たとえ、それが偽りだとしても
この暑さ、10月中旬まで続くそうです。去年も暑かったけど、順当に涼しくなっていった。
さすがにしんどいなぁ・・・。エアコン生活を止めたいんだけどさすがに無理そうだな。
正直、身体に良くないことは分かっているんだけど点けてないと身体壊しちゃう。
毎年のように暑い日が続いてエアコン生活していると体が慣れてしまったのか。
だいぶ平気にはなっているけど、本調子にはなれないな。
かと言って、雨が降ってほしいと願ったら大雨で各地で被害になるし
一体どうなってるんでしょうね。
ケツァルコアトルは目を覚ました。その場に立ちあがり辺りを見渡した。窪んだ大地に焼け焦げた匂いと飛散する瓦礫。ここは一体どこなのかと思いながら自身の掌を見つめた。テスカトリポカに封印されて以来の懐かしい感覚がよみがえる。
「なんだ・・・おまえ、どうしてこんなところに。そうか、お前がやったのだな。人殺し・・・人殺しぃいいいいい!!!!」
誰かの声が聞こえ振り向くとそこにはレノヴァがいた。ひどく火傷を負いながらも辛うじて生き延びたようだった。
「人殺し?私が?」
「このカイノスの都を跡かともなく引き飛ばし、ここに住む民までも殺めるとは。貴様許さぬ!」
「待て。話が読めない。何を言っているのだ。」
「問答無用。死ねぇぇぇええええ!!!!」
レノヴァはありったけの魔力を練り上げて燃え盛る火球を生み出しケツァルコアトルに放った。ケツァルコアトルはそのまま片手で止め火球を飛散させた。レノヴァは渾身の一撃を止められ呆然としてそのまま膝を落とした。
「まったく。最近の人間の挨拶とはこう過激なのか。」
「本当にその無頓着なところいい加減に直したらどうだい?」
そこに現れたのはテスカトリポカだった。
「おまえ、わざわざ快気祝いに来てくれたのか?」
「まぁそんなところ。けど、ひどいね兄さん。人間たちをこんな非情に殺めといてそれはないでしょ。」
「お前も何を言っているのだ。」
「さっきまでお空を飛んでいたんだよ。そして、ここカイノスに墜落した。ご覧よ。ここには立派な城が築いてあって、賑わう街並みと平和な日常がそこにあったんだ。それが今ではその面影すら何もなくなってしまった。」
「お前ふざけているのか?」
「ふざけるも何も兄さん記憶が朧気みたいだから教えてあげるよ。その赤い星は兄さんだったんだよ。そして、それがこの場所に落ちた。それだけの事。」
「そんなことって。我は何も知らない。」
「そうだよね。今まで閉じ込められていたんだから。不可抗力だった。けど、それを人間が許すかな・・・。」
ケツァルコアトルはようやく気付いた。人間が寄せる負の感情が空気を伝い体に触れる感触。それは悲鳴や苦痛、憎しみなどのその重さが伝わりケツァルコアトルは頭を押さえた。
「もう終わりだ!」
「神は私たちを見捨てるのですね。」
「まだ、やり残したことがあったのに。ここで死ぬなんて嫌だ!!」
「絶対に許さない!呪ってやる!!呪ってやる!!」
ケツァルコアトルの頭の中へ様々な声が聞こえてくる。
「なぜなんだ。私はここの人々の神でもないのに。」
「兄さん。せっかくの再会で申し訳ないんだけど引っ込んでいてほしいんだ。次の遊び相手が動き出すまで僕の中にいてよ。」
テスカトリポカは手のひらをケツァルコアトルに向けて呪文を唱えた。ケツァルコアトルも抵抗するもテスカトリポカの力の前に動けなかった。
「力がまだ戻っていないし、成す術もないよね。だからここは大人しくしていてください。」
ケツァルコアトルはテスカトリポカによって手のひらに吸収された。そして、テスカトリポカはレノヴァに近づき言った。
「人々を苦しめる者は私が葬り去った。私は人々の味方だ。さぁ立ちなさい。嘆いていても仕方ありません。」
テスカトリポカはレノヴァに手を差し出した。レノヴァはその仮面の者を信用していいのか分からなかったがその手を取り立ち上がった。すると、レノヴァは何かに取りつかれたのか祈り始めた。
「おぉ、主よ。我らを救いたまえ。」
「よろしい。君はここで生き残っている者を引き連れて我を信仰しなさい。」
さらにテスカトリポカは自身に似た石像を作りだし、魔法で禍々しい気配を放つ仮面を召喚しその石像に仮面を顔に付けた。その石像は身震いしながら動き始めた。レノヴァは驚き後ろに尻もちをついた。
「この石像は私の依り代で作り出したものだ。私はここを発つがこれを私だと思って祈るのだ。そすれば人々を守り安寧をもたらすだろう。」
レノヴァはテスカトリポカに跪いて頭を下げた。
「主よ。仰せのままに。」
「今、王を亡くしたこの国は行く末さえ見失っている。我が人々の道しるべだ。崇めよ。」
テスカトリポカは両手をあげて閃光を空に放った。その光は拡散しながらこの失われた大地を照らした。
「おぉ・・・奇跡だ。」
そこで生き残った人々はその光を見つめながらその救世主の出現に祈りを捧げたのだった。