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テト  作者: 安田丘矩
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お兄さんは出てこないでくれ

新年あけましておめでとうございます。

けど、正月という感じもしないですね。景観もそうだけどライフスタイルも。

昔は、元旦なんて休みで年末までにいっぱい買って冷蔵庫の中が溢れてる。

今だと『あっ、いりごま買い忘れちゃった。ちょっとスーパー行ってくる。』

初詣に行けば少しは年を迎えた気にはなるけど、去年の伊勢神宮周辺

伊勢西インターから10キロ以上、さらに伊勢市内は駐車待ちで3時間・・・それ以上

たまたま、旅行中で志摩から周っていたいたけど一時間並んでも駐車場に入れない。

もうあきらめて帰ったよ(泣く)まぁ別で初詣して経も聞けたので徳が高かったけど。

一つだけ分かったことがある、『やっぱりわが家が一番だ!』(身も蓋もない。)

ユリスの話だと兄の方は堅くて、魔法は効きにくい。普通に幹部クラスの実力はあると聞いていた。その話が確かならこのまま戦い続けるのは不利。ついに頭が飛び出しシーマから脱ぎだすようにゴツい胴体が出てきた。アルヴァンはシーマから出ようとしている兄を目の前に行き先ランダムで移動魔法を唱え始めた。兄が体からすべて飛び出し、こちらに飛びかかってきた。まがまがしい姿をし形相は、しっかりとアルヴァンの目に焼き付いた。


「間に合え。」


魔法が発動。兄の鋭い爪がアルヴァンの喉に届くほんの10センチ。何とか難を逃れることができた。



しかし、たどり着いた先は


「寒いんだけど。」


真っ白な雪原に雪が舞っている。白銀の世界に飛ばされてしまった。


「仕方ないじゃないですか。ランダムにしたんだから。」


「移動魔法だと行き先が特定されるから仕方なく。それに狙われている以上。足がつかないところじゃないと。」


「これからどうします。ここはどこなのか分からないですよ。」


「そうだな・・・。歩くか。」


「・・・。アルヴァン様。今回に関しては一生ついてきます、は言いませんよ。ちゃんとこれからのことを考えて行動していただかないと。」


《こいつがまともなことを言うとなぜか腹立つな。》アルヴァンはシドに向かっていった。


「まずは、オーケンの回復だな。それで元気になったら、自分の住処へ帰れるところまで送り届ける。それから再び王都を目指す。とりあえずはここがどこなのか近くに村や標識を探すしかない。以上。」


「この鳥のためにそこまで尽くすんですか。」


「こんな目に合えばさすがに見捨てられないだろ。」


「やむをえませんね。行きましょう。」




真っ白の地面に小さい足跡とその後ろを黒い影が付いていく。遠い木を目印に歩いても景色はさほど変わらない。だんだん雲が黒くなっていき雪もさらにふぶいてきてしまった。


「アルヴァン様。まずいですよ。このままじゃ氷漬けです。」


アルヴァンは立ち止まり、カエルからランプを取り出した。そして、ランプの灯に話しかけた。


「思いっ切り正面に火炎弾フレイムキャノンを撃ってくれない。」


その灯は赤い火から淡い紫に変わり、ランプのガラスから灯が漏れ出した。火が大きくなり龍の形を象った。その灯はアルヴァンに言った。


「お前、絶対やる気ないだろ。」


アルヴァンはこの灯に言われたくはなかった。


「そんなことないよ。」


「そもそも、あの気持ち悪い物体。お前容易に倒せただろ。何故しない。」


《ほんと見透かされるようで嫌になる。》一々答えるのが面倒なので


「そんなの本気を出すまでもないだろ。」


「・・・。」


 この灯はフレイムゴーストという幽霊系の魔物で、龍の遺恨から生まれた。名はメティスと言い、アルヴァンがまだ魔王城に入る前のこと。各地を転々として野営し焚火をしていた時のこと。急にあたりが寒くなり、何事かとアルヴァンは周りを見渡した。無数の青い光が火に向かって集まり、そして光が膨張しあたり一面が真っ白の光に包まれた。アルヴァンは目を塞ぎしばらくして再び目を開けた。すると焚火の火は消えており、アルヴァンは再びあたりを見渡しても何もいない。一体何だったのかと思いながら再び焚火に火をつけようとした。すると燃えくずの中に小さな赤い玉があった。アルヴァンは拾い上げ、じっとその玉を見つめた。その玉はかすかに火を灯したが熱くはなかった。どうしようか迷った挙句、今使っているランプにしまい観察することにした。


 初めは一見普通の火だった。数日すると火は大きくなってガラスの中が激しく燃え火の形を変えている。さらにしばらく経つとランプから火があふれ出してカエルが飲み込むのを嫌がるので水の中に沈めようとした。火はすごく嫌がった様子だったので


「おとなしくできるよね。」


アルヴァンの優しい脅しに火は落ち着いた。それから何年か経って意思を持つようになり、話せるようになった。会話を通じてフレイムゴーストであることを知った。フレイムゴースト自体は知っていたが生まれる過程までは見たことなかったのでアルヴァンは改めて驚いていた。そして今までずっと一緒に旅をしてきた仲間だった。だからこそ、メティスはアルヴァンのことはよく分かっていた。アルヴァンは魔物らしくないのだ。本能的にでなく、理性的に物事を判断している。そんな魔物がよくここまで生きてこられたと思うと脱帽するが、むしろ魔物らしくないところが長生きの秘訣なのだと思っている。


「火炎弾を撃ったところでせいぜい4キロ先くらいしか雪は溶かせないぞ。


「それで十分だ。上に飛ばしてくれ。」


「上だと?」


シドもそれを聞いて言った。


「アルヴァン様。頭がおかしくなったんですか。」


「おかしくない。これを使うんだよ。」


アルヴァンが取り出したのはオオタンポポの綿毛だった。ただ、吹雪によっていまにも飛ばされそうだった。


「魔法を放ったらすぐにランプに戻ってくれ。」


「おいおい、そんなことしたら。」


「上空へ飛べればいい。はやく。飛ばされる。」


アルヴァンは綿毛を持って飛ばされないようこらえている。アルヴァンの無茶ぶりにメティスは


「もうどうにでもなれ。」


呪文を唱え火炎弾を真上に放った。放った途端大気が一気に上昇し、すかさずメティスはランプに戻りアルヴァンは一気に上空へと飛ばされた。すごい勢いで上へと飛ばされたものの、吹雪により南西へと流されていった。

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