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夜会大作戦

読んでくださりありがとうございます!!

お楽しみいただけたらと思います。


 ダニエルは週に二回だけ朝食を一緒にどうかとララに提案した。領地経営で視察に行かないといけないこともあるのでいつも屋敷にいるわけではないからだ。

公爵領は広大だった。畜産から農業海岸近くでは海の幸も採れた。

全部回るわけにはいかないので各地に領主代行を置いていた。



週に二回の朝食はお互いががガチガチになり会話もできなかったが、数を重ねるにつれてぽつぽつと会話が出来るようになっていた。

「食事は美味しいか?何が好きなのだ?」

「お食事はとても美味しいです。嫌いなものはございません。焼き立てのパンなんて夢のようです。いつも硬いパンばかりでしたので。でもスープにつけるとそれも美味しくなりますので好きでしたけれど。あっはしたない食べ方でした。お忘れください」


ダニエルは思った以上のララへの扱いの酷さに心がきしむような気がしたが、無表情のまま


「そうか。シェフに伝えておこう」

「それでしたら、公爵家のお料理はとても美味しくていつも感謝をして頂いているとお伝えくださいませんでしょうか」

「ではそのように伝えよう」


ララは満足して食事を続けた。朝食を一緒に食べたり夕食を一緒に食べるのは淑女教育がどれくらい進んでいるのか公爵が確かめるためのものだと思っていたが、段々緊張しなくなり味を感じられるようになっていたので幸せに思っていた。



一年目の秋に宮殿での夜会が開かれ公爵夫妻として初めて参加することになった。メリーが陣頭指揮を取りララの支度は朝早くから始まった。適当に食事を挟みながら顔や身体を磨かれ、ドレスを着せられて化粧をされアクセサリーを着けられる頃には日が傾いていた。


ダニエルが部屋まで迎えに来てくれた。

「ララ綺麗だ」

「旦那様も素敵ですわ」


メリーが呆れたように

「棒読みですわね、隙だらけで敵に見破られます。馬車で練習してくださいね」

と言った。腕を差し出されエスコートをされて馬車に乗った。公爵家の馬車はシートがとても柔らかだった。

「練習をしておこうか、ララとても美しい。どうだ、心に響いたか」

「あまり響きませんわ。無理をしてもバレるものはバレると思いますので私は公爵様を見る時にこにこしていようと思います」

「そうだな、私もララを見て笑顔でいるようにしよう。呼び方だがダニエルと呼んで欲しい」

「かしこまりました、ダ、ダニエル様」

「バレるといけないから今夜は挨拶だけして早めに帰ろう」

「これで今年の夜会は最後ですね。残りの期間にはもうないのでしょう、どんな感じなのか見ることができるのはいい体験になります」

「それは良かった」

「将来の仕事の役に立つと思いますの。公爵様のおかげで色々勉強させていただいておりますのでありがたく思っております」

「ダニエルだ。もう少し早く練習して貰うんだった」


この事で普段の何気ない会話をしておかなくてはいけないのだと思うようになった。




夜会会場は眩いばかりだった。シャンデリアで照らされ色々なドレスの華で溢れかえっていた。公爵夫妻が現れた途端会場が一瞬静かになった気がした。

幻の花嫁だという声や地味な女ね、公爵様がお気の毒という声がヒソヒソと聞こえてきた。



ララは契約が終われば後はお好きにアタックしてくださいなと一瞬思ったが隣にいる女性恐怖症の旦那様が気の毒になった。

恩返しのために溺愛っぷりを見せつけておくのがいいのかと思ってしまった。契約が終了すれば自分は死んだことにでもしてもらえば良い。生きて行くのは外国でも良いのだから。


ダンスタイムになったので

「ここだけ我慢してください。ラブラブ夫婦を見せつけておきましょう」

と言って身体をくっつけてにこにこし夫を愛している可愛らしい妻のふりをした。ダニエルも終始笑顔を貼り付けていたので意思の疎通は上手くいったと思う。


給仕が近くに来たので飲み物を貰い喉を潤してから屋敷に帰ることにした。


「蕁麻疹は出てないですか?」

「大丈夫だ」

「良かったです、これで仲良し夫婦の噂は社交界を駆け巡りますね。後は綺麗に私が消えるだけですね」

「そ、そうだな。君はその後どうするんだ」

「まだ具体的には何も考えていませんが教養を付けさせていただきましたし、自分のことは出来ますし何とかなるのではないでしょうか」

「そうだな、後一年八ヶ月はあるからゆっくり考えればいいだろう」

「私ばかり得をして申し訳なくなります」

「女性よけになって貰っているのだから気にしないでくれ」




☆☆☆


「旦那様、奥様には蕁麻疹は出ないのでしょう。貴重なお相手だと思いますが」

「あまり女性として意識しなくていい相手だからなのではないか」

「そう来ましたか、無くしてから気がついても遅いのですよ」

「このままいてもらってもいいかと思ったりするんだ。女性よけになっているし。彼女さえ良ければだけど」

「ご主人本気で言ってます?女性として愛のある家庭が欲しいと思われているに決まっているじゃないですか。離縁されるなら私が立候補しますよ」


侍従のリチャードに言いこめられたダニエルは何も言えなくなってしまった。



ポンコツな二人の健闘ぶりいかがでしたでしょうか?お互いの望む未来が手に入ると良いですね。

誤字報告有難うございます。

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