第伍章
大変お待たせしてごめんなさいね。第伍章開幕です。
お盆前だから何とか仕事をやっつけないと思いながら
先日、副交感神経がバグってしまった!
こんな暑いのに寒気。涼しい部屋なのに布団に入っていると汗が止まらない。
これは、風邪なのか、暑さのせいで人間バグったのか。
そんなこんなで掲載がお盆休み前になってしまいました(言い訳)。
みなさんも、殺しにかかる暑さが続きますがご自愛ください。
さて、第伍章ですが話がガラッと変わる展開になります。
私としてはここまでの話はほんの序盤に過ぎないと思っていました。
正直、もっとフワフワしてほのぼのした柔和な物語の方がいいのかと思う節もありますが
その点現実的にそんな都合のいい展開なんて面白くないと思いました。
自分が一体何を伝えたくて、どうしてこの展開があったのかとご覧いただいた皆様に
伝わればいいと願っております。長々と綴りましたが再び書き進めて行きますので
これからもよろしくお願いいたします。
安田丘矩
イレイア国における隕石の落下および魔物侵略による滅亡の記録
イレイア国の主都カイノスは一夜にして壊滅した。突如上空から落下した隕石の衝突によって跡形もなくなった。近隣の街からの応援もあり生存者捜索や被害状況の確認が行われたが、倒壊による下敷き、隕石の放射熱により人間の姿さえ分からなくなった遺体が多く難航した。運よく瓦礫の下敷きになりながらも強く圧死されず見つけ出されるまで生き延びた市民や、衝撃波で吹き飛ばされて外傷があるものの奇跡に助かった市民も少なからず発見されているが稀な話だ。
主都カイノスには10万人の人々がいた。国王含め、市民、他国の人間、他の市町村からやって来た人、そのすべての人が犠牲になった。半径30キロメートルにわたって瓦礫が吹き飛んでいることからその隕石の落下が凄まじいものだったかを物語っている。カイノスが壊滅して以後多くの国民が訪れては身内の安否を懸命に探ろうとしたり、供養のために慰霊を捧げた。
しかし、その悲劇がありながら間もなく上位の魔物による支配が加速していった。国の主都が亡くなり、王さえも死んでしまった。この状況で治安や秩序が保たれることはなくイレイア国に住む人々は降伏を余儀なくされていた。一部、魔物による襲撃から抵抗する者もいたが圧倒的な力の前では成すすべもなく死んでいった。この魔物による侵略を早める結果となったのはギンガルに出没していた小さき魔物テトが襲撃してきた魔物により倒されたことによるものだった。
隕石が落下してしばらくしてギンガルは魔物たちによる襲撃があった。イレイア国ではこの魔物の出現によって一時警戒していたが特に危険な様子もなくむしろ国の防衛や戦力として大きく貢献してきた。一部関係者の話しではこの国の礎を築くことに貢献した魔物だと言っていたがはたして事実なのかは不明だ。その魔物は魔王と名乗る者エネヴァーによって倒されたと目撃者は言っていた。そして、その魔物はエネヴァーの能力なのか黒い禍々しい沼?のようなところに沈んでいき姿がなくなってしまったと。
そして、もう一人ドラゴンを退治したレオ氏は謎の魔物の出現によって心臓を貫かれた。貫かれた後地面に倒れ死んでしまったかのように思えたものの再び立ち上がり侵略者と交戦した後動かなくなったそうだ。イレイア国を代表する大魔導士レノヴァの娘で妻のユリア氏がレオ氏の亡骸を自宅に連れて帰った。そして、全焼した自宅には2人の遺体が発見され一緒に亡くなっていた。
現在、ギンガルはグラッツと名乗る魔物によって統治されている。無慈悲に町人が虐殺されたりすることはないものの侵略前の活気や賑わいはなくなり、命がいつなくなってもおかしくないプレッシャーが漂い町から逃げる者のいる。逃げたとして追撃はないもののどこの村も街もすでにエネヴァー配下の魔物によって統治されているため逃げる場所もない。結局、見えない枷に縛られ続けるのだった。
ベルリッツ王国の人口は減り続け、もはや奴隷として従事している者しか生きていない現状だ。それはまだマシな方で、家畜同然の人間はその人口に入っておらず、ただ魔物にくわれるために生かされ、繁殖させられる。その世話をするのも人間だからおかしな話だ。お互い何を思っているのか。
イレイア国も支配が進んで時間は経ったがまだここまで至ってはいない。けれどもいずれこのような無常なことが怒るのであろう。一人の英雄が平和を願って建国された国はもうない。人も秩序も安全も命もすべて奪われていくのだろう。もう誰も止めることができない。人々は再び英雄の帰還を待ち望んでいる。
男はギンガルにいた。そして、レオが住んでいた家の横に無垢な大きな石に無理やり名前が彫ってある。レオとユリアの名前があった。その男は花を一輪手向けて黙とうした。黙とうを終えると町の方へ歩いて行った。道中では道が陥没したり荒れたままのキビ畑が風に揺れている。壊された柵に腐敗臭を放つ水牛の死骸、家畜小屋が無惨に倒壊し、そこのファームは誰もいない様子だった。
町に着くと誰一人外に出ておらず、魔物が徘徊している。こちらに目を向けてくるが特に襲ってくる様子もないが緊張が伝わってくる。
「ちょっと君。ここへ何しに来たんだい。」
後ろから声がして振り返ると水色の長い髪で体格のいい青年がこちらに歩み寄っていた。
「取材に来ました。私はパタリオスから来た外交員です。イレイア国の壊滅したことを受けて調査兼取材に来ました。」
「それはスパイ活動ってこと。」
「そう見えなくもないですが。近隣国ではイレイア国で何があったのか分からず、脅威に感じている。少しでもイレイア国内の情報を知りたいと思うのは普通なのでは。」
「そうだね。君の言う通りだが・・・『悼み』。『嘆き』。」
しかし、男は何ともなかった。
「どうしたんですか?急に。」
「きみは一体何者なんだ。」
「さっきも言ったじゃないですか。パタリオスの外交員。」
「いや、違う。お前は普通じゃない。」
グラッツは戦闘態勢に入った。男はため息をついた。
「やれやれ。頭が固いというか。知らない方がいいことだってあるだろ。」
男はパン!と手のひらを叩いた。男はグラッツの視界から消えた。グラッツは一瞬のことだったので一体何があったのか分からなかったが急に首元をぬめる何かに触られた感触がした。グラッツが振り向くとそこにはその男が立っていた。
「ふーん。結構こだわって人間を食べてきたみたいだね。君。」
「お前は一体何なんだ。」
「君さぁ・・・悪食って知ってる?」
男はニヤリと笑った。