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初夜

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 式の後は三年越しの初夜だった。メイド達にこれでもかとばかりに磨きあげられて用意された心もとない薄い寝巻きを着せられた。

ララはダニエルが自分を抱けるのか不安に思っていた。隣国の宿でキスはしたけれどあの後手を出して来なかったのだ。



式まで待っていたという事は十分考えられるが、この間まで恐怖症だったのだ。

キスまででも良いとララは思っていた。

焦って失敗したらトラウマになるのではないかしらとまで考えていた。



刺激的なこの夜着は着替えたほうが良いかもしれないと、他の物を探そうとソファーから立ち上がったその時ドアを叩く音がした。

慌ててガウンを羽織り前をしっかり留めた後でドアを開けてダニエルが入って来た。



シャンプーのいい香りがする。夜着のシャツの釦がふたつくらい開いていて逞しい胸板が見えていた。男性との接触に慣れていないララはそれだけでドキッとしてしまった。意外と身体を鍛えているんだわと初めて自覚した。


ソファーに座ったララの側に近づいてきた。目が熱を持っていた。

「ララ好きだよ」

柔らかなキスを額や頬、唇にチュッチュと音を立ててされた。耳にもされ音のいやらしさに恥ずかしくなってララはされるままだ。

唇へのキスがだんだん深くなって気持ちが良くなってきた。


ダニエルがガウンを脱がせた。

「ララこれなんて嫌らしい夜着なんだろう。メイドに褒美を出さなくては」

嫌がって拒否反応を見せるのかと思っていたダニエルは真っ赤になってじっと見つめていた。


「こういう事をするのは時間がいるのかと思っていたので無理しなくてくださいね」

「ララが相手なのにそんなことあるわけないじゃないか。勉強もしてきたんだよ、もちろん本でだよ、安心して」



昼間のクールな話し方とのギャップが凄くてこれはこれでに可愛いかもしれないと思ったララだった。


勉強熱心なダニエルにとって実践は素晴らしいものだったので、虜になり次の日の夕食を心配したメリーが声をかけるまで二人が部屋から出てくることはなかった。



「初めての奥様がお可哀想です。十代ではないのですから加減を知りなさい」

とメリーに叱られているのを聞きながらララは意識を飛ばした。



目を覚ますと心配そうな顔のイケメンのどアップが迫ってきた。ダニエル様顔が良いのねと結婚して初めて実感した。


「水を飲むかい、お腹も空いたよね。ララの身体が良すぎて歯止めが効かなかった。ごめん。メリーに叱られたよ」


あれこれ世話を焼いてくれるダニエルをぼーっと見ていたら

「奥さんの世話を焼きたいタイプだったみたいだ」

と言われた。本当にギャップが凄いんですが。世話焼きイケメン最高かも。復縁して良かった。あっちのテクニックも上手かった。本だけであれって経験を積めばもっと上手くなるの?知らないまま別れてたらもったいなかった。私っていやらしかったの?顔が熱くなったのでシーツを被った。



夕食はお部屋に運んで来てもらってダニエル様があーんで食べさせてくれた。自分もあーんをして欲しそうだったけど何をするのも怠くて自分で食べて貰った。

お風呂にも入れて貰い髪まで洗って貰った。乾かすのも勿論ダニエル様。



こんなに甘えたのは人生で初めてだったので嬉しくなってしまい胸板にすりすりと顔をこすりつけた。太い腕が抱きしめてくれて安心感が半端ない。



契約の時も幸せだったけど甘やかされるのはまた特別だ。人生のご褒美かしら。

肌のふれあいって良いものだった。全身で愛してるよって言ってくれている様な気がした。


十八で結婚したけど白い結婚を三年したから二十一年誰にも抱きしめて貰えなかった。

どういうわけかダニエル様が追いかけて来て連れ戻されこうやって腕の中に閉じ込められている。必要とされる事がこんなに安心出来る事だと実感出来て嬉しい。奇跡のようなことだった。



歩ける様になったが、屋敷の使用人に会うのが恥ずかしくて、夕食も部屋に運んでもらった。もちろんあーんで食べさせてもらった。


イケメンからのあーんはとてつもないご褒美だった。


「ダニエル様こんなに幸せで良いのでしようか」

「ララにしてしまった過去に比べればささやかな事だよ。もっと甘やかしてどろどろにしたいくらいだ」


「ある日突然夢が覚めて元の世界に戻ってしまったらと不安になります」

「もっと甘やかして一人で生きて行こうなんて思わなくしておかないとね」


ララはダニエルの昏い闇を見たような気がしたが気の所為だと思った。

目の前のダニエルはどこまでも甘い瞳のとてつもないイケメンだったから。


三年間顔の良さに気が付かなかったのはどうしてなのだろう、きっと興味がなかったせいだ。せっせと好意を表してもらえる様になり中身も見える様になってきたからだろう。中身のないイケメンに好意は抱けない。私も誠意でお返ししなくてはと改めてララは思った。



主人夫婦の幸せな様子に屋敷の使用人達は安心できるようになっていた。奥様を見る時のご主人様の瞳は蕩けていた。



お子様も多分もうすぐだ。暗かった屋敷が再度明るくなったのは奥様が隣国から戻って来られてからだ。

隣国へ行かれていた時には喧嘩でもされていたのだろう。ご主人の落ち込み方が半端なかった。痩せ過ぎで心配になるほどだったが今では元のようなお身体になられた。

愛されていらっしゃる奥様は益々お綺麗になられた。


奥様頑張ってご主人の手綱を握っていてくださいねとは屋敷の皆の総意だった。


毎晩愛され朝は起きられない。額に口づけを落とし名残惜しそうに、仕事に行く姿はかつて冷酷公爵と言われた人とは思えない。


ララは幸せを噛み締めた。ダニエル様大好きと心の中で思った途端、ダニエルが振り返って唇に軽いキスをして来た。

『帰ったら続きをしよう』

と熱のこもった目で見て来たのでどうにか頷いたララである。




二人の世界は始まったばかりだ。

応援してくれる人達が沢山いるとわかった。ここからもう逃げ出さないとララは誓った。

愛を知らなかった二人はようやく気持ちに気付き歩み始めました。ダニエルのキャラ変は恋愛小説の影響です。

きっと何があっても乗り越えるだろうと思っています。


誤字報告ありがとうございました。またお会いできますように。

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