戦う前の験担ぎほど緊張する
桃のおいしい季節になりましたが良さそうな桃を求めてお店を転々としている。
よく見ると打ってるところがあるから結構吟味してしまう。
そもそも、こどもの時あんまり桃って好きじゃなかった。
缶詰の桃とか給食で出てくる黄桃しか食べたことなかったし、白桃なんて食べる気がしなかった。
けど大人になって桃のおいしさを知って、わざわざ取り寄せて買ったりしてた。
だから、結構桃を剥くの自信があるんだなぁ。
明日も桃を探しにちょっと出かけてきます。良い桃あるかな。
日に日に赤い星が接近してギンガルでも赤い星が通過する話でもちきりとなり天体ショーを待ち望んでいた。アルヴァンはあと数日で接近する赤い星を見つめながら考えていた。テスカトリポカの思惑通りに事が進むならディオとレオはまず助からないだろう。そして、テスカトリポカの余興は終わり俺の下にあいつは現れる。
それとエネヴァーだ。あいつがテスカトリポカとグルであるなら約束の日に必ずあいつはやってくる。ディオがいなくなることは即ちエネヴァーが王になるということ。不思議なのはそこまで王にこだわる必要があるのか分からない。その王の座を確実のものにするためにテスカトリポカと協力関係にあるならあいつの真の目的はなんなのだろうか。アルヴァンは悩んでいた。
「アルヴァン様。大丈夫ですか?」
シドはアルヴァンの顔を伺いながら言った。
「大丈夫じゃないかも。」
「やけに弱気じゃないですか。降参します?」
「そんなことしない。ただ、ここが戦場になってしまうとはな。」
「ギンガルの皆様は気づいていますよ。きっとここで何か起こることを。イレイアの置かれている状況を知った上ですので気兼ねせず。」
「そうだな。・・・町が死んでいくのを見たことがあった。断末魔と家々が炎と共に焼けていく音。人が人を止める瞬間だったと思う。人が俺らと同じ魔物になって人を殺めて行くんだ。ただ、それは別に珍しい事じゃなかった。これが人間の本来の姿なんだと。
前日まで普通に人が暮らしていて、商店で硬いパンとジャムを買った。けど、その後火の手が治まってから町を覗いたら、腐敗した遺体が転がっていて、商店の家の奥で二つの焦げた何かが倒れていた。襲う側ってのはこの惨事を見ないふりできる奴らなんだ。
だから、狂気的になれるし良心など持たない。だから、そんな奴らに道徳や倫理なんて説くのは無意味だ。」
「人間ほど信仰やらなんやらと都合のいいことを盾にしてきた生き物などいないですけどね。」
「それは、魔物だって同じだ。だからこそ、守りたいのであれば殺らないとダメなんだ。」
「守れるのでしょうか?」
「守れる量ってのは限りがある。普通は手が届く範囲だけれども本当は手のひらで救う程度でしか助けられない。だからこそ、あとは生きたいと願う性根の強さに任せるしかないな。」
「いよいよですね。」
「おまえこそ、今度は倒せるのか?あのお友達?」
「誰がお友達ですって?御冗談を。メージはここで葬ってやりますよ。」
「威勢だけはいいな。」
「アルヴァン様こそ大丈夫なんですか?最悪、エネヴァー、グラッツ、ロリババア・・・テスカトリポカを相手しないといけなくなりますが。」
「まぁ普通に考えたら死ぬよな。」
「どこまでもお供しますよ。アルヴァン様。」
「気持ち悪いことを言うな。俺は死なないからな。」
「アルヴァン様が死んでしまうと私も死んでしまうので死ぬのはダメです。」
「どこまでもお供しますじゃないのかよ。」
「生きているからこそお仕え出来るのですからお忘れなく。」
「へいへい。」
再び赤い星を眺めてアルヴァンはふと思った。
「あの中にケツァルコアトルがいるなら完全に力が戻るのでは。」
「どうやってあの星の封印を解くんですか?」
「知らん。」
「はいはい。」
「こういう時にあの神様どこいるんだよ。まったく。」
「かれこれ一年は経ちましたが、もう宛てにはできませんね。」
「あいつ何しているんだろうか。せめて、神の力が付与されてるアイテムなどくれたらいいのに。」
「そういえば、パタリオスの石碑のところに装飾品があったような。」
「そうか、あれが神アイテムだったのか。」
「いや、ただの装飾品です。」
「ちぃ。けど、おまえにはまだ願いを還す方法が残っているぞ。」
「願いを還すですか?」
「あのおかげでテスカトリポカからの逃れることができたからな。もし、ピンチの時は願いを還すんだ。」
「どうやって?」
「祈るんだ。お帰りなさいって。」
「それだけですか?」
「そうすると願いが飛んでいく。」
「その願いはどうなるんですか?」
「お家に帰る。」
「何の対抗手段とは思えないんですけど・・・。」
「ただ、明らかにテスカトリポカは嫌がっていた。自分がこの願いに呪いをかけたけれども、根本的に願いの在り方は変わっていないんだと思う。」
「なるほど、じゃあ願いを空に還していけばテスカトリポカにとって都合が悪いというわけですね。だとしたら、いい考えがあります。もしもの時に有効だと思います。」
シドはアルヴァンに考えを話した。
「それはいいかもしれないな。誰が願いを持っているのかもよく分からないし。」
「さて、じゃあ町中に貼り紙を配りに行きましょう。」
アルヴァンとシドはギンガル中に貼り紙を張って周知させた。