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ララの前進

読んでいただきありがとうございます。暇つぶしにしていただけるとありがたいです。

 ララはあっという間に三か国語をマスターしていた。但し読むばかりだったが。ダニエルが付けてくれた家庭教師が実際の会話を少しずつ実践し話せるようになるまでにそう時間はかからなかった。



貴族に必要な手紙の書き方や食事のマナーはメリーが教えてくれた。

ララはこの三年で得たことを次の仕事で活かせるのではないかと考えていた。

何処かのお屋敷で家庭教師にだってなれるのではないかしら。職業の選択が広がることが何より嬉しかった。



この後の講義はダンスだ。執事の中のダンスの得意な人が先生らしい。

「奥様、ダンスのお相手を務めさせていただきますリチャードと申します。宜しくお願いします」

「リチャードさん、この前の夜会が初めてのダンスでした。上手く旦那様がリードして誤魔化してくださいましたが、足をたくさん踏んでしまうかもしれません。痛い思いをさせてしまうと思いますがごめんなさい」

「奥様は軽そうですので踏まれても大丈夫です、お気になさらず。では基本のステップから参りましょうか」

「はい」


リチャードはこの可憐な奥様を避けている主人のことが理解できなかった。数少ない白い結婚の情報を聞いている上級使用人の一人だったからだ。

諦めた目をされているのかと思えば随分楽しそうだ。


「奥様、ダンスは楽しいですか」

「音楽に乗って体を動かすって思った以上に楽しいです。リチャードさんの教え方がお上手なんでしょうね、足もそんなに踏まずに済んでいますし」

「楽しいのが一番です。私のことはリチャードと呼び捨てにしてください。奥様なのですから」

「先生なのに駄目なのですか」

「はい、奥様に仕える身ですので」

「ではリチャードまたよろしくお願いしますね」


様子が気になったらしいダニエルがダンスフロアの近くで見ていたことに誰も気が付かなかった。




ララはスポンジが水を吸い込むように色々な事を学んでいった。頭は良いのに学校に行かせて貰っていなかったので、食いつき方が半端なかった。

家庭教師達からの評価も高く口を揃えて教え甲斐があって嬉しいというものばかりだった。


メリーは自分の事のように喜んでくれた。ララの痩せすぎた身体もふっくらし女性らしいラインになっていった。







時は遡り公爵家に来て半年経った頃ダニエルから初めて夕食を一緒に取らないかという誘いがあった。これはマナーのテストだと思ったララはもちろん承諾した。


メイド達にドレスを着せて貰い髪をセットされてから食堂に向かった。緊張で心臓が破れそうだったがなんとか心を落ち着けた。

ダニエルはすでに来て座っていた。書類のような物を見ていたらしく

「お待たせして申し訳ありません」

というララの声で顔を上げた。

「待ってはいないよ、じゃあ始めようか」

侍従たちが前菜から料理を並べ始めた。ガチガチだったララは「カトラリーは端から」と頭の中で呟きながら、ダニエルが食前の祈りを捧げる声を聞いた。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だから」

という声でメインディッシュのステーキを切ろうとしていたことに気がついた。

多分味は美味しいのだろうと思ったが何処に入ったのか分からなかった。


場所を変え紅茶を飲む頃には

「勉強が随分進んでいるらしいね。執務も助かっているよ」

「こんな私のために色々していただきありがとうございます。学ぶのが楽しくて仕方がないのです。このご恩は必ず返させていただきます」

「公爵夫人としての教養は君のためだけではなく私のためにもなってくるのだから自信を持ってくれて良い」

「光栄でございます」

という会話が出来るようになっていた。もちろん壁際にはメリーと侍従のリチャードが控えていた。



☆☆☆


「ご主人様ガチガチでしたね。まあ蕁麻疹が出ていないところを見ると相性は悪くはないんでしょう」

「そうなのだろうか」

「奥様は媚を売ったりなさいませんからね、むしろ興味がないと言ったほうが正しいかと思います。ご主人の美貌に靡かない貴重な方ですよね」

「私の狙いに狂いは無かった」

「良い方で良かったです。ご主人に頑張っていただけたら言う事はありませんが」

「なんだ、含みのある言葉だな」

「気が付かれないならそれまでってことです。夜会まで半年はありますので出られるかどうかをお決めになったらいいかと思います。奥様はダンスをされたことがあるのでしょうか?」

「貴族の令嬢だぞ、あるだろう。それより夜会か、気が進まないな」

「一年に一度くらいは出られませんと。不仲説が出るかもしれませんよ」

「それは困るな、また煩くなる」

「良くお考えになることです。ちなみに奥様はこの状況が楽しそうです。ご実家より待遇が良いですからね」

「楽しいのか?勉強と仕事しかしてない気がするが。まあ本人も楽しいと言っていたしそうなのだろう」



ダニエルは契約完了後のことを考えて憂鬱な気持ちになっていた。結婚したことでセクハラまがいのことが随分減ったのだ。幸いなことにララには拒絶反応が出ない。少しずつ距離を近づけてもらおうかと考えたダニエルだった。


ダニエルは重度の女性恐怖症です。

ダンス以外でララに近づけるでしょうか。

誤字報告ありがとうございました。訂正しました。

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