ダニエルの告白
ついにダニエルがララに告白をします。想いが伝わると良いですね。
「先程はいきなり抱きしめて申し訳なかった。見て分かった通り君以外では蕁麻疹が出る。此処から先の話はデリケートなことになるので私の泊まっている宿に一緒に来てもらえないだろうか?」
ララはカフェで出されたお茶を飲み干すと一先ず心を冷静にすることにした。
蕁麻疹で死ぬかもしれない人を放置してしまうということもできなかったし、何故ここに元旦那様がいるのかという謎を解いておきたいと思ったからだ。
元旦様の泊まっている宿は最高級の所だった。逃げ出すつもりはなかったのだが
元旦那様の手が腰に当たっている。私たち離縁したわよねとリチャードに目をやったが、視線をそらされた。
ララは考えの甘さを思い知った。護衛付きなんて監視されていたのと同じじゃない、お飾りの妻を手放すつもりは無かったのかもしれない。これから聞くであろう話に嫌な予感しかなかった。
客室は最上階で広く公爵家の客間位の大きさがあった。寝室が三つトイレとお風呂も二つ付いていた。宿の備え付けの茶葉でリチャードがお茶を淹れてくれ、部屋から出ていくのが見えた。
「ここまで来てくれてありがとう。会いたかった」
いきなりの言葉に驚いた。
お飾りの妻を続けて欲しいと言われると身構えていたのだから。
言葉を聞いても不信感は拭えなく
「どうしてこちらにいらっしゃったのですか?お仕事ですか?」
と聞いてしまった。
「君がいなくなって何も手がつかなくなった。ぼんやりしてしまっていたらメリーに叱られてしまった。もう一度戻ってきてくれないだろうか」
「それはお飾りの妻でという事ですか?契約が終了する前に公爵様に今までのお礼を言おうとお部屋を訪ねようとしたことがあるのです。リチャードが、このまま別れてしまうのですかと聞いていました。
貴方はそれほど欲しいと思わないと言っておられました。その時私はそれだけの人間だったんだなと思い知りました。今迄誰にも必要とされていなかったので、ここでも必要にされなかったんだなと悲しくなり急いで部屋に引き返しました。
あっ契約の期間はお役に立てていたという自負の様な物があって、なんというか価値を認めてもらいたかったというか」
「悲しい思いをさせて悪かった、負け惜しみだった。いつかワインを飲んだ時にこのまま側にいて欲しいと言ったのだが断られてしまったのが堪えていたのだろうな。もう拒否されたくないと思ってしまった」
「あれはままごと遊び上の偽りの言葉だと思っていましたし、無事に契約を完了することしか頭にありませんでしたから」
込み上げてくるものを我慢しながらララが呟いた。
「そうだよな、偽物の言葉で遊んでいたくせに本心を告げもせずに振られて傷ついたなんて自業自得としか言えない」
苦しそうな顔でダニエルが言った。
「でもごっこ遊びはお互いを近づけてくれました」
「お互いに契約に縛られすぎていたということなのだな。
君は素敵な人だよ。優しくて美しくて人誑しで、私の心を掴んで離さない。
君が欲しくないなんて言った馬鹿なあの時の私を殴ってやりたい。
どうかもう一度私にチャンスをもらえないだろうか」
「本当に私で良いのですか?お飾りの妻でいなくて良いのですか?」
「君しかいらないんだ、君が欲しい。私たちというか私は愛というものに不慣れだ。愛を未だに掴みきれていない。
君も形は違うが愛情に恵まれなかった。これから歩み寄れたら良いのではないかと思っている。もちろん大切にするし浮気もしない」
ララは思わず頷いていた。この不器用な人を支えたいと思ってしまったのだ。
絆されただけなのかもしれない。何となく放っておけない気がした。
いつの間にか近くに来ていたダニエルの柔らかな唇が私のものと重なった。これがファーストキス。小鳥が啄むようなキスは各度を変え暫く続いた。
知らず知らず舌が入って来たが気が付かない方がダニエル様の為だろうなとララは蕩けていく頭の片隅で思っていた。
蕩けたようになったララをベッドに降ろし、扉の外にいたリチャードにララ達の泊まっていた宿から荷物を引き上げて来るように頼んだ。
リチャードは全て分かっていたという風にニヤニヤしながら出て行った。
ララとダニエルは二日ほど観光を楽しんだ後、国へ帰ることにした。ララとダニエルが公爵家の馬車でリチャードがダニエルの乗ってきた馬で帰ることになった。
公爵家では奥様は隣国の親戚に会いに行っていたということになっていた。離婚届も提出されていなかった。ダニエルの優柔不断さのせいだったが書類は執務室の引き出しの中にしまわれたままだった。
「奥様、ご無事でお帰りくださり良うございました」
「メリー達に心配をかけてしまってごめんなさいね。隣国は綺麗だったわ」
「ごゆっくり観光は出来ましたか、後で色々お話を聞かせていただきたいです」
「もちろんよ。お土産も沢山買ってきたから皆で食べて頂戴」
「ありがとうございます。さあ、お風呂に参りましょう」
やり直しの結婚式を理由を知っている者に囲まれて小さな教会で挙げることになった。美貌の公爵に愛されている美しい花嫁は幸せな微笑みを絶やさず、冷徹と言われる花婿は蕩けるような瞳で花嫁を見続けていた。
読んでいただき本当にありがとうございます。皆様に感謝です。あと一回で最終回になります。




