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テト  作者: 安田丘矩
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儀式の時間だ。供物を捧げよう。

大人の方がいいのか、子供の頃がいいのか論争。

ちなみに私自身は大人の方がいいと思っています。

子供のころから、早く大人になりたいなと思っていたんですけど、

正直、周りとの感覚やものの考え方に温度差があって馴染めなかったことが多かった。

簡単に言うと子供ながらの郷には郷という考えに付いて行けなかった。

別にいじめられていた訳でもないし、友達もいないわけでもなかったけど、

どうも、心では通じ合えないことでヤキモキすることが多かった。

だから、大人になってそういうことは建前や本音の使い分けでどうにかなるから楽かな。

けど、なんか純真さが失われている気もする。これが大人なのか?

赤い星の衝突はギンガルでも大きく揺れ、地平線に消えた後大気がうごめく瞬間が見れた。人々はカイノスに落ちたことを悟り心配していた。そして、父レノヴァがカイノスにいるユリアはパニックになっていた。


「どうしよう、レオさん!お父様が!屋敷の皆さんが!!」


レオは必死にユリアなだめながらもどうすればいいのか戸惑っていた。カイノスはユリアの動揺していることに気づいたのか泣き始め、ユリアはカイノスを抱きかかえ、泣き止ませるのと同時に自身の落ち着かせようとした。


「ユリアさん。僕がカイノスへ行って様子を見に行きます。お義父さんのことも、王都のことも気になりますし。」


「レオさん今ここを離れるのは危険だわ。心配だけど、無事でいることを信じるわ。それにテトさんに・・・そういえばテトさんはどこへ?」


「さっきまで家の外に居たんだけど。」


レオは窓の外を見てみたがアルヴァンの姿は見当たらなかった。


「こんな時にどこへ行ったんだ?町の様子を見に行ったのか?」


「何か嫌な予感がします。レオさん・・。」


「余計に不安を煽るだけです。僕も街の様子を見に行きますのでユリアさんは家にいてください。すぐに回って戻ってきますから。」


「気をつけて。」


レオはユリアの頬にキスをして外へ出て行った。




アルヴァンはギンガルの一番高い山に移動していた。赤い星がカイノスに落ちる瞬間、赤い光が地平線に光り出して、大気が吹き飛ばされていた。一瞬突風が吹き荒れ地平線の向こうはまるで朝日が出てくるかのように明るくなっていた。


「容赦ないんだな。あのクソ野郎。」


ただその様子をじっと見つめるアルヴァンにシドは言った。

「思いのままにってことでしょうか。これも余興の範疇ってことでしょうか。」


「そうかもな。まぁおそらくエネヴァーを王にするための手っ取り早い方法ってことかな。頭がいなくなれば統治もたやすいってことで。」


「定石ですね。けれど、神がやることなのでしょうか。」


「あいつは神だけれども、創造神ではないだろうな。完全に悪役向きの神様ってとこだな。」


「あんな巨大な星の進路を変えるだけの力がある神に戦いを挑もうなんて。アルヴァン様、不毛なのでは。」


「今更そんなこと言ったところ状況は変わらない。やれるだけやってみるさ。」


シドは町の方で何か強い力を持つ者の気配を感じ取った。

「アルヴァン様、町に何かいます。」


「誰だろうな。あいつらか?それともお迎えか?」


アルヴァンは移動魔法を唱えて、シドが感じ取った気配の近くへ移動した。




町に降り立った瞬間、アルヴァンは魔力の気配で誰が来たのかすぐにわかった。その気配の方へ行ってみるとそこには魔王ディオクレイシスがレオを魔法で拘束している所だった。


「やっぱり来たか。」

アルヴァンはディオに近づき話しかけた。


「あぁ、久しいな。元気そうだな。」


「そんな挨拶いらん。ここへ何しに来た?」


「そんなこと知っているだろう。」


「お前の口からききたい。そいつをどうする気だ?」

ディオは黙り込んだ。アルヴァンは話を続けた。

「まどろっこしい追及はやめだ。単刀直入に言う。おまえ、死ぬ気なんだろ。テスカトリポカに騙されたとはいえそれが死路だと知ってそれを受け入れるんだろ。」


「お前に何が分かろうか。」


「あぁ知らねぇよ。けど、やっと一つだけ分かったことがある。お前、願いを持っているな。」


「それは、テスカトリポカに聞いたのか。」


「推測だったが、お前の持っている能力は『予言』なんじゃないかって。おかしいと思ったのはまだ乳飲み子だったレオを見つけ出すことができたのか。いつ依り代が出現するのか分からないのになんでピンポイントに見つけることができたのか疑問だった。


そして、お前がそう簡単にテスカトリポカの言うことを聞くような奴じゃないって知ってるから余計に不審に思った。だとすると、誰か助言している者がいる可能性を疑ったが、お前が元は人間で平和を望んでテスカトリポカの能力を得たことから元から能力を持っていたんじゃないかって。」


「ただの食い意地だけの魔物ではなかったんだな。そうだな・・・私の持っている能力は予言ではあるが『風の便り(エアーメール)』というこの後起きる出来事が風に乗って聞こえてくる能力だ。もともと、天気を予知するために親から継受された能力だった。


けど、私が生まれた頃は各地で内戦が起きて緊迫した状況が続いていた。そんなときに私はこの能力で平和が訪れるのはいつなのかと問いただした。すると、返事はテスカトリポカの御神体がある海の洞窟へ行けと言っていた。それから私はそのご御神体に祈った。すると祈りが通じたのかは分からなかったが、その内戦で戦っていた者すべて、敵味方関係なく自害した。


戦うものがいなくなり違う意味で平和になったが、私は悔やんだ。こんなこと望んでいなかった。だから、もう一度テスカトリポカの御神体祈った。そして、私は力を手に入れた。後はテスカトリポカから聞いているんだろ。」


「あぁ。結局、戦うものがいなくなっても人間の欲がある限り再び殺し合いは起こる。力を得たお前はそれを鎮圧したが人間の姿が失われて今の姿になったと。」


「長い年月を生きて風化していく記憶もあったが、今も贖罪と思っていることは今でも私の心を蝕み続けている。なぁ教えてくれ。私は、本当にこれでよかったのか。」


「自分が間違ったことに対して償えばいいって考えているなら、それは大きな間違いだ。お前が平和を望んだ時からお前は間違ったなんて思っていなかっただろう。だから、今お前の依り代・・・むしろお前の生き写しなんだろ、そいつ。それなのに手にかけることができるんだ。お前は最初っから魔王にふさわしい器だったよ。」


「そうか・・・。少しは魔王らしくなれたのか。」


「だから、同情なんてしない。テスカトリポカと悪魔の契約をした奴は俺の敵だ。」


ディオは笑った。

「アルヴァンよ。私の能力でお前が現れることは知っていた。そして、お前がテスカトリポカの因縁を断ち切ってくれると。」


「なんで、俺が上司のケツを拭かないといけないんだよ。ちゃんと責任は取れ。」


「本当はそうしたいがもう時間がないみたいだ。だから、最後に託す。テスカトリポカは4体いる。」


「お前、何言っているんだ?」


「あいつは4体で1つだ。だから、その4体を倒さない限り奴を止めることはできない。」


「話が追い付いてこないんだ・・・がぁ!」


すると、アルヴァンは背後から禍々しい気配を感じて距離を取った。そこには豹の仮面を被ったテスカトリポカの姿があった。


「口が過ぎますよ。ディオクレイシス。依り代の回収はできましたか?」


「あぁ、ここに。」


「アルヴァン君。ダメですよ。私の秘密を聞いては。まぁもう知られたからには仕方ない。君とのゲームでまた改めて話をするよ。じゃあ早速・・。」


テスカトリポカは指を鳴らすと地面が揺れ始め地面が隆起し始めた。テスカトリポカの周り10メートルほどが上へと伸びっていった。


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