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テト  作者: 安田丘矩
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生まれてくる未来のために

長期連休も折り返し地点ですね。長いようであっという間。

まぁ正直なところ、こんな暑いし名所に行っても人だらけ。

ゆっくりしたくても結局お家で過ごすことになる。

人間が過ごしやすいタイミングで長期連休を取れたらいいんだけどね。

そもそも、GW、盆、正月にしか長期連休がないのもいや(職種によってはない所も)。

日本人働きすぎなんだよ。もっと休ませろ。

やっぱりコロナの時を経験しているからこそ時間の在り方を考えらせられてのはあるんだけどね。

働き方が多様して、生活も十人十色だからこそ世間的に変わっていってほしいなぁ。

この一年で変わったことはレオとユリアとの間に子供が生まれた。ユリアの妊娠が発覚してからレオは病的なまでにユリアに過保護になりすぎるあまりテスターさんの奥さんやマアサに注意を受けることもあった。


お腹が膨らむにつれて結局マアサの家で療養することになり、レオはマアサの家から中々自宅に帰らずユリアを労わったり、必要なものはないかと聞いたりしてしつこかった。渋々アルヴァンはレオの襟をつかんで家まで引きづって帰って行った。


そしてユリアが産気づいた時レオは至ってもいられず立ち会うと言い出しユリアの御産中の横で必死に手を握り励まし続けていた。ユリアは痛みを堪えながらも時間がかからずすぐに子供を出産することができた。元気な男の子だった。母子ともに健康でレオは初めて子供を抱いた時泣きながら喜んでいた。


その様子をアルヴァンはじっと見ながら物思いに更けていた。


「感動しているんですか?」

シドはこっそりアルヴァンに言った。


「出産に立ち会うのは初めてじゃないから別に。ただ、カイノスが生まれた時を思い出しただけだ。」


「思い入れがあったんですね。」


「人間って本当に脆いんだと思ったしそれに生まれた状況でいろんなハンデとかがあるけれども、それでも赤子を見てこれから一緒に生きていくんだとミランダの訴えかける眼差しを今でも覚えている。誕生って特別な力があるんだと。」


「アルヴァン様・・・似合わないです。」


「お前のそういうデリカシーのない所嫌い。」




それから何日しかして子供に名前をつけることになり、あらかじめ決めていた名前をレオは皆に披露したが名前のセンスがなかった。

「オルスタルバルニタス。」


レオが読み上げると皆沈黙した。


『お前そんな長ったらしい名前どうやって思いついたんだ?』


そのキョトンとした周りの表情にレオは応えた。

「えっと、この名前はこの地域の伝承と富を得るという言葉を合わせたんだ。たくさんの人から恵まれて健康に育ってほしいという願いで考えたんだけど・・・ダメかな。」


『名付けられた方が迷惑なやつだな、これ。』


アルヴァンの指摘にユリアはちょっと笑ってしまい、レオは少しがっかりしてしまった。そんなレオの姿を見てユリアは言った。

「レオさん。一生懸命考えてくれた十分に嬉しいのですが、ちょっと高尚すぎますね。それで、あの私からも名付けたい名前があって・・・カイノスはどうですか?」


『えっ?まじか?』

アルヴァンは唖然とした。


「カイノスか・・・この国の英雄であり、俺が詰め込みたい言葉をすべて代弁している。本当将来が楽しみだな。」

レオは喜んだ。周りの皆もその名前を聞いて賛同した。


『えー本当にカイノスにするのかよ。英雄の名前をつけることはよくあることだけれども・・・。よりにもよってあいつと同じ名前とは。』

アルヴァンは困惑した。


結局、レオとユリアの子供の名前はカイノスに決まった。


アルヴァンはその後でユリアにカイノスを渡されて抱きかかえた。


「ほんとサルだな。」


「まぁひどい。愛らしいでしょ。それにしてもアルヴァンさん抱きかかえるの上手ね。」


「これでも赤子の世話をしてたからな。」


「あら、そうだったの?それって、カイノス様?」


「そうだな。それ以来か。よく泣くやつでうるさかったが、興味あるものに対して素直に感情を表していた。」


「本当に信じられないわ。アルヴァンさんがそんな大昔からいるなんて。」


「別に不思議ではない。魔物の中には長命の主だっている。俺は特別だからな。」


「歳だけ取りすぎて口うるさくなっていますが。」

アルヴァンがカイノスを抱きかかえる横でシドはボソッと言った。


「おまえ、聞こえているんだけど。」


「ユリア様私も抱いてみてもいいですか?」


「えぇいいわよ。」


アルヴァンからカイノスを受け取りシドは抱きかかえた。しかし、カイノスは泣き始めてしまった。あたふたしながらユリアはシドからカイノスを受け取りあやし始めた。


「おまえ怖がられたな。」


「そんな。こんなに慈愛に満ちているのに。」

シドは少しショックを受けた。


「シドさん大丈夫よ。もう眠いのよ。皆の前だったからちょっと疲れちゃったのね。」

ユリアはカイノスに無垢の笑みを見せた。


「そうですか。安心しました。」


「気を遣っただけだぞ。」

アルヴァンはボソッと言った。


「あぁやだやだ。こういう主だから似てしまうんですね。」


「ほんと、こういう僕は手を焼くな。」


さすがに喧嘩になりそうだったのでユリアは間に入って言った。

「その辺にして。けれど、アルヴァンさんカイノスって名前嫌でした。」


「まぁあいつのことを思い出すからな。それと、もともと物語に出てくるカイノスの最後は自己犠牲にして平和を手に入れた後代償に石に変わってしまうんだ。そして、年月が経って砂に変わり、風に乗って平和になった世界を見に行くんだ。」


「そんな話だったんですか。」


「だから、ミランダがカイノスと名付けるときにやめとけって思ったんだが。それでも気に入って名付けたんだ。」


「けど、英雄譚としては素敵なお話だと思います。だからこそ、カイノスのお母さまも名付けたかったんじゃないでしょうか。私はカイノス様のことを知っているからこそ名付けたいと思った。それだけです。」


「そんなもんなのか。」


「そういうものよ。」


カイノスはユリアに抱きかかえられながら眠りについた。



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