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テト  作者: 安田丘矩
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お兄ちゃんはここだよ

今年ももうすぐおしまいですね。どんな一年だったでしょうか。

一つだけ分かったことは自分が願わない限り、物事って成就していかないと感じた一年だった。

もちろん何かを続けていくことは大切だけど自分が上手くなりたいとか成長したいとか

小さくてもいいんです。届く願いから叶えていくことが本当に大切なんだと。

来年は良いことも悪いことも起きるかもしれません。

それでも、自分だけが望まないと変わっていかないし変わっていけないんだと思います。

なので、皆さんが来年素敵な年を迎えられることを祈りつつ、自分の叶えたいことが叶うよう応援しております。よいお年をお過ごしください。

アルヴァンは回復魔法を唱え応急措置をし、傷口は落ち着いたが大分衰弱している。


「これ以上飛ぶのは無理ですね。」


シドは呟くと光の矢が飛んできた方向を見た。


「明らかに狙ってきてたね。僕たちを…。」


アルヴァンは自分のローブに張り付ていたあるものを取り出した。


それは5センチほどのカエルだが、生き物ではなく魔具だった。このカエルはガマブチカエルと言って使用者が魔力を注ぎ込み続ければ半永久的に使用することが可能で、5センチと小さいながら飲み込ませたいものを前に置くと口の大きさを変えることができ、なんでも入れることができる優れもの。飲み込んだものの大きさにかかわらずカエルの大きさは5センチのままで携帯に便利だった。ただし、生ものは腐るので早めに処理する必要がある。カエルをオーケンの前に差し出しオーケンを飲み込んだ。さすがに大きいものを飲み込ませるとシルエットが一瞬浮かび上がるがすぐに小さくなり元の大きさに戻っていった。


アルヴァンはカエルをローブに戻したときに時にシドが言った。


「アルヴァン様。来ます。」


アルヴァンの前に現れたのはエネヴァーの部下のシーマだった。白い重たい装いして緑いろの毛並みと睨みつけるような鋭い眼光が特徴だった。


「思ったより頑丈なんですね。アルヴァンさんって。」


シドはシーマを挑発した。


「身をわきまえたらどうだ。シーマよ。お前ごときがアルヴァン様に敵うはずもない。」


「あぁいたのか。無能な影の一族さん。あまりにも存在が薄くて見えなかったよ。」


シドは激高した。


「てめぇ!!いいきになってんじゃねぇ!」


「やめろ、シド。バカに見えるぞ。」


「アルヴァン様!それはひどすぎます。」


シマは大きく笑った。


「相変わらですね。笑える。さて、エネヴァー様はアルヴァン様をおもちゃにしたいと言っていたが、俺はここで排除しておかないといけないと判断した。なので死んでくだせぇい。」


《うちの魔物たちって碌な奴いねぇなぁ。》アルヴァンはこいつを相手しないといけないことに疎ましさを感じたが一つ聞いてみることにした。


「あの街から火の手が上がっているけど君がやったのかい。」


「そりゃ魔物の領分だろ。人間なんて滅ぼしてなんぼじゃ。」


アルヴァンはあまりにシマが魔物っぽいことを言ったので思わず感心してしまった。アルヴァンの場合は危害が有無で判断している分、快楽的に人間を殺すことはしない。むしろ、人間の作り出す食べ物が好きなので危害を加えないようにしている。


「シーマってすごく魔物っぽい。」


「いや、魔物なんですけど。何変なこと言っているんですか。」


「さっきの光の矢、君の能力?驚いたよ。まさかここまで届くなんて。それで何の用事?」


「用事も何も、あんた殺しに来たんだよ。」


「それってエネヴァーの指示なの。」


「それ答える必要ある。まあ単にエネヴァー様の好きなものを横取りしたくなるもんじゃない。」


アルヴァンは指の形でシドに合図を送った。シドはその合図を見てアルヴァンの背後に移動した。


「そういうことね。本当魔物らしいや、君。」


「おしゃべりはここまでだ。ここで死んでもらう。」


ある程度予想はしていた。品格者の能力を奪ったところできっと仲間内で殺しあうことになる。これはそういう意味も含まれている。そう能力によっては王にすら届くことのできる能力を得る。本当にそれでいいのか?ディオは一体何を考えていたのだろう。さてこいつをどうしようか。他に何の能力を持っているか分からないこの状況。もちろんそれはお互い様かもしれない。普通に戦えるのか。


迷ったあげくにアルヴァンは瞬間移動でシーマの後ろを取った。きっと愚策なんだと分かった上で一矢閃光を放った。シーマは右へと避けた。白い装いの下から一本の腕が飛び出しアルヴァンを指さして光の矢を放った。さすがに避けきれずアルヴァンは撃たれた。そのまま後ろへと飛ばされていく。地面に落ちた後、アルヴァンは影の中へ入っていった。


その一瞬、シーマは油断したのか後ろ振り向いた瞬間、アルヴァンは能力を発動した。足元がぬかるみに変わりシーマの脚を奪った。


「シーマ。お前が侮辱した一族に弄ばれてる気分はどうだい?」


シドの持つ影の能力で『影遊び(ドッペルゲンガー)』は、契約者の影から契約者本人の分身をつくる技で、実体はないものの契約者本人の行動を分身に反映できるので分身が攻撃を受けない限り敵に気づかれにくい。初見であれば尚更。アルヴァンは分身体とすり替わった後シドの背後に移動し一瞬の隙を見ていた。


「何が弄ばれているだぁ!こんなぬかるみ抜けない。魔法も使えない?」


「ははは。恐れ入ったか。さぁ今です。アルヴァン様。」


「いや、ダメだ。あいつはもう一匹いる。」


「かっかかぁぁぁあああ!」シーマは痙攣とおどろおどろしい声を上げた。シーマの背中が大きく膨れ上がり、もう一本腕が飛び出し何かが出ようとしていた。シドは初めて見る光景に。


「なんなんですか!あれ!」


「あれは兄の方だ。普段の姿は弟。弟の体に兄が寄生している。」


「言っていることが訳わからないのですが。」


「俺だって兄の方なんで見たことない。ユリスが教えてくれたんだ。シーマについて。」




ユリスは魔王城にやってくる魔物の健康状態の管理し、採血や体の一部の採取などこまめにデータを取りながら研究・・・診察を行う。アルヴァンがお茶を頂きながら、仕事中のユリスと会話していると、


「シーマはね。お兄さんに会ったことがないの。」


「あんまり魔物の身の上話を漏らすのはよくないんじゃない。」


「そうなんだけど。それが複雑なのよ。だってすぐそばにいるんだから。」


ユリスの言葉にアルヴァンは何を言っているのか疑問に思った。


「じゃあ会いに行けばいいんじゃないの?」


「違うの。お兄さんは弟の中にいるの。」


「心の中に?」


「だから、体の中に。」


アルヴァンは余計に意味が分からなくなった。話が見えてこないのでその話に乗ってみた。


「シーマは一体何者なの。」


「シーマ君は寄生型の魔物なの。お兄さんは本体でシーマ君の体内で操っているのよ。だから会うこともできないし、ましてお兄さんが出てくる時はお兄さんの操作が止まるからシーマ君は止まってしますの。」


寄生型の魔物なのに寄生されている。お兄さんも寄生している。ややこしい話だ。


「それでそのお兄さんにあったことあるの。」


「えぇ、診察の時に。最初に築いたのは体内を透写した時に何か別のものがいることに気づいて、シーマ君の背中を見せてもらった時に眼があったの。まぁ魔物だからよくあることだけど、その眼と合った時に急に腕が二本現れてシーマ君は変な大声をあげるからあたしパニックになっちゃって、一瞬死んじゃうんじゃないかって。そうしたら、そこから鼠色した怪物が出てきたのよ。そうしたらいいのかわからないから、もう咄嗟に『診察しまーす!』って言ったら向こうも『あっはい。』って。めっちゃいい人だったのよ。」


アルヴァンは一体何を聞かされているのかと思いながらユリスに言った。


「じゃあ、書置きとか残しておいてもらえばいいんじゃ。もしくは写し絵とかを。」


「なんか、恥ずかしいんだって。」


「恥ずかしい・・・。」

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