外伝1の5 美琴の能力2
外伝1の5【美琴の能力2】
「そちらが火と風ならこちらは水と地で相殺させるだけよ!」
そう叫び美琴は、手にしたカードを頭上に掲げると同時に天に向かって投げた。
投げ出された法王と吊るされし男のカードは、数メートル頭上で静止すると眩い輝きを放ち、まるで絵柄がそのまま具現化したように赤いローブを纏った男と木で作られた十字架に足から吊るされた男が、風を防ぐ地の盾と炎を消す水へと変化しシンが発現させた炎の嵐を打ち消した。
「みこちゃんすごい! こんな事出来るなんて!」
真人が美琴の方に駆け寄って嬉しそうに彼女を褒め称えた。
「そうだな」
真人の言葉に同意するように小さく頷くシン。
「美琴は占術が出来るからな。それくらいの芸当は出来てもらわなきゃこの先が思いやられる」
「私を試したの?!」
端的に言うシンの言葉が気に障ったのか、美琴はシンを睨むように見た。
「まあ、お前達の凡その能力は把握できた」
シンはそう言うと指を軽く打ち鳴らす。それと同時に時空間が変化して真人たちの姿は、事務所で向かい合って座っている状態に戻っていた。
「ー…と、あれ?」
真人が目を瞬いて辺りをキョロキョロと見やる。
「戻ってきたのか……」
「そうみたいですね」
少し疲れた様子を見せる進と武雄が口々に呟く。その場にいたシン以外の全員は心身ともに疲労感が漂っている。
気を利かせた武雄が再度淹れた紅茶を各々口にしてしばしの休息をとった。
「なんだか……すごく疲れた感じ」
言って、真人はソファにうなだれるように身を沈める。
「精神を使う超能力は疲労がつきものだからな」
「うんうん。そうだよねぇ」
軽く言うシンに同調するかのように頷く真人。
「まあそれはお前たち『人間』にとっての話だが」
小馬鹿しているように人間を強調するシン。
「それ、人間を馬鹿にしているようにしか聞こえないんだけど?」
シンの隣に座っている美琴が少しムッとした表情でシンを睨みつけると、
「馬鹿にはしていない。『当たり前』の事を言ったまでだ」
美琴の視線に臆すこともなくシンは淡々と言ってのける。
「ー…っ」
シンの言葉の真意に気づいたのか美琴は唇を噛み締めて押し黙る。
「……そ、それは、確かにそうだけれども……」
俯いて、弱々しく呟く美琴。
美琴は【識って】しまっていた。
シンが何であるのかを――