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(仮)公爵夫人としての始まり

お立ち寄りいただきありがとうございます。感謝に堪えません。

誤字報告ありがとうございました。訂正しました。

 ダニエル・クレブス公爵様は次の日には我が家に結婚の申し込みに来てくださった。

勿論父親が断るわけもなく公爵夫人としての礼儀を身に付けて貰いたいので、これからご令嬢を連れて帰りたいと言われて直ぐに頷いていた。


婚姻の誓約書を見せられ家の負債の金額を出すと言われたのだから舞い上がってしまったのだろうが、もう少し落ち着いて契約書を読んだほうが良いと私でも思ってしまった。

多分あの書類の中には娘との縁を切ると小さく書かれていたに違いないのだ。



これだから直ぐに騙されてゴミみたいな物を高く買わされるのだ。その挙げ句が私を何処かの貴族と結婚させて何とかしようと安易な考えに結び付くのだと思った。まあもう関係ないけど。


満足な食事も普通の服も教育も与えられずどうして両親だと思っていると思うのか甚だ疑問だ。産むだけなら動物にもできる。愛情を与えて育てる動物さえいるからだ。

昨夜の夜会に行かせて貰ったことだけは感謝するけれど。


字を覚えたのは乳母からだった。絵本を読み聞かせて貰い自分で読めるようになった頃には乳母は暇を出されていた。それからは屋敷の図書室に籠り字を書く練習をしたり、色々な種類の本を読み漁った。底辺の学習ができた頃古い帳簿を見つけた。とても分かりやすく収入と支出が書いてあった。領地で災害が起きた時にはいくらかかったとか、食料品の備蓄の量などが書いてあった。

先々代の御先祖様は優秀だったらしい。今後の人生で何かの役に立つかもしれないと思い覚えておくことにした。


相変わらずマナーやダンスの教師さえあてがわれなかった。貴族と結婚させるにしても最低限の教育は必要だと子供の自分さえ思っていたのだから、両親の非常識さには呆れる。


自分達は贅沢に暮らし娘には残り物を与える、こんなところから早く出ていきたかったが、何も持たない自分では生きていけないだろうというのは理解していたので本を読んで知識を吸収するしか方法がなかった。

ララの人生には色がなかった。




♢♢♢♢♢



クレブス公爵邸は驚くほど大きかった。広いなどという言葉では足りない。お城のようなお屋敷だった。

馬車が着くと使用人の方々がズラッと並んで気後れがした。思わず後ろに下がりそうになったララをダニエル様が引き戻してくださった。


「「旦那様、奥様お帰りなさいませ」」

「今帰った、この女性が妻になるララだ。よろしく頼む」


家令さんだろうか、ロマンスグレーの上品な男性が

「奥様、良くお越しくださいました。今日から支えさせていただきます家令のステビノと申します」

「侍女のメリーと申します」

「ララと申します、よろしくね」

「さあさあ、お部屋にご案内いたします。どうぞこちらへ」


年配の女性の侍女さんだった。私が動いたほうが良いのではないだろうか。ダニエル様は女性が苦手と仰っていたけれど侍女はメリーさんだけなのだろうか、お手伝いできることがあれば何でもしようと思うララだった。



お部屋はクリーム色の壁紙の落ち着いた雰囲気だった。家具は古そうだが最高級の物が置かれていてベッドも一人用にしては広い物だった。お風呂もトイレも付いていて部屋から出なくてもここで暮らせそうなほどだった。


ドレスはメリーさんが手配をしてくださるようで取り敢えず今日の所は持ってきた中でまともな物を着ることにした。

お風呂は何と自動でお湯が出た。トイレも水洗だった。高位貴族って凄い。


「奥様、お風呂に入られてからお食事になさいませんか?」

とメリーさんに言われて気がついたが怒涛の一日で何も食べていないことに今気がついた。

「はい、そうさせていただきます」

「使用人に敬語は必要ありません」

とメリーさんに言われたが産みの母より教養がありそうなんですが。貧乏で何でも自分でしていた私からしてみれば教えて貰うことが沢山ありそうだ。



お風呂にはいろいろな種類の石鹸やシャンプーやオイルがたくさん並んでいて見ているだけで楽しくなった。でも何も食べていないのでゆっくり入っていれば倒れそうだ。初日からみっともないことは出来ない。ささっと髪と体を洗って用意されていたバスローブに袖を通した。


ふかふかのタオルで髪を拭けば乾くのが早い気がした。魔法でもかかっているのかしら。ノックの音でメリーさんかと思ってドアを開けたらダニエル様だった。

凍りついたように動かれなくなってしまった。お目汚しをしたからだと申し訳なくなり慌ててドアを閉めてドレスを着るともう一度ドアを開けてみた。


もうそこにはダニエル様は立っていなかった。ご気分でも悪くされていたらどうしよう、お医者様が必要なのではないかしらとメリーさんを呼ぶためのベルを鳴らした。


「坊っちゃまがいけないんです。御婦人のお部屋を訪問されるタイミングをわかっておられないからです。お風呂ですよと申し上げましたのに。急いで上がられたのですか?」

「お食事の時間に遅れてはいけないので今日は急いで入りました。お会いした時はちゃんとバスローブを着ていたのですが、気分が悪くなられたのですよね。申し訳なかったです。お風呂は素晴らしかったので明日からはゆっくり入りたいと思います」

「奥様の時間に合わせて食事はお出ししますのでお気になさらないでくださいませ。坊ちゃま、いえ旦那様がご一緒に食べないかと仰せです」

「視界の中に私が入ってもいいのですか?」

「いくら女性が苦手だとしても奥様を蔑ろになさるというのは褒められたことではございませんから」


メリーさんは昔からダニエル様にお支えして何でも言える立場の方なのだろう。

良い人が側におられて良かったと思う。


案内されて食堂へ行くとダニエル様が座って新聞を読んでおられた。

「お待たせして申し訳ございません」

「待ってはいない先程は突然訪問して申し訳なかった。お風呂だとメリーに聞いたのだが御婦人の入浴は入るまでが長いと聞いていて少しだけ話す時間があるのかと誤解をしてしまった」

「私の方こそお目汚しをしてしまい申し訳ございませんでした」

「お風呂上がりの御婦人を見たことがなくて固まってしまっただけなのでそのように受け取らないで欲しい」

「ではそういうことにさせていただきます。お話というのはどのようなことだったのでございますか?」

「君の家族とはきれいに縁が切れたと伝えたかった」

「ありがとうございます。何とお礼を申し上げたら良いのか分からないくらい嬉しいです」

「そんなにか?」

「はい、これで三年後の自由が保証されたのですからこれほど嬉しいことはございません。三年間精一杯務めさせていただきますのでよろしくお願いします」

「楽しくやってくれれば何よりだ」

「一生懸命務めさせていただきます」


ぎこちない挨拶と共に食事が始まった。




これからヒロインは成長します。応援よろしくお願いします。

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