表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テト  作者: 安田丘矩
111/143

この短い刹那の中をあなたと共に生きていく

長期連休に入って、大人の過ごし方って一体なんなのか。

いきなり哲学の考察みたいなことを言い出して申し訳ないんですが、

単純に時間の使い方が下手くそだから有意義な時間を過ごしたいってことです。

社会人1年目なんて長期連休をもらってどうやって使おうとか

悩んだ結果、出発一か月前に沖縄旅行へ行く手配をしていったけれども・・・

沖縄本土って2日あれば主要なところはほぼまわれるので時間が余ってしまった。

そこでの観光地やお店での滞在時間を考えてそこで何をするのかを考えるのが浅はかだったと反省する。

今じゃグー〇ルマップをフル活用して近辺調査してお店や観光地とかをマーキングしてる。

地図の上が旗だらけになりがち。達成感だけで終わりそう。

だから、自分の旅行には絶対温泉に行くことを決めている。

癒しアンド体感で穴埋めしているんですけど、じじくさいかも・・・。


アルヴァンが宮殿の外へ出ると何やら人だかりが出来ていた。恐る恐る近づいて行くとそこにジェルマと召使たちが集まっていた。ア


ルヴァンに気づいたジェルマは近づき声をかけた。

「おぉ、久しいな。アルヴァンよ。」


『あれ?おまえなんでここに?』


「何やら不思議そうに見ているな。この宮殿は大昔に我々の先祖が悪災から守りケツァルコアトル神を祀る由緒正しき場所なのだ。」


『おまえ、近づいてはならない場所って言ってなかったか?・・・そうか、ケツァルコアトルが戻した人間がおまえのご先祖だったのか。それにしても、事実も変わるんだな。』

アルヴァンは頷いた。


「しばらくここにずっといたのか?入信か?」


『あぁそうか、別れてからここに行くって言ったからか。』

アルヴァンは首を振った。


「そうか違うのか。まぁいい。今日はここの聖堂で賛歌を歌いに来たのだ。ご先祖がここにある木【七変化】を守り安寧を保ち続けたのだ。我が一族もその意志を受け継ぎながらこの宮殿を守っているのだ。」


『腐っても王族ってことか。ユリスの教育の成果ってことかな。』


「ところでユリス様から何か連絡はあったのか。」


アルヴァンは首を振った。


「そうか・・・。少し心配している。実はこの【七変化】の花が変わりそうなのだ。花が変わるとき厄災が起きる前触れになる。そなたも気をつけるのだぞ。」


『そうなのか。確かにケツァルコアトルの力の源みたいなものだからな。予知とかあってもおかしくないのか。』

アルヴァンは頷いた。


「それと、そなたがくれた木だが私も含め皆すごく気に入っている。ありがとう。光生き物なのか?木の周りを飛び回り愛らしいのだ。」


『妖精がちゃんと飛んでるのか。なら果実も実りそうだな。』

アルヴァンは親指を立てて合図した。

「また王宮へ来てくれたら案内しよう。そろそろ、準備をせねば。時間があるなら聴いて行ってくれ。」


ジェルマは召使たちを引き連れて宮殿の中へ入って行った。


「まさかこんな風につながっているとは思わなかったな。」


「アルヴァン様少し聴いて行きませんか?」

シドが影の中から言った。


「せっかくだし少し聞いて行くか。」


アルヴァンは再び宮殿の中に入り礼拝堂の後ろの方でジェルマの出番を待った。しばらくして礼服を纏ったジェルマが現れ、祭壇に祈りをささげた後で歌い始めた。



この大地に照らし出す太陽と共に我々も生まれた。主よこの祈りはその胸に届きますか。我が祈りは砂漠を越えて愛を届ける。たった一つ願うならばこの愛を降り注ぎ癒しを願うだろう。さぁ皆讃えよ。さぁ歌えよ。この刹那を共に愛せよ。愛せよ。



ジェルマが歌い終わると礼拝堂は沈黙が訪れた。そして、誰かが一人手を叩いた後つられて次々と手を叩く音が増え歓声があがった。


「話で聞いていたが、ほんと天賦の才だな。」


「本当に驚きですね。ただのダメ王子ではないみたいです。」


アルヴァンは歓声が止む前に宮殿から出てギンガルへ戻って行った。




ギンガルに戻って家に帰るとダイニングのテーブルにふさぎ込んだレオがいた。アルヴァンは扉を閉めてマアサのところへ行こうとするとレオが飛び出してきてアルヴァンを掴んだ。アルヴァンは急に掴まれてゾクッとして咄嗟に思いっきりレオを殴った。


「いてぇ!何するんだよ!」


『気やすく触んじゃねぇ!!!』


アルヴァンは怒った。その様子を見てレオは改めて話し始めた。

「テト・・・ユリアさんが出て行ってしまった。」


『あっそ。見限られて当然だ。』


アルヴァンは再び歩き出そうとしたのでレオが止めた。

「話を最後まで聞いてくれ。」


『これ以上聞くことなどない。どうせ、ユリアはマアサの家でクレアと一緒に過ごしているんだろう。それで、どうしたら許してもらえるのかって聞こうとするんだろう。冗談じゃねぇ。てめぇがバカやった結果だろう。自分で何とかしろ。』


アルヴァンは細い目でレオを見つめた。


「おまえ、冷たいなぁ。そりゃ、あの結婚式の時にやらかしたのは反省しているけど、あれはどう考えても不可抗力だ。けど、飲んでしまったのはしょうがない。だから、・・・。」


『時間の無駄だな。』


アルヴァンは再び歩き出した。レオもアルヴァンの横を歩き話し続けた。

「もちろん何度も謝ったんだ。けど、許してもらえない。一体どうしたら。」


『そもそも、晴れの舞台で一人みんなとギャーギャーやってユリアが置いてきぼりにしといて何を許してもらいたいんだ。むしろ、死んで詫びろ。』


レオはアルヴァンにしつこく弁明したり、許してもらうためのアドバイスをせがんだ。アルヴァンは立ち止まりレオに向かって頬を思いっきり叩いた。


『夫婦になるっていう心構えが無さすぎるんだ!ぼけぇ!!!無いなら無いなりの伝え方ってのがあるだろ!』


アルヴァンは指を指し示した。そこはマアサの家だった。うんざりする程レオの相談を聞かされているうちにマアサの家に着いてしまっていた。


「えっ・・・心の準備が・・・。」


弱気なレオの姿にアルヴァンは鬱陶しく感じ拳に魔力を込めて思いっきり地面を殴りつけた。すると、地面が大きく揺れて衝撃が走りマアサの家から悲鳴が聞こえた。揺れが治まった後、慌ててユリアが外へ出てきた。窪んだ地面にアルヴァンとレオが目の前にいて一瞬どういう状況なのか分からなかったがすぐさまレオから視線を逸らした。二人の間に沈黙ながれ、近所の家々からも慌てて住民が外へ出てきていた。


『まるでお子様同士の喧嘩だな。おまえら。ユリアも言いたいことをちゃんと言わないからこんなことになるんだぞ。』


「ちょっと!私が悪いんですか?」


ユリアの声にレオは驚き咄嗟に応えた。

「ユリアさん!本当にごめん!約束を守らなかっただけじゃなくて、結婚式も台無しにしちゃったよな。」


ユリアはそのレオの謝罪に食いついた。

「本当にレオさんってデリカシーがないんです。私のことを一番に考えてくれないと嫌です!」


すると、外に出てきた周りの人々がそれを聞いて「おぉー!」と声をあげた。

ユリアはキョロキョロ周りを見て恥ずかしくて下を見た。


「俺は君のことを一番に思ってるし、君以外考えられない!」


さらに周りから「よく言ったぞ!」といろんなところから歓声があがった。


『おまえら、人前でよくも堂々とこっ恥ずかしいことを言えるな。』


ユリアは顔を赤くしながらも言った。

「なら証明してください!」


レオは一瞬戸惑いを見せたがユリアに近づき顔を寄せて強引に口づけた。周りからは熱烈な歓声があがり祝福の声が広がった。アルヴァンはそんな二人をよそにマアサの家に入って行った。


『白昼盛りやがって。』


アルヴァンは机に置いてあったフルーツケーキを手に取って食べ始めた。


すると、マアサが家に戻ってきてアルヴァンに言った。

「あら、ぼっちゃん。花より団子なのかしら。」


『あんな青臭いのは雑草だ。草より団子の方がいいだろう。』


咀嚼を止めず食べ進めるアルヴァンを見てマアサはお茶を淹れた。


「まぁ夫婦喧嘩は犬も食わないって言うし、とんだ茶番ってことかしら。」


『そういうことだ。』


アルヴァンはこの二人が仲直りしたらしたで家の中が惚気全開で気が滅入りそうだったので、今日はクレアのところへ行って手料理を振舞ってもらったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ