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テト  作者: 安田丘矩
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お試しって聞かされると裏があると思ってためらう

土用の丑の日ってウナギを食べる儀式?

ウナギは好きだけれども、ウナギを食べる日みたいに固定されているのはいかがなものか。

スーパーとかで売られて結局売れ残っているの所。そして、過剰なまでにコンビニでも売られている

なんか、絶滅危惧種に指定されているとか言われている割には過剰なまでに売られ続けるのはなぜだろう。

恵方巻のことを思い出してしまった。そんなにウナギってその日だけで食べられるものなのだろうか。

なんだか、流通業が仕掛けたビジネスが悪い方向へ行っているようにしか見えないんだが。

この日はウナギ屋さんしか適用されないってすればまだ粗末にはされないのかな。

結局、今日はウナギではなくおそばを食べに出かけた。


「うはは。うはは。うはは。うはは。うはは。」

「よーぎぇれひー。よーげいぇれひー。まんてぃるか。まんてぃるか。」

「ごるとぅるきぃー。ごるとぅつきぃー。」

「えははー。えははー。おーぼろっさ、えははー。」


宮殿の中には動物の仮面を被った魔物?たちが何かの儀式を行っていた。祭壇にはテスカトリポカの像と黒光りする大きな黒曜石が祀られていた。アルヴァンは御座のひいてある席に案内された。


「さぁこちらに。」


「あぁどうも。」

アルヴァンはとりあえず座った。


松明の光が揺れる中儀式の掛け声がされに宮殿内の不気味さを煽っていた。


「何もお構いもできないがこれを食べておれ。」


ピグマンは聖杯に水を注ぎ、お茶請けに芋粉と芋密で練られたベタベタした食べ物が振舞われた。


「これはご丁寧にどうも。」

アルヴァンは出された水と食べ物を見て思った。

『この水は飲んでも大丈夫なのか・・・聖杯に入った水って・・・。この食べ物もなんか怪しいんだが。』


「気にするな。テスカトリポカ様を崇拝する者は皆同士だ。」


「あの・・・まだ入信希望なので詳しいお話を聞けたらと。」


「なんと!入信希望者か!それは失敬。では、テスカトリポカ様の武勇伝と共に勧誘させていただこう。」


ピグモンはまるでその光景を見てきたかのように淡々と話し始めた。アルヴァンは特に真面目に聞くことはせず、おやつを食べながら要点だけ聞き取った。


テスカトリポカは夜に潜んでいた。けれども、兄であるケツァルコアトルは太陽を司り大陸に富と恵みをもたらし人々に崇拝されていた。兄の影響力が強まる中でテスカトリポカは嫉妬した。そもそも、テスカトリポカは負の感情を起こし戦争の火種や厄災を生み出し兄のお膳立てになることをしてきた。そのバランスにより世界は平和と不和の塩梅を取ってきたのだった。


けれども、ケツァルコアトルはテスカトリポカの行いに干渉したり、やめさせようとしてきた。テスカトリポカはついに怒りを露にし、ケツァルコアトルを陥れて戦いとなった。その果てにケツァルコアトルは赤い星に封じ込められ、テスカトリポカはこの世界を支配するようになった。



「我々は、テスカトリポカの夜の世界に生きる者だ。今まで、追いやられてきた我々がこの世界を闊歩して歩ける日が近い。本当にありがたい話だ。」


「そうか、お前らも苦労しているんだな。ところで、夜の世界では何をしていたんだ?」


「それは、生贄となる人間を狩ったり。呪いを広める儀式などテスカトリポカ様への忠誠を誓い日々精進していた。」


『やっていることは悪行なのか。そうなると俺たち魔物と変わらないってことか。』


「それでどうだ。テスカトリポカの信者になるのか?」


アルヴァンは芋の奴を匙でぐるぐると混ぜながら少し考えた。

「ところで今やっている儀式は?」


「あぁこれか?これはテスカトリポカ様への祈りを捧げている。こうやって祈りをささげることでテスカトリポカ様の力に変わるのだ。」


「神様への崇拝って力になるのか。不思議なものだな。」


「そうだとも。お前も祈っていけ。」


「祈るって・・・。」


アルヴァンは儀式の様子をじっと見つめているとこっちを何者かが見ていることに気が付いた。そして、アルヴァンは祭壇へ歩き出し両手を合わせて目を閉じて祈り始めた。ピグマンは感心して二回頷いた。


しかし、アルヴァンが祈りではなく呪文を唱えていた。誰に気づかれることもなく唱え終わり発動した。

そこに居た夜に生きる者はどこかに飛ばされてしまった。


急に静かになった宮殿内を見渡してアルヴァンは右の柱の方へ話しかけた。

「テスカトリポカ。いるんだろ。信者たちはお空へ飛ばして今頃お日様を浴びて健康的になったんじゃないか。」


柱の後ろから猫の仮面をかぶった者が現れた。

「なんだ。気づいていたのか。勘が良すぎるのも困るね。」


「その仮面だろ。おまえが幻想で出てきた時その仮面をつけてただろ。」


テスカトリポカは笑った。

「そうか。それは迂闊だった。けど、私はこの仮面を変えることはできないので仕方ない。それより、君覚えていてくれたのか。嬉しいな。さすが次の遊び相手だね。」


「そうだな。気が変わった。お前の相手をしてやる。」


「それは威勢のいいことだ。それより、君すごいね。こんなに早く手掛かりを突き止めるなんて。また近いうちにも会いに来てくれるのかい。」


「今回はたまたまだ。別にお前なんか特別会いたいとも思わない。」


「意地悪だね。私はこんなに会いたいのに。」


「一つだけ教えてくれ。俺は昔お前に逢ったことがあるのか?」


「うーん・・・逢ったことがあるけど、逢ったことがないかな。」


「なんだよ、それ。」


「君は私が能力を与えたものの一つに過ぎなかった。むしろ、当時の能力付与者が今も現存しているとは思ってもみなかった。」


「当時って・・・ケツァルコアトルと戦った時か?」


「察しがいいんだね。まぁ世界を混沌とさせるときに利用したってことだけど。私は君に『悪食』という能力を授けた。死ぬまで飢えに苦しむ力で生き物なら何でも食べてしまう。どうして、その能力が抑えられたのかは分からないがまた兄さんが余計なことをしたんだろう。」


「『悪食』か。俺はその時の記憶はない。おそらくその能力の代償だったと思う。だとしたら、お前は俺にとっても仇ってことだ。」

アルヴァンは魔力を練り始めた。


「まだ、戦うのは止してほしいな。まだ、君の余興の番ではないんだ。」


「神に勝てるなんて思ってはいないさ。けど、神に与えた力が俺にもあるなら戦えるんだろ。」


「君ってわりと単細胞なんだね。」


「うるせぇ。」


アルヴァンは瞬間移動でテスカトリポカとの間合いを詰めた。テスカトリポカは動じず何のモーションもなくアルヴァンは吹き飛ばした。吹き飛ばされたアルヴァンは飛ばされる中で閃光を放ち、テスカトリポカはその閃光を打ち消した。


「血の気の多いことだ。私に敵うはずなどない。」


テスカトリポカは中央に移動しアルヴァンに掌を向けて結晶を生み出し次第に大きくなっていく。アルヴァンは壁を蹴って、再びテスカトリポカの方へ飛んでいき結晶を思いっきり殴った。結晶は粉砕され辺りに飛び散る中でアルヴァンはテスカトリポカの左下側へ瞬間移動し、脇を切り裂いた。


しかし、テスカトリポカの感触はなく幻想だった。アルヴァンは距離を取り様子を伺った。幻想が完全に消えたタイミングで砕けた結晶がアルヴァン目掛けて飛んできた。アルヴァンは自身を中心につむじ風を起こして結晶を回避した。


「いい反応だね。さすがに年の功ってやつなのかい。」


「上からの物言いなんて聞きたくない。試すんじゃなくて殺しに来いよ。」


「それはだめ。遊びたいだけなんだから。」


「このままじゃ埒が明かないなぁ。」


テスカトリポカは不気味な笑い声をあげ始めた。

「実に愉快だ。もっと楽しませてくれ。」


アルヴァンは睨みつける中でかすかに声が聞こえた。

『願いを還すんだ。願いは空に還るから。』


誰の声かは分からなかった。ふと頭の中で手に入れた願いのことを思い出した。


「空に還るってなんだ?」


アルヴァンはテスカトリポカに向けて泥濘と圧縮を同時に発動した。しかし、テスカトリポカにうち消された。


「君何をやっているんだ。私がばらまいた能力で倒せるわけないだろう。」


「そうだよな。この能力はお前の能力じゃないんだよな。」


この能力はもともとケツァルコアトルが人々を豊かにするための能力だった。もう、その人間がいない今この願いたちは必要ない。


「何を言っているんだ?」


アルヴァンはただ、この二つの能力を考えながら祈った。

「空に還りな。」


するとアルヴァンの身体は光始めて、二つの優しい光が飛び出した。その光は宮殿の出口から外へ出ていき空へと向かって行った。やがて、この当たり一面が優しい光に包まれた。


「貴様!願いを還したな!!!」


そのままアルヴァンもテスカトリポカも見えなくなった。


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