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テト  作者: 安田丘矩
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さぁファンファーレを鳴らせ

さてさて、明日からまた仕事ですね。はぁ行きたくないなぁ。

いくつになってもそういう所は変わらないですね。

旅行行ったり、遊びに行ったりと程よく充実した休みを過ごせたと思う。

けれども、なんかゆっくりできたのかと言えばちょっと違う。

こういう連休でパーフェクトな休みを送ったことないのですが正解は一体。

やっぱり、世間との休みが合致してしまうと混むところは混むし結局諦めることがある。

実際、行きたかった有名店に開店前に行ったらすでに駐車場いっぱいで店の前に並んでいる。

いやー悔しいなぁ。それだけが今回残念だったよ。

もっと気軽な感じで入れたらいいのに皆考えることは同じなのね。

今度、近くに行けるのはいつになるのことやら。指をくわえて待つしかないな。

それまで渋々仕事頑張るしかないようです。

赤い星が手のひらに収まるくらいに接近し間もなくこの惑星を通過する。人々はその天体ショーを家の外や見晴らしのいい草原や高台で見守っていた。美しい夜空だ。星が淡い光で輝きながらその赤い星を引き立て、手を伸ばせば本当に掴めるのではと思わせてくれていた。接近するにつれ人々は異変に気付いた。赤い星がこちらにむかってきている。


急に軌道を変えてこちらへと大きくなっていく。一体何が起きたのか人々は当然の出来事に騒ぎ始めた。


「おい!星が迫って来るぞ!!」

「どこへ逃げればいいんだ!!」

「神よ。どうか我を助けたまえ。」


そして、その赤い星の全貌が分かるにつれてイレイアの人々はカイノスに落ちると悟った。そのカイノスではパニックになっていた。いち早く王都から逃げなければと人々が各門へ殺到し大混雑していた。怒号する声と泣きわめく声、どこからか音楽さえも聞こえてくる。


落ちてくる。それは赤く燃える星。人々の脳裏に焼き付いたのは死の文字だけだった。ただ、生きたいだけ。なりふり構わずこの場所を去って遠くへと、もっと遠くへ。迷子の子供が路地の隅で泣いていても一目散にかけていく。必死に人々の群れをなだめながら従事する兵士たち。この都のあちらこちらからガラスが割れる音、そしてどこかで火事が起こっている。それでも、人々はこの場所から逃げて行く。夢中で逃げる中で凄まじい風が吹き荒れる。そして、熱い。嫌だ!嫌だ!いやだぁぁああ!!!




カイノスに赤い星が落ちる3時間前。

静寂に包まれる荒野にテスカトリポカがいた。空を見上げて赤い星を見つめた。


「さぁ兄さん。やっと帰ってこれたね。けど、ただ帰ってこられただけじゃつまらないから私が最高のショーを見せてあげようと思う。」


テスカトリポカは右手を空にあげて手首をゆっくり一回廻した。そのまま前方に下ろして手招いた。すると赤い星の進路が変わりその手招きに引き寄せられるようにこっちに向かってきた。


「そうだよ。私たちは支配者なんだ。ちゃんと、人々に偉大さを分からせないとね。さぁたのしみだよ。そして、これから楽しいことが始まるんだ。」


テスカトリポカの背後へ誰かが近づいてくる。それはエネヴァーだった。

「テスカトリポカ様。なんと凄まじい力だ。あの星をいとも簡単に動かすなんて。恐れ入りました。」


「君いいね。建前のようなその言いぐさ。含みがあるね。」


「滅相もありません。あなた様に協力いただけるだけでも恐れ多い事なのにどう偉そうにできようかと。」


「けど、君は魔界含めて、ベルリッツ王国とイレイア国の二つの国も支配できるんだから十分威厳があるのでは。」


「私の力量などあなた様には到底及びません。」


「さて、あの星が落ちたらいよいよだけどどっちがいい?君が先に魔王になるのか。それとも君のお友達を始末するのが先か。」


「そうですね・・・決めかねますね。けど、やはりここはもう話が終わっている方を片づけるのが先決かと。」


「あぁ君たちの王の方ね。君は知らないけど、アルヴァン君には伝えてあるんだ。もう、この結末は変えられないって。だから、あちらとしても覚悟できていると思うよ。」


「そうなのですか?てっきり、まだ模索しているかと思いましたけど。」


「その方が物語としてはいいかもね。けど、私は優しいから無駄な労力を費やさないようにしてあげただけ。お互い全力で戦った方がいいだろ。」


「あなた様のおっしゃる通りです。」


「それに次の玩具だから、丁重に扱わないと。」


「テスカトリポカ様はなぜアルヴァンに執着するのですか。」


「むしろ、君はアルヴァン君を見て何も思わなかったのかい?」


「やたらすばしっこくて、短気な小さいの程度には。」


「そうだね。その通りだ。元々、アルヴァン君は僕の失敗作みたいなものだ。どうして兄さんと出会って生き延びたのかは分からないが極めつけは願い。そんな強運な持ち主がいるなんて思わないよ、普通。」


「願いを保持しているんですか?」


「あぁそうだ。星に直接継受されている。その願いはおそらく不死身だ。」


「そんなことって。」


「正確には条件付きの不死身ってところかな。彼は長生きをしている程度にしか思っていないみたいだが魔力の供給がなくならない限りアルヴァン君は生き続けるだろう。」


「テスカトリポカ様。そもそもこの星って、願いって一体何なのでしょうか。」


「アストライオスの星たちのことだ。アストライオスは星の神で星々に体現する力を持っている。兄さんはこの星たちに人々の各々願いをのせて力を与えたんだ。もともと、人々の願いをアストライオスが叶えていたことから兄さんはその力を借りて人々に力を授けたんだ。」


「品格者の能力とはそういう経緯があったのですね。」


「まぁ、私としては兄さんが慈善活動をすることは面白くないから役目を終えた星をちょっと拝借して利用した。そしたら、アストライオスは星々を返せと怒ってきた。兄さんも困り果ててなんとか星を回収しようとしたけど、兄弟喧嘩が先に起きて私が勝った。兄さんは赤い星に封印して星たちはほとんど私が回収しといた。そして、約束の日が近づくその余興としてそれをばら撒いた。」


「なら、もっと早くその集めた願いをばら撒くこともできたのでは。」


「彼、君たちの魔王との約束だからね。」


「約束ですか?」


「彼は元々人間だからね。」


「えっ!」


「そうか言ってなかったね。彼は人間界を脅かすことはしたくなかったけど、気づいたんだじゃないかな。もう、どうすることもできないって。だから、願いをばら撒くことも了承してくれたよ。まぁもう彼の余興としては終盤だったけど。それでも、その能力で暴れてくれたおかげで私の力は増している。」


「そんなことがあったとは。」


「さて、特等席で兄さんを出迎えに行かないと。君もギンガルに向かったらどうだい。」


「そうですね。では、また後程。」


エネヴァーは姿を消した。テスカトリポカは赤い星を見つめて言った。

「さて、もっと苦しんでほしいな。兄さん。」


テスカトリポカは不気味な笑い声をあげてその後姿を消した。


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