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テト  作者: 安田丘矩
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羽目を外しすぎると後々収拾がつかなくなる

その夜のこと、アルヴァンはユリアの部屋を訪れていた。ユリアから質問攻めにされるもどこまで答えていいものなのか迷いながら話せるところは打ち明けていた。


「おまえ、あんなのでいいのかよ。」


「アルヴァンさんってやっぱり意地悪ね。」


「アルヴァン様はいつだって意地糞悪いですよ。」

シドはユリアの肩を持ってガヤを入れた。


「お前は後で覚えておけよ。」


「けれど、驚いたわ。どうやって王様をどうやって説得したの?」


「昔のよしみが宥めてくれたそれだけだ。」


「そんな人いらっしゃるの?」


「あぁ、切っても切れないもんだ。」


「アルヴァン様は経歴だけだとすごく優秀なんですけど、どうも食欲しかないので結局意味ないんです。」


「お前は一々うるさい。」


ユリアはクスクス笑った。

「ところで、しばらくの間どこへ行っていたの?マアサさん心配していたわよ。」


「ちょっとバカンスだ。」


「こんな時に?アルヴァンさんって嘘が下手ね。」


「嘘じゃないさ。オアシスでゆっくりと・・・お話を聞かされた。」


「ほんとうなの?」


ユリアはシドの方を見た。

「えぇ・・・まぁ・・・。荒くれ者の王のご子息が砂漠で倒れていた神の信託者を名乗る者を王子の家庭教師にしたところから、王子は反抗するけれどもその家庭教師の愛の深さを知っていつしか恋に落ちてしまう。そんな三本立てを聞いてきました。」


「そんな恋愛小説みたいな話をオアシスで?ますます信じがたいわ。」


「まぁ俺も正直聞かなければよかったと後悔した。」

アルヴァンは視線を逸らし窓の外を見た。


「シドさんからのあらすじを聞く分だと興味深いんだけど、聞かない方が良かったってなぜ?」


シドが間に入って話した。

「その話は禁断の恋みたいな話なので、刺激が強いって言うか・・・人を選ぶと言うか・・・。」


「話を濁されると余計気になりますね。」


「とにかくただの気分転換だ。あいつが驕っていたから腹が立ってな。まぁもうお前を娶ることは決まったようなことだし、お幸せにな。」


「なんだか腑に落ちないのですが・・・。」


「気にするな。」


「そう・・・。アルヴァンさんほんとうにありがとう。」

アルヴァンは頭を掻いた。




レオたちがギンガルに帰って間もなく結婚式が執り行われた。アルヴァンは教会に入らずに礼拝堂に準備されている料理をつまみ食いしていた。


準備している礼拝堂のおばさんがアルヴァンに怒って言った。

「こら!まだみんな式の最中でしょ!それより式に出なくていいのかい?」


『うるせぇなばばぁ!別に俺が見たところで何にも嬉しくのないわ。あいつらが良ければいいだろ。』


アルヴァンの何かを訴えかける眼差しにおばさんは言った。

「そうね。寂しいのね。ごめんなさいね、気を遣えなくて。」


『いや、なんでそうなるんだ。』


おばさんはキッチンからオムレツを持ってきてアルヴァンに渡した。

「これでも食べて元気だしな。」


『いや嬉しいけど、違うんだけど。』


アルヴァンは不満に思いながらオムレツを食べ始めた。おばさんはキッチンに戻って行った。


「アルヴァン様?式に参加しなくていいんですか?本当に寂しいんですか?」

シドは影からこそっと言った。


「くどい。」


「正直、二人の関係を焚きつけたのはアルヴァン様にも責任があると思いますよ。」


「なんでだよ。」


「まず、レオを始末できなかったこと。調子に乗ってイレイアへ行って自分の顔を売ってきた挙句にユリアさんに出会ったこと。そして、ユリアさんをギンガルに招き一つ屋根の下で暮らすようになってしまったこと。二人の関係を阻止することができずプロポーズをさせてしまったこと。それから・・・。」


「もういい。そもそも、全部俺が悪いのか?」


「はい。」

シドは清々しく言い切った。


「けぇ。それはそれは悪うございましたよ。」


「拗ねないでくださいよ。」


「拗ねてない。そもそも、俺らが知らないことが多すぎて事態が一転二転し過ぎなんだよ。正直俺にも何が正解なのか分からない。本望ではないがユリアの望み通りに結婚させてやりたいと思っただけだ。」


「レオの望みは叶えないのですね。」


「あいつの望みはもう最初にギンガルに連れて来てからもう叶っている。まぁ殺し損だったけどな。」


「そうでしたね。これで何も起きなければいいのですが。」


アルヴァンはため息を吐いた。

「こんなことなら、魔王城なんて忍び込まなければよかったと後悔するわ。」


「アルヴァン様、幼稚です。」


「うるせぇ。たまにはセンチメンタルになりたい時だってあるんだよ。」


すると、披露宴会場に続々と人が流れ始めてきて、アルヴァンに気づいたシルバがアルヴァンに話しかけてきた。

「ここにいたのか。ユリア様が探していたぞ。」


『俺は探していない。』


「なんだ、いじけているのか?まるでレノヴァ様と同じだな。」


『俺を子離れできない堅物親父と一緒にするな。』


そこへアルマのパーティもやって来た。


「おっテトさん。こんなところで抜け駆けかぁ。」

アルマがしゃがみ込みアルヴァンに話しかけた。


「テトさんいないんだもの。みんな探しちゃったわよ。」

カトレアがアルヴァンを持ち上げて机に座らせた。


『俺をガキ扱いするな。お前らより年上だぞ。少しは敬え。』


「立役者がいないのでは式も盛り上がらない。ここからは逃げるなよ。」

ガトレーは逃がさないようにアルヴァンの横に立った。


『ちぃ。冒険者風情が。』


アルヴァンは瞬間移動で扉の外まで移動して会場から出て行った。皆、アルヴァンを探しているがあまりに疎ましいので屋根の上に移動して様子を伺った。しばらくして会場から歓声があがり、披露宴が執り行われた。入りきらなかった人たちは外で飲んだり食べたり踊ったりと賑わっていた。


「本当に脅威なんて来るのかと思うくらいだな。」


「アルヴァン様、おそらく分かっていらっしゃると思いますが・・・。」


「何を急に改まって。」


「戦力不足って分かってます?」


「何を言っているんだ。俺一人で十分だ。」


シドは思った。『我が主は脳筋だった。』と。


「何か言いたげだな。」


「いくら、アルヴァン様が強くても、エネヴァー勢はグラッツとエリーゼがいます。それとその配下。アルヴァン様一人が相手しても私一人でユリアさんを守り切るのはできません。悔しいですが。」


「そうだな・・。ギンガルの皆も無事でいて欲しいとなると無理があるな。せめてドミニクたちと合流できればいいんだが。」


「難しいですね。」


「しょうがない。約束の日までの協力を仰ぐか。」


「宛てはあるんですか?」


「ドラゴンたちかな。」


「あぁフィンクス様に打診するんですね。助力いただけるのでしょうか。下手したら大災害になりかねませんが。」


「まぁイレイアにとってはドラゴンは脅威だが味方になれば心強いだろう。ちょっと話に言ってくるか。」


「そうですね。」


すると、会場からレオたちが外へ出てきた。レオは担がれて胴上げされた。


「ほんと、おめでたい奴だな。」




披露宴も終わり家に帰ってきたが、レオはアルマに担がれてきた。そして、ユリアは怒っていた。

「レオさんのバカ。」


アルヴァンは細い目でレオを見た。


「テトだん!どおぉっこ行ってたんだ。さがしぃいいぃ・・。」

するとレオを担いでいたアルマが倒れ、レオも体勢を崩して床に倒れた。


「ほんと、学習しないな。こいつら。」


ユリアはアルヴァンの顔を見てため息をついた。アルヴァンとユリアはレオの部屋へ二人を連れて行き床に置き去りにして部屋を出た。


「まったく。もう飲まないって言ったのに。」


「男の飲まないはあてにならんぞ。」


ユリアは不満に思いながら部屋に戻って行った。さすがにユリアが気の毒だったので、アルヴァンはレオとアルマの服をすべて脱がせて二人をベッドに寝かせた。


「バカ二人お似合いだな。」

捨て台詞を吐いて部屋から出て行った。


翌朝、アルヴァンとユリアは朝食を取っていると


「うわぁあああああ!!!!」


「なんですかいきなりってお前こそなんでいるんだ?!」

「ちょ!レオさん・・・まさか!」


「誤解だ!それに俺も酔っていて何も知らない。」


「昨日誓ったはずなのに、レオさんが不貞を・・・。俺お婿に行けない。」


「だから、違うんだって!」


台所でその声は丸聞こえだったがユリアは心配せず「バカ。」と言った。


「ほんと、ダッセー。あいつがお前の夫なんだぜ。」

アルヴァンはユリアを煽った。


ユリアはアルヴァンに大声で言った。

「アルヴァンさんの意地悪!」


アルヴァンは面をくらったのだった。


皆様、第肆章ご拝読誠にありがとうございました。

たぶん、内容的に一番長かった章になってしまいました。

もっと分けた方が良かったのかと反省しています。

さて、いよいよ第伍章に入りますがここから、話がガラッと変わっていきます。

ただ、迷っているのが細かく書いていくべきか、サラッと流していくべきかと悩んでいます。

ちょっと、内容が残酷な場面が出てくるのでこういう展開は表現方法をどうするべきかと。

次の章はいよいよ話の区切りとなる章になので是非ご覧いただけたら幸いです。

これからもよろしくお願いします。


安田丘矩

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