコンを挟んだパンを小さいなりの魔物がしっかり掴んで食べている。それを見てトニーは言った。
「ほんと君は器用なんだね。魔物とは思えないよ。」
アルヴァンはトニーがなぜか嬉しそうにしているのを良くは思わなかった。けど、
ご飯をくれたから悪い奴じゃないと判断した。
「最近、ここら辺でも魔物の動きが活発としているんだ。だから、普通の人は容易にこの森には入らず森を避けて迂回していくんだ。けど、僕は染料を手に入れるために森に入っているんだ。」
トニーは染物をリュックから取り出し見せてくれた。鮮やかな濃淡のある紫のハンカチや笹掛のような白い模様が入ったスカーフ。そして、トニーの指先の爪は染料の影響か少し青みがかっていた。アルヴァンはスカーフを手に取ってひろげ、ひらひらとさせた。その様子を見てトニーは
「それ君にあげるよ。とっても似合ってるよ。」
トニーはスカーフを首に巻く動作をして、アルヴァンそれを見てスカーフを巻いてみた。このローブにスカーフじゃちょっと似合わないんじゃないかと思う反面、トニーの嬉しそうな顔に首を傾げた。
そして、この一晩だけここで一緒に過ごすことになった。トニーはいろんな話を聞かせてくれた。トニーのお母さんが足が痛くて歩くのもままならないことや、染物屋として仕事をしているが最近、綿が高騰しているため染める物が少なくなって仕事が減っていること。去年のアムパルト公国の綿の産地で起きた魔物襲撃による大火事によって綿が手に入らなくなっていたのだ。
《それって、シーマの奴かな。》アルヴァンはまさかこんなところまで被害は及んでいるとは思いもしなかった。
極めつけは今王都では、品格者の補充を急がされている。やはり、勇者討伐によって魔物たちの力も高まってきている。だが、王都ではきな臭い話もあるみたいだった。それは魔物の襲撃は意図的に仕向けられているんじゃないかと一部の有力者が提言していたがすぐに弾圧されその有力者の行方も分からなくなったという。