チャプター5【とある施設の少女】
チャプター5【とある施設の少女】
「いたぞ! こっちだッ!」
とある研究所の施設。
複数人の戦闘員が一人の少女を追っていた。逃げていた少女が行き着いた先は行き止まり。
「……ホント、しつこい」
少女は気だるげに言い振り返りつつ右手を前に出す。手のひらからは赤い光を纏った炎。
「燃えろ!」
そう言うと同時に少女はパイロキネシスを発動させる。
燃え盛る炎の渦が戦闘員を飲み込んだ――
「させるか!」
――が、それは戦闘員によって阻まれた。
戦闘員もまた少女と同じようにパイロキネシスを発動させて相殺させた。
「…ふーんやるじゃん。さすが戦闘員!」
自分の力を相殺されたのにも関わらず、少女は大して驚く訳でもなくどこか楽しげな笑みを浮かべた。その笑顔はまるで幼い子が新しい玩具を見つけたような感じであった。
「ーーじゃあ、これならどう?」
言って、少女は右手は炎を左手からは雷を発現させた。
「あ…、あの噂は本当だったのか?!」
「こ、この少女があの『特SS』……」
少女の能力を目の当たりに、戦闘員たちに驚きと焦りの表情が入り混じる。その隙をついた少女は左からサンダーキネシスを発現させ、わずかなタイムラグで右手のパイロキネシスを戦闘員たちに向けて投げつけた。
「クッ! お前ら一時撤退だ!」
「応援を要請する!!」
炎で視界を塞がれ雷による電磁波で身体を麻痺させられた戦闘員たちが口々に喚き来た道を逆走するように逃げていった。
「これで少しは時間が稼げる……!」
少女は立ち込める煙を背に、その場から姿を消すように走り去った――
――少女が逃げる数分前。
真人たちは、緊急の依頼でこの施設を訪れた。
「本当にここにいるの? その子」
まるでお化け屋敷を探索するように少し怯えた様子で辺りをキョロキョロと見る真人。
「『上』からの命令では、その子供の保護となっているが」
真人の問いに返したのは進。
「『詠雲やと』。ある研究の対象となった少女のようですが……」
進に続いて答えたのは武雄で、小型の携帯電話から映し出される立体映像の映像を見ている。
「ふ〜ん。『やとちゃん』かぁ」
真人は武雄の隣まで来て一緒に立体映像を覗き込む。映っている少女の歳は十四歳。緑がかった肩まである黒髪のサイドを耳の上でツインテールにしている。服装は今どきらしく大きめのスニーカーに可愛いらしい制服のうえから少し長めのジャケットを着込んでいる。
「かわいいね」
真人は笑顔でそう言うが武雄は眉をひそめて、
「でもこの子、能力は特SS級らしいですよ」
武雄が言う、『特SS級』とは、能力者の位づけのようなものだ。表記の通り『特別』扱いされることがある。
「その『特SS級』とやらが向こうから走ってくるようだが?」
それまで黙っていたシンが真っ直ぐに前を見つめつつ気だるそうに言い放った。




